2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若木 高善 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (70175058)
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Keywords | 酸化還元酵素 / フェレドキシン / 超好熱菌 / アロステリック酵素 |
Research Abstract |
超好熱性好酸性古細菌スルホロバスの中央代謝経路の鍵となる酸化還元酵素、グリセルアルデヒド(GA)酸化反応に関わる酵素(GAOR)とピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)を主な対象として、それらの構造と機能の相関を明らかにする当初の研究目的に加えて、フェレドキシン:NADP還元酵素(FNR)、非リン酸化型グリセルアルデヒド脱水素酵素(GAPN)についても、解析をおこなった。 GAORについては、もとの菌体からのGAORの精製について4種類の酵素を再現性よく取得することに成功した。GAOR1については収量が多いにもかかわらず、結晶化には至らなかった。遺伝子発現によって酵素を取得する方法では、補因子を含むオリゴマーの形成に成功していない。 PFORに関する研究では、鉄硫黄クラスターを欠失した変異体を作成して性質を詳細に調べ、PFORの反応機構を含む機能解析の論文を発表した。PFORは従来の材料ではセレノメチオニン誘導体の結晶を得難いので、PFORのホモログ遺伝子の存在に注目し、発現系を作成したところ、ネイティブ酵素、セレノメチオニン誘導体ともに良好なX線回折像を示す結晶の作成に成功し、立体構造決定に成功した。 また、フェレドキシン関連酵素FNRの候補と考えられるORF(ST2133)の機能解析を行い、これがFNRであることを正逆両反応で証明し、論文発表した。 GAPNの研究:スルホロバスのGAPNに関して、第139残基のTyrがK型のアロステリックな性質を決定していることを示し、論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の中で、目標達成に至っていないものもあるが、PFOR、FNR、GAPNについては機能解析の論文が3報出版されるなど、大きな成果があった。 PFORの研究では、他の菌のPFORが鉄硫黄クラスターを3つ有するのに対して、本菌では1つしか持っていないことから、これを保持する4個のCysの1~2個ををAlaに置換して得られる変異体の性質を調べることで、本酵素の酸化的脱炭酸反応には4つのCysが必須であるが、非酸化的脱炭酸反応には鉄硫黄クラスターそのものが不要であることが明らかになり、これらの反応を触媒する機構を提唱することができた。また、結晶構造解析でも、展望が開けた。 ST2133の詳細な機能解析を行い、パラログ酵素ではNADH酸化酵素あるいはチオレドキシン還元酵素の活性が報告されてきたが、本酵素ではこれらの活性に加えて、FNRの活性があることを確認し、ST2133が本菌のフェレドキシン酸化還元サイクルで働いている可能性を示した。 本菌には3種類のグリセルアルデヒド脱水素酵素(ST0064、ST1356、ST2477)があり、これらの機能を順次解析して論文発表してきた。とりわけGAPNとして働くST2477の特異なアロステリック調節に関して、詳細な実験と動力学的解析を行い、Tyr139がこのアロステリック調節に重要であることを明らかにした。 これらの成果は、超好熱性古細菌中央代謝における酸化還元酵素の研究に新たな知見を加えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
最も遅れているGAORについては、菌体から取得した4種類の酵素を丹念にキャラクタライズして、オリゴマーを構成するサブユニットの相違、基質特異性の相違などを明らかにし、本菌解糖系で働くGAORの構造機能相関に関する研究データをとりまとめて、論文を出版することを目指す。また、PFORの構造解析を完成させて、論文を出版すること、PFORの類縁酵素であるIFORはアミノ酸配列やサブユニット組成にかなりの相違がみられるので、これまで他の古細菌では困難とされてきた、IFOR遺伝子の発現をスルホロバス菌を用いて検討し、酵素を取得して、機能構造解析に資する予定である。
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