2014 Fiscal Year Research-status Report
一塩基多型及び葉緑体ゲノム解析によるブドウ‘甲州’の分類学的位置づけ
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24580063
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Research Institution | National Research Institute of Brewing |
Principal Investigator |
後藤 奈美 独立行政法人酒類総合研究所, その他部局等, 理事 (60372190)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブドウ / 甲州 / Vitis vinifera / SNP / 葉緑体DNA / 国際情報交換 / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.目的 わが国の在来ブドウ品種、甲州は、白ワイン用ブドウとして重要な品種である。甲州は東洋系Vitis viniferaとされていたが、異なる意見もあった。そこで、甲州の分類的位置づけを明らかにすることを目的に、DNA多型解析に取り組んでいる。これまでに、一塩基多型(SNPs)解析の結果から、甲州のゲノムには東アジア系野生ブドウに由来するDNAが30%程度含まれること、また葉緑体DNAの部分解析から甲州は母方の系統に野生ブドウを持つことが明らかになった。本年は、葉緑体DNAシーケンスの結果から、より詳細な解析を行い、甲州の葉緑体(すなわち母方の祖先)の由来を推定した。 2.方法 東洋系5品種およびシャルドネ(ヨーロッパ系品種)の4か所の葉緑体DNA配列、及び他のグループから報告されている多数の野生種のデータから共通部分を抽出し、配列の類似度を計算し、樹形図を作成した。 3.結果 ClustalWによるアライメント、及び近隣接合法による樹形図の作成の結果、甲州はトゲブドウとも呼ばれる中国の野生ブドウ、Vitis davidiiの1系統と最も近縁であることが示された。クラスターの上位には別系統のV. davidiiのほか、我が国にも自生するV. flexuosa(サンカクヅル)の1系統が含まれたが、V. flexuosaは別のクラスターにも含まれており、多様性が高いことが示された。一方、供試したその他の東洋系品種は西洋系品種とともにV. viniferaの祖先種とされるV. vinifera subsp. sylvestrisとクラスターを形成した。 またSNPs解析で協力を得たカナダのグループとの情報交換を継続し、報文の作成に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
V. davidiiと甲州の比較を予定していたが、国内に保存されている V. davidiiは1樹のみで結実しないことから、果実の比較は行えないことが明らかになった。26年度は報文の作成を優先したため、入手したV. davidiiのDNA解析は次年度に行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
作成中の報文を完成させるとともに、V. davidiiのDNA解析に取り組む計画である。併せて、甲州の近縁種ではないかというブドウ樹の情報が得られたため、現地調査を行うとともに、DNA解析を行い、日本の在来ブドウについての新しい知見を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度は国内に保存されているV. davidiiと甲州の葉緑体DNA等を比較する計画であったが、報文作成のためのデータ解析及び海外の研究協力者との連絡調整に時間を要したため、DNA解析が遅れ、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
報文投稿、及び予定している甲州とV. davidii、及び類縁株のDNA解析を実施する。なお、助成金は効率的に使用し、未使用額は返納する。
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