2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
仲本 準 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30192678)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Hsp90 / HtpG / Hsp70 / DnaK / Hsp40 / DnaJ / 協同的シャペロン作用 |
Research Abstract |
真核生物においては、コシャペロンの一つであるHopがHsp90とHsp70の両方に結合し、Hsp90-Hop-Hsp70複合体を形成することで、二つのシャペロンの協同的シャペロン作用を可能にしている。原核生物Hsp90(HtpG)のシャペロンネットワークに関する研究は進んでいないが、我々はシアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942株のDnaJ2(Hsp40)がHtpGと DnaK2(Hsp70)の両方に結合することを初めて明らかにした。この新規なHtpG-DnaJ2-DnaK2(KJE)シャペロン系を介した、3種類のタンパク質基質の折り畳み反応を解析した。熱変性させたリンゴ酸脱水素酵素(MDH)にHtpGやKJEシャペロン系を其々単独で加えても折り畳まれる(再活性化される)ことはなかったが、MDHをHtpG共存下で熱処理しMDH-HtpG複合体を形成させると、MDHはKJEに依存して活性化した。ATPase活性を失ったHtpG変異体(D79NやE34A)やHtpG(Hsp90)の阻害剤ラディシコールを用いた実験結果から、HtpGからDnaK2への変性MDHの転移反応にはATPが必要ではないことが明らかになった。次に、熱変性させたグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)や尿素変性させた乳酸脱水素酵素(LDH)を用いて折り畳み反応を解析した。MDHとは異なり、これらの酵素はKJEに依存して活性化した。HtpG単独では、これらの基質の折り畳みを助けなかったが、HtpGはKJEシャペロン系を介した折り畳み反応を促進した。この促進はラディシコールによって完全に阻害されたので、HtpGのATP加水分解反応に依存して起こることが明らかになった。これらの結果から、HtpGとDnaK2の協同的シャペロン作用が二つの異なる機構で起こることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果は、3種類の変性基質を用いてHtpGとDnaK2/DnaJ2/GrpE(KJE)シャペロン系の協同的シャペロン作用を解析することにより、HtpGからの基質解離反応にはATP依存性と非依存性の二種類の反応が存在することをみつけたことである。即ち、この協同的シャペロン作用には二種類の異なる機構が存在することが示唆された。ATP非依存性のメカニズムは、MDHのように変性して凝集を起こしやすい基質の折り畳みに関与するもので、(ストレス条件下で)このような基質はHtpGに結合して複合体を形成し凝集を免れ、(非ストレス下あるいはストレスが軽減した条件下で)KJEシャペロン系は、基質をHtpGから受け取り、天然構造への折り畳みを助けるものと推察される。一方、大きな凝集塊を形成しない基質はKJEシャペロン系によって(必要ならば可溶化された後に)折り畳まれるが、HtpGはある程度折り畳まれた基質をDnaK2から受け取り、ATP依存的に最終段階の折り畳みを助けるものと考えられる。HtpGとKJEシャペロン系は、基質タンパク質の変性状態に応じて、上記の二つのメカニズムを使い分けるものと推察した。本年度のこれらの成果を纏めて論文を作成し、国際学術雑誌に既に投稿中である。 真核細胞ではHop(コシャペロン)を介してHsp90とHsp70が相互作用して協同的にシャペロン作用するが、HtpG-DnaJ2-DnaK2シャペロンネットワークでは、DnaJ2を介してHtpGとDnaK2が相互作用し協同的にシャペロン作用するものと考えられる。果たして、DnaJ2がHopのように二つの分子シャペロンの協同的シャペロン作用を促し、これらの分子シャペロンの機能を調節するのかどうか等を今後詳細に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、DnaJ2が原核生物Hsp90の最初のコシャペロンであると仮定しているが、今後はこの仮説を証明するために、以下に述べるような実験を行う予定である。本年度の研究によって、HtpGは、DnaJ2のJドメインを含まない、C末端側の領域と相互作用することが明らかになった。次年度は、DnaK(Hsp70)の折り畳み反応を促進する上で十分であると報告されている(DnaJ2の)Jドメインのみを調製し、果たしてHtpGは、DnaK2/(DnaJ2ではなく)Jドメイン/GrpEシャペロン系が介在する折り畳み反応を促進できなくなるのかどうか等を調べる。このような実験によって、HtpGとDnaJ2の相互作用がHtpGとDnaK2の協同的シャペロン作用に必須であるかどうかを評価する。 さらに研究計画に記載したとおりに、GroEL-DnaK2-DnaJ2-HtpGシャペロンネットワークの解析を行う。まず、HtpG、DnaK2(とそのコシャペロンDnaJ2とGrpE)、GroEL(とそのコシャペロンGroES)を含む反応液を用いて、GroEL-HtpG-DnaK2複合体の形成等を解析する。次に、HtpG、DnaK2、及びGroELの三つの異なるシャペロン(系)が、別個に機能するのではなく「foldosome」として協同でシャペロン作用するのかどうかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年ごとにヨーロッパで開催される国際会議The Biology of Molecular Chaperonesに出席するための旅費を支出する。この国際会議は、2011年のAlbert Lasker Basic Medical Research Awardを受賞し、ノーベル賞候補と目されているFranz-Ulrich Hartl 博士とArthur Horwich教授も出席する会議で、世界の分子シャペロン研究を先導する研究者が一堂に集う。これらの研究者と情報交換を行い交流を深めると共に、研究発表を行う予定である。 6月から半年間、代表者のもとで博士前期課程を修了し、他の研究所で博士号を取得した研究者を非常勤研究員として雇用する予定である。本研究費から、この研究者に謝金を支払う予定である。 消耗品は、本年度の研究を進める上で必須の試薬で、電気泳動用試薬、タンパク質精製用試薬、ガラス・プラスチック器具、微生物培養試薬等である。
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