2012 Fiscal Year Research-status Report
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24580040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
加藤 淳太郎 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (80303684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神戸 敏成 公益財団法人花と緑の銀行, その他部局等, 副主幹研究員 (00393108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 3倍体 / 非還元性配偶子 / 異数性配偶子 |
Research Abstract |
三倍体植物は二倍体より大型のため高い園芸的価値をもつが、稔性が低く、育種素材としての利用は困難とされる。日本には、3倍体のみの野生種や高頻度で3倍体の園芸品種を含む種が存在する。育種的に三倍体を利用する試みのために、①三倍体の出現機構、②三倍体産出の配偶子形成パターン、③三倍体から稔実性のある二倍体の育成について研究した平成24年度の研究実績を報告する。 <三倍体の出現機構> a) サクラソウ×カッコソウの交配から、サクラソウの1品種を母本とした交配より非還元性配偶子形成の出現機構を解析するための3倍体雑種を獲得した。b) 四倍体×二倍体による三倍体形成は、カーネーション3ゲノムハマナデシコ1ゲノムの四倍体(♂)×二倍体カーネーション(♀)の交雑種子を、胚救出培養と土壌播種で比較した結果、発芽率はそれぞれ57.7%および10.3%と差異が検出されたが、雑種の倍数性は全て4倍体であり、非還元雌性配偶子が交雑に選択的に寄与することが見出された。 <三倍体産出の配偶子形成パターン> 育成途上の三倍体のラン科植物Zygonisia MurasakikmachiとZns.roquebrune PurpleEyeを母本とした二倍体Cymbidium種との交配による実生のDNA含量の解析では、DNA含量分布からZns. Murasakikomachiが母本の時は、非還元の三倍体配偶子が主に利用されるが、Zns.roquebrune PurpleEyeの母本の時には、還元性の異数性配偶子が利用されていると判定された。三倍体センノウの雄性配偶子のDNA含量測定では、様々なDNA含量を保有する花粉が見出された。 <三倍体植物からの二倍体植物の作出> 三倍体種と推測されるセンノウ、ヒガンバナ、オニユリからの、実生を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<三倍体の出現機構> 平成24年度予定のa) 非還元性配偶子形成とそのタイプの解析では、非還元性配偶子を形成する品種/系統の探索(平成25年度継続予定)を行い、サクラソウの種間交配において1品種から三倍体が得られることが再現され、今後の出現機構を調べるための材料育成として予定通りである。b) 四倍体×二倍体による三倍体形成の方向性については、四倍体が育成されることから非還元性配偶子が利用される組み合わせであったことがあきらかになった。正逆で倍数性が異なる組み合わせがある可能性を考慮しているので予定通りである。 <三倍体産出の配偶子形成パターン> 三倍体センノウの花粉サイズのばらつきや雄性配偶子のDNA含量測定では、様々なDNA含量を保有する花粉が見出されるなど予定通りの結果が得られた。三倍体のラン科植物Zygonisia MurasakikmachiとZns.roquebrune PurpleEyeを母本とした二倍体Cymbidium種との交配による実生の解析結果の解析終了部分については第 11回アジア太平洋蘭会議にて報告した。この解析は主に平成25年度に行う予定であったが、実生の生育が予定より早かった部分の解析結果をまとめることができた。 <三倍体植物からの二倍体植物の作出> 三倍体種であるセンノウ、ヒガンバナ、オニユリにおいて自家受粉を行い、形質の確認がまだであるがヒガンバナについては特定地域の系統で多くの実生が得られたので予定通りである。 以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
<交雑による三倍体形成のパターン解明> 本小課題は、a) 非還元性配偶子形成とそのタイプの解析とb) 四倍体 ×二倍体による三倍体形成の方向性それぞれれについて、24年度に引き続き材料探索と作成を継続する。非還元性配偶子の形成パターンの推定を、24年度に育成された三倍体を用いて行う。また、未解析の組み合わせにおける非還元性配偶子のタイプをDNA含量の調査結果の対比から推定する。本研究は愛知教育大学で行う。 <三倍体植物の稔性配偶子形成能力の解明> 細胞学的な判断での稔性花粉、不稔性花粉の識別を雄性側では継続して行い、フローサイトメーターによる判定も試みる。三倍体Zygonisia属などの交配後代の解析は、未解析なものを中心に継続し、配偶子の保有するDNA含量の分布から減数分裂との関係を推測するとともに、細胞学的解析も開始する。本研究は、公益財団法人 花と緑の銀行・中央植物園部が主に細胞学的観察を行い、愛知教育大学が主にフローサイトメーターによる調査を担当する。 <三倍体植物からの稔実性二倍体植物の作出と育種的利用> 平成24年度に引き続き、三倍体植物から自殖後代を得るためにヒガンバナなどの三倍体植物の自殖と胚珠培養を継続する。既に二倍体相当のDNA含量および染色体数を保有する植物体が得られているセンノウについても個体数を増やし、生育したものから順にフローサ イトメーターによる保有DNA含量の分布を調査し、選抜された二倍体の個体は、細胞学的観察で確認を行う。既に作出された三倍体植物から得られた二倍体植物は、自殖並びに近縁種の交雑による個体作成を試みる。本研究は公益財団法人 花と緑の銀行・中央植物園部が行い、細胞学的観察は連携研究者の中田政司氏の協力により行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の67,325円の剰余は、代表者の加藤側で発生したものである。その一部は植物材料の収集のための日程調整が平成24年度はうまく行かず、25年度に再度調整することになったこと、および論文校閲費が発生しなかったなどによる。次年度は、難航した植物材料の収集を行うための旅費として使用する予定である。 平成25年度の物品費は、本年度と同様に、交配、胚珠培養などの材料育成のための費用、およびフローサイトメーター、細胞学的観察、分子生物学的手法のための薬品、器具の購入費用が主な使用先となる。旅費に関しては、上記した剰余金を中心に、ヒガンバナやユリ等の材料収集のための費用と、学会参加および打ち合わせの費用として使用する。人件費・謝金は、分担者の神戸が通常業務と平行して研究を推進するのに重要であり、本年も予定の金額を超えて使用している。その他の予算は、英文校閲等での使用を予定している。
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Research Products
(1 results)