2012 Fiscal Year Research-status Report
天然魚のクドア属粘液胞子虫による食中毒のリスク評価
Project/Area Number |
24580259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70261956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クドア / 粘液胞子虫 / 食中毒 / 海産魚 / リスク評価 |
Research Abstract |
近年、問題となっているヒラメの筋肉寄生粘液胞子虫Kudoa septempunctataによる食中毒と同様、他のクドアについてもヒトへの毒性が疑われている。本研究では、天然海産魚(キチヌやメジマグロなど)に寄生するKudoa iwataiとKudoa sp.の実態調査とヒト腸管細胞(Caco-2細胞)を用いた毒性試験により、クドア食中毒のリスク因子を解析することを目的とした。 K. iwataiについては、浜名湖産のキチヌ、クロダイ、スズキにおいて寄生調査を行った結果、いずれの魚種でも寄生率や寄生強度に季節性はみられなかった。キチヌについて病理組織検査を行ったところ、シストには「未成熟シスト」、「成熟シスト」、「変性シスト」の3段階があり、寄生の初期段階である筋細胞内ステージも検出された。このような組織観察により、クドアの感染・発育の過程を追跡できると同時に、シストの発育段階が毒性に関与する可能性も示された。 メジマグロのKudoa sp.については、キハダの筋肉融解の原因となるK. neothunniとの異同を形態観察と遺伝子解析により調べた。その結果、Kudoa sp.は遺伝的にK. neothunniと区別され、メジマグロにはKudoa sp.のみ、キハダにはK. neothunniとKudoa sp.の両方が寄生していることが分かったが、遺伝子型と形態的特徴は一致せず、種の同定には到らなかった。 Caco-2細胞をウェルプレート内で培養し、クドア胞子を接種して細胞層の経上皮電気抵抗の変化を測定することで毒性を測定する手法について、K. septempunctataを用いた条件検討を行った。その結果、接種する胞子数は100000個/ウェル、測定時間は接種3時間以内で判定できることが示された。この結果は、他のクドアの毒性試験を行うにあたっての基準になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浜名湖の天然魚におけるK. iwataiの寄生状況調査について、一部は想定していた結果が得られなかったが、予想外に良い結果も得られた。たとえば、寄生率や寄生強度に季節性があれば、寄生が高まる時期の漁獲や流通を回避するといった方法が食中毒のリスクを減らすために有効であろうと考えられたが、季節的パターンはないことが示され、当初の計画通りにはいかなかった。しかし、シストを病理組織学的に調べたところ、定量的な指標には現れない質的な変化が観察できた。すなわち、シストは肉眼的には同じように見えても、中身は未成熟であったり変性していたりすることから、これらのシストには毒性がない可能性が示された。このようなシストの質的違いが毒性に関与するなら、食中毒のリスク評価をするにあたっての重要な検査項目になり得る。 メジマグロのKudoa sp.については、キハダのK. neothunniと同種であるという論文が公表されたばかりであるが、本研究ではそれを否定するデータが得られた。しかし、遺伝子解析と形態観察の結果に矛盾する点もあったため、当初、計画していたように、Kudoa sp.の種を同定するまでには到らなかった。今後、株数を増やして遺伝子型と形態的特徴のデータを積み重ねていくことで、K. neothunniとの分類学的異同を明らかにすることができると考えられる。 Caco-2細胞を用いたクドアの毒性試験については、ほぼ当初の計画通りに進展している。クドアの接種量や判定時間などの条件が標準化されたことから、今後は、K. iwataiやKudoa sp.についても、この条件を基準として毒性試験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Kudoa iwataiの寄生状況調査については、当初の計画ではキチヌにしぼって寄生のピーク時に集中して調査する予定であった。しかし24年度の成果から、寄生は周年見られ、魚種によって感受性が異なることがわかってきたため、調査は24年度と同様に周年行い、またキチヌ、クロダイ、スズキを比較しながら実施することにする。いずれも寄生率や寄生強度などの基礎データを収集することに加えて、シストの発育段階を組織学的に調べることで宿主-寄生虫関係を魚種別に明らかにし、クドアの感染時期を推定するとともに、魚体内での発育過程を時系列的に追跡する。 メジマグロのKudoa sp.については、さらに多数の株を採集し、遺伝子解析と形態観察によりK. neothunniとの分類学的異同を明らかにする。その後、メジマグロの採集時期や産地別に、寄生状況や発育段階について寄生虫学的、組織学的に調べることで、リスクの高まる時期や場所を推定する。 クドア胞子の生残率を評価するため、K. septempunctataの研究で開発された蛍光染色法が応用できるかどうか検討する。蛍光染色法による生残率と組織観察による発育段階のデータが、24年度に標準化されたCaco-2細胞による毒性試験の結果と一致するかどうか評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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