2013 Fiscal Year Research-status Report
ピーマン着果、肥大性を向上するための生理、育種学的研究
Project/Area Number |
24580048
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
本多 一郎 前橋工科大学, 工学部, 教授 (00241852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今西 俊介 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (50343976)
松永 啓 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90355339)
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Keywords | ピーマン / トウガラシ / 果実肥大 / 単為結果 / サイトカイニン / オーキシン |
Research Abstract |
本研究は、研究計画①ピーマンの着果、果実肥大に関わる生理学的要因の解明および、研究計画②単為結果性素材「CNHP2622」の有望性の把握の2本立てとして実施している。 研究計画①では「CNPH2622」「California Wonder」「ししとう」「INT/RUSSIA/2001/1579」の受粉果および単為結果果を調整、経時的に採取し、その果実肥大と内生ホルモンの関係を調査した。その結果、4系統とも、果実の肥大とサイトカイニン(tRZ)の含量に正の相関が認められた。また、単為結果性系統のCK含量は、非単為結果系統に比べて高い傾向が認められた。これらの結果は、ピーマンの初期の果実肥大にはCKが重要な役割を果たしていることを示すものと考えられた。関連する遺伝子解析では、昨年度得たピーマン類のCK生合成、代謝関連遺伝子の配列情報を元にプライマーを合成し、遺伝子断片の増幅を試みた。その結果、CK生合成遺伝子2種、代謝関連遺伝子3種で弱い増幅が確認できたが、遺伝子断片の単離には至らなかった。 研究計画②では、上記4系統を盛夏期および秋冬期に温室で栽培し、柱頭除去および放任受粉によりその単為結果、肥大様式を詳細に比較した。盛夏期の栽培では昨年単為結果性を示した「ししとう」を含め、ほとんど単為結果しなかった。秋冬期の栽培では昨年の厳冬期の栽培と同様、「CNPH2622」は単為結果したが、その頻度は低く、果実の肥大はやや劣り、「California Wonder」および「ししとう」は果実の肥大はやや劣っていたが、単為結果の発生頻度は「CNPH2622」より高く、「INT/RUSSIA/2001/1579」は単為結果しなかった。過去2年間の結果より、「CNPH2622」の単為結果性は秋冬~厳冬期に発揮されるが、その発現率はやや低く、通常肥大した果実と比べると小さいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画①においては、前年度の植物ホルモン投与研究で、オーキシンに加え、サイトカイニンのピーマン着果、果実肥大への関連が示唆されていた。また前年度の分析によりピーマン果実内の主要な植物ホルモン類も明らかになった。 これらの結果を受けて実施した今年度の研究では、果実肥大と内生ホルモンの関係にせまるべく、果実サイズや単為結果性の異なる4系統の様々な果実を調整し、その内生ホルモンを詳細かつ継時的に分析することができた。 得られた結果として、ピーマン果実肥大に関わる植物ホルモンとして、オーキシンではなく、サイトカイニンに注目すべきであることをほぼ明らかにすることができた。一方、単為結果性の強いピーマン系統の示す単為結果性の要因については、その解明には至っていないが、その要因に関する示唆が得られた。これらのことからおおむね研究目的は達成できていると考えている。 ピーマン類のサイトカイニン生合成、代謝関連遺伝子については、遺伝子断片の増幅が確認できた。遺伝子断片の単離については、テンプレートRNAとプライマー配列に問題がある可能性が示唆されたため、再調整を行っている。 研究計画②では、昨年と同様の結果が得られ、「CNPH2622」が保有する単為結果性の遺伝解析等の試験は春夏期または秋冬期に実施した方が良いことが再確認された。また、「CNPH2622」の単為結果性を遺伝解析するための集団の種子を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画①においては、今年度まで得られた結果をもとに、ピーマンの果実肥大におけるサイトカイニンの役割を明らかにするため、より詳細に解析を薦める。具体的には、今年度得られた結果を追試するため、植物ホルモン分析の反復実験を実施する。反復実験に必要なピーマン果実は既に得ている。 また、植物ホルモン類の投与を詳細に実施するとともに、投与した果実における植物ホルモン変動も調査することで、サイトカイニンのピーマン果実肥大における役割がより詳細に明らかになると考えている。 またこれらの結果を基に、テンプレートRNAとプライマー配列を再調整し、サイトカイニン生合成および代謝関連遺伝子の断片を単離し、サイトカイニン関連遺伝子についての発現解析も実施する。 研究計画②では、「CNPH2622」が保有する単為結果性の遺伝性等を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題①について、植物ホルモン分析を実施するために、様々な理化学用品、試薬等を購入する必要があるが、分析機器の不調、試料の入手から分析までに手間取ったことなど等の理由により、複数回実施することが不可能であった。 複数回実施するための予算を確保していたが、必要な用品、試薬等を購入しなかったため、予算を余らせることとなった。 研究課題①について、前年度実施する予定であった複数回の植物ホルモン分析を実施するために必要な様々な理化学用品、試薬等を購入するために使用する。
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