2012 Fiscal Year Research-status Report
施設園芸における養分動態の解明と養分管理概念の新提案
Project/Area Number |
24580092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
三枝 正彦 豊橋技術科学大学, 先端農業・バイオリサーチセンター, 特任教授 (10005655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊崎 忠 豊橋技術科学大学, 先端農業・バイオリサーチセンター, 特任助教 (90531541)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肥料 / 硝酸態窒素 / 溶液組成 / 林産過剰 / センサー |
Research Abstract |
愛知県東部の東三河地域は、市町村単位の農業生産額が、田原市が第1位、豊橋市が4位、豊川市が69位と我国有数の施設園芸地帯である。しかし、近年生産額が伸び悩んでいることや肥料の高騰などから施設栽培における養分動態を明らかにすることが急務である。本研究では、既存のデータ―の集積と共に、本年度は豊橋市と豊川市の食用小菊、シソ大葉、スプレー菊農家の圃場40点を調査した。その結果、いずれの作物にも共通するのは高いEC、塩基飽和度と過剰な硝酸、リン酸、カリ、苦土の集積と交換性マンガン、可給態鉄、銅、亜鉛の欠乏であった。また大葉ではpHの低下、アンモニア態窒素と石灰の集積、ホウ素、苦土カリ比の低下が見られた。また、小菊では高いpHとホウ素の低下が問題であった。中でも、既存の研究を含めるとリン酸の過剰集積が問題であり、菊栽培では下葉の枯れ上がりが見られる圃場もあった。そこで、リン酸過剰障害の軽減法として、水道局から、将来大量に排出されるポリシリカ鉄の施用効果を検討することとした。 先端的施設園芸ではソイルレスカルチャーが進行しており、養液栽培が主流となりつつある。市販及び本大学の人工光型植物工場で栽培されたレタスの硝酸含量を網羅的に解析したところ、ヨーロッパの規制値5000ppmを超えるものが大半で、8000ppmに達するものもあった。この対策として、硝酸態窒素からアンモニア態窒素主体の養液組成に改良する事を試みた。その結果、養液組成のpHをこまめに調整すれば、アンモニア態窒素主体の養液組成でも、レタスの硝酸の集積を低減し、かつ健全な生育をすることを明らかにした。しかし、養液供給がECをモニタリングして行われるので結果的に窒素供給不足による生育遅延が生じた。この他トマト、レタス栽培における炭酸ガス施用効果の有用性を確認し、マルチモーダルセンサーの導入を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東三河地域のトマト、大葉、食用菊、輪菊、スプレー菊栽培土壌の養分動態の概要が明らかになり、特にリン酸過剰集積が問題で、リン酸過剰障害の他に、間接的にマンガンや鉄、銅、亜鉛欠乏にも関係していることが推定された。またこれら土壌では過剰な塩類集積や硝酸集積も見られ、改良対策が検討された。 先端的施設園芸で進行する養液栽培の養分動態を明らかにするために、人工光型植物工場で栽培されるレタスの硝酸含量を解析したところ、ヨーロッパの規制値(5000ppm)を超えるものが殆どであった。人工光型植物工場では無農薬栽培など農産物の安全性を強調しているが、このレタスの硝酸の大量集積は喫緊の重要課題であり、その軽減法を検討した。レタスの硝酸低減は養液組成をアンモニア主体でこまめなpH調整を行えばできる可能性が示された。しかし、生育後半の生育が遅滞し、養液供給をECモニタリングで行う限界が明らかになった。 炭酸ガスの施用効果を携帯型光合成測定装置で検討したが、天窓開放系のトマトハイワイヤー栽培では、生育期間が長く、その生育期間を通じての最適炭酸施用濃度や最適養分供給濃度の決定には至らなかった。 温度やEC,pHを同時期、同位置で測定するマルチモーデルセンサーの開発についてはプロトタイプが作成されたが、量産されていないため、まだ本格的な実験には至らなかった。 これらの結果を総合すると、設定した課題に対する進行状況は70%程度と判断される。その原因としては、マルチモーダルセンサーの大量生産ができなかったことや水耕栽培装置の設置の遅れ、植物工場の試験栽培の遅れが上げられるが、次年度以降は充分カバーできるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は東三河地域のリン酸集積が著しい施設園芸土壌を採取し、水道局で今後大量に排出されることが予想される浄水ケーキ、ポリシリカ鉄の可給態リン酸低減効果を、吸着、固定実験と植物の栽培試験で検討する。一方、人工光型植物工場におけるレタスの硝酸集積低減については、自動pH制御装置を設置し、アンモニア主体の水耕液栽培で検討する。またレタスの生育量を充分に確保する適正な養液供給量を制御するために、生育後半の適正EC制御値を決定する。さらに窒素供給状態とレタスの窒素養分動態を、15N安定同位体追跡法で詳細に明らかにする。 地球温暖化ガスでもある炭酸ガスの効率的施用効果を明らかにするために、密閉型人工光型植物工場のレタス栽培と開放系太陽光型植物工場のトマトハイワイヤー栽培で、葉の光合成能測定で検討する。またトマト栽培では、LEDによる下層補光効果を個葉の光合成測定で明らかにする。 最先端施設園芸である太陽光型植物工場の先進国、オランダ国の現地調査を行い、トマトやバラなど多くの作物で、我国の3倍以上の収量を上げる要因を明らかにすると共に、我国のトマト栽培おいて、50tどりが可能な光合成環境の改善をするための土壌肥料学的要因と栽培法を明らかにする。 人工光型および、太陽光型植物工場の生産環境をモニタリングする、温度、EC、pHなどを装備したマルチモーダルセンサーの試作を発注し、その生産現場での実用試験を行う。 本研究で開発した、施設土壌の可給態リン酸低減法や人工光型水耕栽培での硝酸低減法、チップバーン軽減法、炭酸ガス施用法、LEDによる下層補光効果などを生産現場に技術移転するための実用試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
窒素供給状態とレタスの窒素養分動態を、詳細に明らかにするために、15N安定同位体追跡法で検討する。15N標識の硫安や硝酸ナトリウムは平成24年度購入したので、本年度は15N施用レタスの葉の窒素動態を明らかにするために、15Nの依頼分析:単価3000円X サンプル数50=15万円が必要である マルチモーダルセンサーの試作費:20万円は植物工場内の制御モニタリングに不可欠なpH,EC、温度などのマルチモダルシステムの試作に用いる;単価5万円X4台=20万円が必要である。 先導的太平洋型施設園芸の実態解析のために、オランダ国の調査費、単価40万円が必要である。 またこの他に、化学試薬(30点)、10万円とアルバイト代で謝金として15万円が必要である
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