2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580022
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 哲司 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30231913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 達也 名城大学, 農学部, 准教授 (30319313)
笹山 大輔 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20554249)
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Keywords | 野生イネ / 洪水耐性 / 冠水耐性 / 浮稲性 |
Research Abstract |
アジアの栽培イネ(Oryza sativa)において,洪水を生きぬくための2つの異なったメカニズムが,異なるタイプの品種で深水下で誘導される。SUBMERGENCE1A (SUB1A)遺伝子を有する深水耐性イネ品種は実生段階での短期間での洪水期間中,成長を停止し,減水後に成長を再開するのに対し,SNORKEL (SK) 1,2遺伝子を持つ浮稲品種は成熟期の長期間の洪水に対して節間伸長に基づく成長の促進を示す。本研究対象の南米野生イネ種Oryza grandiglumisは冠水耐性と浮稲性の両性質を共に有することを明らかにした。 O. grandiglumisの浮稲性については,水位上昇条件での伸長成長と物質生産の比較により,伸長能力の高いバングラデシュの浮稲品種と同等の浮稲性があることをあきらかにした。また,SKs遺伝子が存在しないことを,SKs遺伝子の配列を参考にて複数のプライマーを作成し,どのプライマーの組み合わせでもO. grandiglumisuのゲノムDNAからは増幅されないことを示すことで証明の精度を上げた。またこの野生イネの浮稲性はエチレンでは誘導されないことも明らかにした。 O. grandiglumisの冠水抵抗性については,イネ冠水耐性品種と同様の反応を示すことを明らかにした。また上記と同様に,複数のプライア―セットを用いたPCR法で,SUB1A遺伝子がこの野生イネに存在しないことを明らかにした。また深水下での伸長成長に関係があると考えられているSUB1C遺伝子について調査を行ったところ,SUB1C遺伝子とは異なるクレードを形成するSUB1C-like遺伝子を有していることを発見した。また,この遺伝子は冠水下で発現されないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に明らかにする予定の項目の「1.O. glumaepatulaとO. grandiglumisおいて,浮稲の深水下での節間伸長に関与する遺伝 子SNORKEL1とSNORKEL2と,冠水耐性に関係する遺伝子Sub1Aの存在の有無を調査する。」「2.両野生種において,部分的深水環境で茎の伸 長を誘導する最初のシグナルを同定する。可能性のある因子として,低酸素環境,高湿度環境,水圧等の関与を調べる。5. 冠水で成長を停止するO. grandiglumis におい て,その反応を引き起こす環境のシグナルを同定する。」の3項目について,O. grandiglumisに関しては2013年度までに達成し成果をまとめ,現在論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
O. grandiglumisではSKs遺伝子が存在しないにもかかわらず深水下で急速な節間伸長が誘導されることを明らかにした。一方,O.glumaepaturaでは,以前の報告とは異なり,SK1とSK2の両遺伝子がゲノム中に存在することが判明した。O. glumaepaturaの節間伸長はエチレンでは誘導されないことより,ethylene response factorをコードするSK1とSK2遺伝子が深水下での節間伸長にどのように関係しているのかを調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
業者に抗体の作成を依頼したが,作成に失敗し,作成には3ヶ月を要するために本年度中に間に合わなかったため。 抗体は引き続き発注しており,次年度納品予定である。その抗体を用いて調査対象のタンパク質の存在の有無を調査予定である。
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