2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
竹中 麻子 明治大学, 農学部, 教授 (40231401)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビタミンE欠乏 / 不安行動 / HPA軸 |
Research Abstract |
申請者は、ビタミンE欠乏によってラットの不安行動が増加することを見出し、この現象を更に解析した結果、「ビタミンE欠乏による酸化ストレスの亢進が、グルココルチコイド分泌増加を引き起こし、不安行動を増加させる」という不安行動の新しい誘導機構を想定するに至った。グルココルチコイド分泌は視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)で制御されることが知られている。平成24年度は、ビタミンE欠乏がHPA軸の各応答段階に及ぼす影響を、通常食あるいはビタミン欠乏食で4週間飼育したWistar系雄ラットを用いて以下の要領で解析した。 (1)経時採血によるストレス(0, 15, 60分)を与えた後に、採血を行った。血中のグルココルチコイド(コルチコステロン)濃度をELISA法により測定した結果、ストレスに応答したグルココルチコイド分泌がビタミンE欠乏群で大きくなった。(2)ACTHを腹腔内投与0, 15, 60分後の血中グルココルチコイド(コルチコステロン)濃度をELISA法により測定し、ビタミンE欠乏がACTHに応答したコルチコステロン分泌に及ぼす影響を検討した結果、ACTHにより誘導されるグルココルチコイド分泌は、ビタミンE欠乏による影響をうけなかった。(3)副腎を採取し、グルコルチコイド合成に関わる因子(ACTH receptor、p450scc)の遺伝子発現量をrealtime PCR法により測定したところ、いずれの遺伝子発現にもビタミンE欠乏の影響はみられなかった。(4)視床を採取し、CRF mRNA量をrealtime PCR法により測定したところ、ビタミンE欠乏の影響はみられなかった。 以上の結果より、ビタミン欠乏によってHPA軸の脳内部分の活性(CRF分泌~ACTH分泌)が亢進し、グルココルチコイド分泌が増加することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の主要な研究目的は、HPA軸のどの部分がビタミンE欠乏時に変化し、グルココルチコイド分泌増加の要因となるかを明らかにすることであった。この目的を達成する実験系として、HPA軸を活性化させる刺激としてラットに、(1)ストレス負荷、(2)CRF投与、(3)ACTH投与を施し、HPA下流のACTHあるいはグルココルチコイド分泌がどのように変化するかを解析する計画であった。この中で、(1)のストレス投与については多くの予備検討を必要とした。計画書に記載した拘束ストレスについて検討を重ねたが、このストレスはラットにおよぼす影響が大変強く、ビタミンE欠乏によるHPA活性化を打ち消してしまう可能性が高かった。そこで、他のストレス条件を模索した結果、経時採血によるストレスを与えた際にビタミンE欠乏による影響を確認することができた。この結果から、ビタミンE欠乏によってHPA軸の活性化が生じていることを明らかにした。 また、(3)のACTH投与実験でビタミンE欠乏によるグルココルチコイド分泌に差が見られなかった結果と、副腎内のグルココルチコイド合成活性に変化がみられなかった結果から、HPA軸の活性化は脳内(視床下部あるいは下垂体)で生じていることを明らかにした。(2)の動物実験は遂行中である。 さらに、グルココルチコイド投与によるHPA軸のフィードバック阻害についても検討を行い、グルココルチコイド投与ラットの脳サンプルをすでに取得している。このサンプルのCRF mRNA量を測定することにより、ビタミンE欠乏によるHPA軸活性化の標的部位を明らかにすることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)HPA axisに変化が生じるメカニズムを解析する。ビタミンE欠乏ラットで、視床下部のグルココルチコイド受容体、下垂体のCRF受容体やACTH合成酵素、ACTHの遺伝子発現量やタンパク量、活性がどのように変化するかを解析する。 (2)ビタミンC欠乏動物(不安行動が増加する)でも、ビタミンE欠乏と同様のHPA軸の変化が生じているかどうかを検討する。副腎除去後の不安行動を解析し、ビタミンC欠乏による不安行動増加にもグルココルチコイド分泌が重要であるかどうかを検討する。さらにストレスに応答したHPA軸各段階のホルモン分泌を検討する。この結果から、ビタミンC欠乏時にグルココルチコイド分泌が増加する機構を明らかにする。 (3)他の酸化ストレス動物でもビタミンE欠乏と同様の変化が生じているかどうかを検討する。グルタチオン合成阻害剤であるBSOを投与したラット、ラジカル発生剤であるAAPH、AMVN、PQなどの薬剤を投与したラットを用いて不安行動の解析、HPA軸活性化の変化を解析する。 (4)HPA axisに生じる変化が抗酸化剤で抑制可能かどうかを検討する。ビタミンE欠乏食に種々の抗酸化剤を添加してラットに与え、HPA 軸の変化および不安行動増加が抑制されるかどうかを検討する。 (5)精神的ストレス(社会的隔離、早期離乳、他個体からの攻撃など)あるいは物理的ストレス(拘束ストレスなど)で不安が増加したラットのHPA軸の変化を解析する。この結果から、ビタミンE欠乏モデルで明らかになった不安増加機構が、他の多くの不安増加現象にもあてはまるのかどうかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すべてを物品費に使用する計画である。 実験動物(ラット)、実験消耗品器具(チューブ、チップ類等)、生化学実験試薬、生化学キット(各種ホルモン測定用ELISAキット等)、遺伝子発現解析用試薬等への支出を予定している。
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Research Products
(13 results)