2013 Fiscal Year Research-status Report
天然魚のクドア属粘液胞子虫による食中毒のリスク評価
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24580259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70261956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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Keywords | 粘液胞子虫 / 食中毒 / クドア / キチヌ / クロマグロ |
Research Abstract |
近年、問題となっているヒラメの筋肉寄生Kudoa septempunctataによる食中毒と同様、他のクドアについてもヒトへの毒性が疑われている。本研究では、天然海産魚に寄生するKudoa iwataiとKudoa sp.の実態調査およびヒト腸管培養細胞(Caco-2 cell)を用いた毒性試験により、クドア食中毒のリスク因子を解析することを目的とした。 K. iwataiについては、浜名湖産天然魚において寄生調査を実施した結果、寄生率はキチヌ(43~82%)が最も高く、次いでスズキ(10~39%)、クロダイ(0-10%)の順であった。細胞の生死を判定する蛍光染色法でK. iwatai胞子の生残率を調べたところ、スズキとクロダイの胞子はそれぞれ83%と74%と高かったのに対し、キチヌの胞子は44%と低かった。キチヌとクロダイのシストを病理組織学的に観察しシストの発育段階を調べた結果、キチヌのシストは80%が変性シストであったのに対し、クロダイのシストは75%が成熟シストであった。以上より、キチヌのシストは徐々に変性して胞子が死滅していくことが示唆された。K. iwatai胞子をCaco-2 cellに接種したところ、K. septempunctataが毒性を発揮する100000胞子/ウェルの条件では、いずれの魚種由来の胞子にも毒性が認められなかった。 メジマグロのKudoa sp.について、キハダのジェリーミートの原因となるK. neothunniと比較した結果、胞子の尖り具合と28S rDNAにおいて明確に分かれた。そこで、メジマグロのKudoa sp.をKudoa hexapunctataとして新種記載した。K. hexapunctataの寄生強度については、実体顕微鏡レベルで偽シストを計数してカテゴリー分け(+から++++まで)する方法で定量化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然魚におけるクドア寄生の実態調査について、当初計画していたK. iwataiの地理的分布は、ほとんど調査できなかった。魚市場では、様々な定置網等で漁獲された魚がすでに混ざった状態で水揚げされてくるので、実際の漁獲場所を魚体個別に特定するのは困難であることが原因である。そこで前年度と同様、魚種別、月別の寄生状況の比較を継続し、疫学データの集積をした。 K. iwataiの胞子の生残性とシストの発育段階については、それぞれ蛍光色素を用いた生体染色法と病理組織学により評価したところ、両者の間には相関関係がありそうであることがわかった。Caco-2細胞を用いた毒性試験ではまだ毒性が証明できていないが、これらの評価方法は、今後、毒性の指標となりうることが示唆され、当初の計画通りに進行できていると言える。 メジマグロのKudoa sp.については、分類学的位置を決定して新種として記載したことと、実体顕微鏡レベルで偽シストを計数して寄生強度をカテゴリー分けした点は計画通りであるが、寄生状況の季節変動や病理組織学的な検討ができなかった点を考慮すると、「おおむね順調に進捗している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
クドア食中毒の研究については、養殖ヒラメのKudoa septempunctataに関する研究が先行しているので、その成果を後追いしていく形にならざるを得ない。しかし、本研究は天然魚が対象となるため、たとえば養殖期間中に感染防除するなどの対策は適用できない。そこで、地道な作業ではあるが、天然魚の寄生状況調査のデータを集積することは不可欠である。そのようなデータにより、リスクの高い時期や魚種を回避する対策が構築されてくるはずである。 また、胞子の毒性評価に関する研究をさらに推進して、毒性を定量化できれば、何個以上のシストまたは胞子が寄生しているときに食中毒のリスクが高いという基準を設定することができる。毒性の評価系については、現在試みているCaco-2培養細胞系だけでなく、マウスやスンクスなどの実験動物の応用も検討していく。 積極的にクドアの毒性を低下させる(あるいは無毒化する)ためには、漁獲後の流通・調理段階で何らかの処理を行う対策が考えられるが、このような処理条件については、K. septempunctataの研究ですでに多くの成果が出ている。そこで、同様の試験(短時間加熱、リモネン処理、濃塩分または低塩分処理など)を行う予定である。
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Research Products
(2 results)