2013 Fiscal Year Research-status Report
植物ホルモン応答の新規シグナル伝達制御メカニズムの解明
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24580149
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
亀村 和生 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (00399437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 綾 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 講師 (50410965)
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Keywords | O-GlcNAc / ヒストン / エピジェネティックコード / アセチル化 / チューブリン |
Research Abstract |
平成25年度の研究実施計画、および、平成24年度研究実施状況報告書記載の今後の研究の推進方策に基づき、シロイヌナズナ培養細胞内在性ヒストンタンパク質につき、真にO-GlcNAc構造の糖修飾を有することを詳細に検証することとした。まず、高純度のヒストン画分を調製し、二次元電気泳動により高解像度で各ヒストンタンパク質を分離した後、複数の抗O-GlcNAc特異抗体を用いたウエスタンブロッティングを行ったところ、ヒストンH2A、ならびにH2Bは抗O-GlcNAc抗体陰性であったが、H3、ならびにH4は陽性であった。この検証において、ハプテン阻害実験による抗原抗体反応特異性を確認し、ヒストンH3、ならびにH4が抗O-GlcNAc抗体反応性の糖鎖を有すると結論した。そこで、ヒストンH3、ならびにH4の糖修飾の化学構造を分析するため、各ヒストンタンパク質の大量調製を行った。本調製にかなりの時間と労力を要したが、現在、大量調製したヒストンタンパク質を用いて糖組成分析を進行中である。なお、本研究の遂行過程において、細胞分画の指標として用いたα-チューブリンのSDS電気泳動による挙動が細胞の状態に応じて変化することに気付いた。そして、この要因としてα-チューブリンのアセチル化レベル変動が関与していることを見出した。動物細胞では、α-チューブリンのアセチル化は微小管の動的不安定性の調節機能をもち、細胞増殖や遊走と密接に関わる翻訳後修飾であることが多数の知見から明らかであるが、植物細胞においては殆ど解析例がなく、アセチル化α-チューブリンの存否すら明確ではなかった。そこで、シロイヌナズナをはじめ、被子植物界におけるアセチル化α-チューブリンの存否、ならびに、植物成長過程や組織におけるα-チューブリンのアセチル化動態等を早急に解析し、2報の学術論文として発表した(雑誌論文の稿参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、O-GlcNAc修飾に着目し、全く新しい切り口から植物ホルモン応答のシグナル伝達制御メカニズム解明に迫ることである。その最優先事項は、植物内在性O-GlcNAc修飾タンパク質を同定することである。平成24年度の研究実績として、シロイヌナズナ培養細胞を用い、ヒストンH3がその候補タンパク質であることを突き止めた。そして、平成25年度の研究実績では、ヒストンH3に加え、H4も候補タンパク質であり、二次元電気泳動後のウエスタンブロッティングよって、両者ともにGlcNAcを含む糖修飾を有することを結論付けた。計画では、これらの糖修飾構造の同定を平成25年度内に完了する予定であったが、化学構造同定のためのサンプル調製に時間と労力を要したため、化学構造の同定は平成26年度研究計画に継続課題として加えることになった。しかしながら、これは当初の平成26年度研究実施計画の支障となるものではなく、概ね当初の計画通りに遂行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度からの継続課題として、シロイヌナズナ培養細胞由来ヒストンH3、ならびにH4につき、糖修飾の化学構造を同定する。これと並行して、当初に設定した平成26年度の研究実施計画に基づき、ヒストンH3、ならびにH4がSPY/SECの標的となる植物ホルモン応答性O-GlcNAc修飾タンパク質であるか検証する。そのため、シロイヌナズナ培養細胞、あるいはカルスに対し、ジベレリンやサイトカイニンなどの植物ホルモンを処理した後にヒストンサンプルを調製し、コントロールサンプルとの間でヒストンH3、ならびにH4の抗O-GlcNAc特異抗体反応性を指標として糖修飾のレベル変動を解析する。植物ホルモン処理については、処理濃度や処理時間などを幅広く設定し、それに伴う糖修飾変動を逐一精査する。そして、SPY変異株、またはSEC変異株につき、ヒストンH3、ならびにH4の糖修飾レベルをコントロール株と比較する。また、ヒストンH3、ならびにH4の組換え体を大腸菌で発現させ、組換えSPY、あるいはSECを酵素源としたインビトロO-GlcNAc修飾アッセイにより、SPY/SECの基質であるか検証する。以上より、植物ホルモン応答性シグナル伝達メカニズムとして機能するヒストンの新規糖修飾に関する研究成果を学術誌に発表するとともに、学会発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額を生じた主な理由は、現在までの達成度の項で述べた通り、ヒストンH3、ならびにH4の糖修飾の化学構造解析を次年度研究計画に継続課題として加えることとしたため、構造解析用試薬の購入を見あわせたことによるものである。 次年度使用額については、平成25年度からの継続課題の遂行、ならびに、次年度研究実施計画の更なる充実を図るため、次年度に請求させていただく研究費に加算し、消耗品費として主に構造解析関連試薬の購入に充てさせていただきたい。
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Research Products
(2 results)