2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
多田 雄一 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (80409789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 耐乾性 / ヤトロファ / メタボローム |
Research Abstract |
本研究では、ヤトロファのもつ高度な耐乾性の機構を解明し、耐乾性育種のための新規な技術基盤を提供することを目的として3種の実験を計画した。 研究代表者らは、cDNAサブトラクション法により既にいくつかの乾燥応答性遺伝子をヤトロファから同定していたため、①として、これらの遺伝子の機能の解析を行った。また、茎成分のメタボローム解析を行うことで耐乾性と相関のある成分を同定し、その合成に関与する遺伝子を同定するために②の実験を行った。さらに、③としてトランスクリプトームの網羅的解析からも耐乾性にアプローチする計画であった。 研究項目①の「cDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析」では、サブトラクション法により同定した乾燥条件で特異的に発現しているcDNAの全長をPCRで単離して、35Sプロモーターにドライブされた発現ベクターを構築し、シロイヌナズナに導入した。 研究項目②の「CE-MSを用いたヤトロファの樹液のメタボローム解析」では、最も効率的な方法について理研と相談した結果、手法を変更してワイドターゲットメタボローム解析を行った。乾燥条件と灌水条件で育てたヤトロファの茎に加えて根もサンプリングして、メタボローム解析し、乾燥処理により含有量が増加する成分を同定した。それらの代謝物としてはラフィノース属オリゴ糖類やプロリンが含まれていた。これらの化合物の合成に関与するヤトロファの遺伝子をPCRで増幅し、発現ベクターを構築し、シロイヌナズナに導入した。 研究項目③の「アグロバクテリウムを宿主としたヤトロファcDNAの発現ライブラリーの構築と、高浸透圧条件でのスクリーニング、および選抜cDNAのシロイヌナズナでの機能解析」については②に注力したために行わなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目①のcDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析では、予定通り、乾燥条件で特異的に発現しているcDNAの発現ベクターを構築し、シロイヌナズナに導入した。 研究項目②のヤトロファの樹液のメタボローム解析では、予定していた茎に加えて根でもメタボローム解析を実施し、根、茎に特異的な成分と両者に共通な乾燥処理により含有量が増加する成分を同定した。さらに、これらの化合物の合成に関与するヤトロファの遺伝子3種をPCRで増幅し、発現ベクターを構築し、シロイヌナズナに導入しており、計画以上の進展があった。 研究項目③のアグロバクテリウムを宿主としたヤトロファcDNAの発現ライブラリーの構築と、高浸透圧条件でのスクリーニング、および選抜cDNAのシロイヌナズナでの機能解析については行わなかった。その理由としては、研究項目②において予想以上に良好な成果が得られたことから、②の研究項目に注力した方が耐乾性遺伝子の同定という本課題の最終目的を達成するために適していると判断したために研究手法を絞り込んだためである。従って、研究項目③を行わなくても研究の進捗や目的の達成度のうえで問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目①のcDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析では、cDNA導入したシロイヌナズナの解析を行う。 研究項目②のCE-MSを用いたヤトロファの樹液のメタボローム解析では、新たに非ターゲットメタボローム解析を行う方向で検討中である。また、ラフィノース属オリゴ糖類やプロリンの合成に関与するヤトロファの遺伝子を導入したシロイヌナズナの解析と新たな遺伝子導入を継続して行う。 研究項目③のアグロバクテリウムを宿主としたヤトロファcDNAの発現ライブラリーの構築と、高浸透圧条件でのスクリーニング、および選抜cDNAのシロイヌナズナでの機能解析については研究項目②に注力するため中止とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究項目①のcDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析では、RT-PCRや組換え体の生理学的・分子生物学的解析のために予算を使用する。 研究項目②のCE-MSを用いたヤトロファの樹液のメタボローム解析では、非ターゲットメタボローム解析を行うための費用と、同定された代謝物の絶対量を測定するための液体クロマトグラフィーによる分析などの費用に予算を使用する。さらに、昨年度に遺伝子導入したシロイヌナズナの生理学的・分子生物学的解析を行うための費用に充当する。また、別のラフィノース属オリゴ糖類の合成に関与するヤトロファの遺伝子の発現ベクターの構築と導入をおこなうための費用に充当する。
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