2014 Fiscal Year Research-status Report
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24580293
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 啓之 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 助教 (90241372)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 棘皮動物 / ウニ / 筋肉 / 筋収縮調節 / トロポニン / ミオシン |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)平成25年度に大腸菌発現系を構築したキタムラサキウニ・トロポニンI(TnI-long)について、N末端に存在する伸長領域を欠損させた変異体(TnI-short)についても発現系を構築した。これらのTnIを大腸菌発現・精製し、ウサギ・アクトミオシン-トロポミオシンのMg-ATPase活性に及ぼす効果を比較したところ、TnI-shortはTnI-longよりも強くATPase活性を阻害した。従って、N末端伸長領域に、TnI-shortの領域に存在する筋収縮阻害作用を減弱する機能が存在する可能性が考えられた。また、F-アクチンに対する結合性を共沈実験によって検討したところ、これらのTnIはいずれも、脊椎動物トロポニンIと同様に、F-アクチンに結合することが確認できた。 (2)これらのTnIをそれぞれ担体に固定化してアフィニティークロマトグラフィーを行い、平成25年度に作成した抗キタムラサキウニ・トロポニンIウサギ血清から抗TnI-long並びに抗TnI-short抗体を精製した。精製抗体はいずれもキタムラサキウニ顎骨間筋ホモジェネートに微量ながら存在する約70kDaおよび80kDaのタンパク質と反応し、それらはトロポニンIであると考えられた。また、マナマコ体壁縦走筋ホモジェネート中には、交差反応性を示すタンパク質は見出されなかった。両抗体を用いて、キタムラサキウニ顎骨間筋、二又骨上挙筋、食道、精巣、並びに、瓶嚢の組織切片について、免疫染色とローダミン-ファロイジンによるアクチン染色の二重染色を行ったところ、いずれの器官においても、抗原はアクチンフィラメントと同じ部位、または、アクチンフィラメントの周辺部位に存在することが確かめられた。 (4)トロポニンTのcDNAをキタムラサキウニの腸管からクローニングした。 (3)マナマコの体壁縦走筋からミオシンの単離・精製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、キタムラサキウニ・トロポニンIについて、欠損変異体を作成して野生型と特性を比較し、一次構造と機能の相関に関する若干の知見を得ることができた。また、トロポニンIがアクチンとの結合能を持ち、生体内で筋収縮の阻害など、脊椎動物トロポニンIと同様の役割を果たしている可能性を示した。さらに、精製した抗体を用いてウェスタンブロッティングや免疫染色を行い、反応の特異性を高めることができた。また、キタムラサキウニ・トロポニンTのcDNAクローニングを行い、アミノ酸配列上にトロポニンI結合部位などの重要部位が存在することを確認したほか、配列相同性の解析により、軟体動物や節足動物のトロポニンTよりもむしろ、脊索動物や半索動物のトロポニンTとの類似性が示された。しかし、当初計画していたホールマウントin situハイブリダイゼーションによる各種筋収縮調節タンパク質遺伝子の発現解析は、ウニの幼生の培養がうまくできなかったため、行えなかった。また、平成25年度に確認されたマナマコ体壁縦走筋中の筋収縮阻害成分は、幾つかの検討の結果、タンパク質ではないことが示され、生体内で筋収縮の調節に関与しているとは考え難かった。これらのことを総合し、平成26年度はやや研究が遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにクローニングできたキタムラサキウニ・トロポニンTおよびトロポニンIをコードするcDNAは部分構造なので、完全長のcDNAをクローニングし配列を解析する必要がある。また、トロポニンTについても大腸菌発現によって調製し、試験管内で特性を解析して他の動物のトロポニンTとの機能的差異を検討する。さらに、抗トロポニンT抗体も作成し、免疫染色によって、トロポニンIと同じ部位に存在しているかどうか、すなわち、トロポニンIと共にトロポニン複合体を形成して筋組織中に存在しているかどうかを検討する。また、顎骨間筋から免疫沈降法によってトロポニン複合体を分離し、アメリカムラサキウニ・ゲノムプロジェクトにおいても遺伝子の存在が確認されていないトロポニンCの存在を明らかにした上で、部分構造を解析して、cDNAクローニング、さらには、大腸菌発現によるトロポニンCの調製を行う。以上によって、試験管内でキタムラサキウニ・トロポニン複合体を再構成できるようになり、その特性を脊椎動物や無脊椎動物のトロポニンと比較することで、微量ながら筋組織中に存在する棘皮動物のトロポニンが果たす役割を推測できると考えられる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額に相当する経費は、平成26年3月中において既に消耗品の購入に充てているが、所属機関の会計制度上、次年度の支出として取り扱われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額に相当する経費は、平成26年3月中において既に消耗品の購入に充てている。
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