2013 Fiscal Year Research-status Report
カイコウオオソコエビが持つ新規セルラーゼの遺伝子解析とその工学的利用
Project/Area Number |
24580153
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 英城 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (40399564)
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Keywords | セルラーゼ / RNAシーケンス / 多糖分解酵素 / マリアナ海溝 / 小笠原海溝 / 超深海性ヨコエビ |
Research Abstract |
本年度は、小笠原海溝海底(深度約9,400 m)とマリアナ海溝チャレンジャー海淵より、超深海性ヨコエビの採取に成功した。小笠原海溝ヨコエビも、カイコウオオソコエビと同様にセルラーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼおよびペクチナーゼという植物性多糖分解酵素を持っている事がわかった。特にセルラーゼは、カイコウオオソコエビと同様にセルロースからグルコースを生産する新規酵素だったことを見出した。今年度調査した小笠原海溝は、日本の排他的経済水域(EEZ)である。一方、マリアナ海溝チャレンジャー海淵はミクロネシアのEEZに位置するため、カイコウオオソコエビを工学的に利用すると、名古屋議定書により制限される。そこで、小笠原海溝ヨコエビについて、そのセルラーゼ遺伝子の工学的利用を目的として、RNAの取得を試みた。 通常、深海生物は採取と同時に死亡し、その核酸は分解されるため、解析が困難である。しかし、私は採取後に低温に維持する捕獲器を考案・製作し、採取を行ったところ、比較的分解の少ないRNAの単離に成功した。そこで、RNAの塩基配列を次世代シーケンサーを用いて、行った。約25,000本のシーケンスが得られたが、決定した塩基配列中に完全なセルラーゼの配列を見出す事が出来なかった。一部セルロース結合領域と相同性がある配列を見出したので、この配列を元に、ゲノムから完全長のセルラーゼ遺伝子を取得できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、小笠原海溝ヨコエビからも多糖分解酵素が見出され、なおかつチャレンジャー海淵に生息するカイコウオオソコエビと同等のセルラーゼを持っていた。名古屋議定書より、カイコウオオソコエビ由来セルラーゼの工学的応用が制限されるため、小笠原海溝由来ヨコエビが同等のセルラーゼを持っていた事は、工学的な利用を考えると非常に大きな結果である。また、RNA配列情報まで得る事ができたため、本年度は計画通りであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、小笠原海溝由来超深海性ヨコエビについて、ゲノム遺伝子の単離に成功し、次世代シーケンサーにて、塩基配列を決定している。RNA情報で得られた結果を踏まえて、セルラーゼの全長を取得する予定である。また、今回決定したゲノム遺伝子からセルラーゼ配列情報が得られない場合、再度シーケンシングを行い、より多くの遺伝子配列を決定し、セルラーゼ遺伝子を探索する予定である。また、超深海性ヨコエビの遺伝子配列情報より、これら超深海性ヨコエビが、どの生物から由来して、どのように深海へと適応してきたのか、遺伝子解析ツールを用いて、検討し、報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、マリアナ海溝および小笠原海溝、日本海溝での調査にてヨコエビの採取を行った。ヨコエビからの安定的核酸抽出が困難だったため、その遺伝子配列決定用サンプルの調製が遅れた。そのため、遺伝子情報解析用の機器を購入できなかった。 遺伝子配列情報は、2月末から3月にかけて受け取った。今回の繰越金は、当初予定していた遺伝子配列解析用機器に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)