2013 Fiscal Year Research-status Report
有明粘土地盤の強度・圧密特性の把握・解明と嵩上げ盛土時の干拓堤防の安定性評価
Project/Area Number |
24580357
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東 孝寛 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00181066)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 政美 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 名誉教授 (80112316)
金山 素平 岩手大学, 農学部, 准教授 (60398104)
|
Keywords | 有明粘土地盤 / 強度特性 / 圧密特性 / 干拓堤防 / 嵩上げ盛土 / 挙動予測 / 安定性評価 / 有限要素法 |
Research Abstract |
有明粘土地盤の強度特性に関しては,前年度に引き続いて東岸域(筑後川,菊池川下流域),北岸域(佐賀県南西部),西岸域(長崎県諫早湾沿岸))の各試料土の既存の土質試験結果,および新たに実施した北岸域の乱さない試料土についての土質(物理・化学・力学)試験結果をもとに検討した。その結果,西岸域試料では正規圧密状態の強度増加率や内部摩擦角が圧密圧力の増加とともに小さくなり,Hvorslevの破壊規準が適用できず,一般化したHvorslevの破壊規準を適用すべきことが明らかとなった。また,北岸域試料では,Hvorslevの破壊規準が適用できること,非排水せん断強度の異方性が高い圧密圧力で圧密するとほぼ消失すること,などを確認した。 圧密特性に関しては,前年度と同様に東岸,北岸,西岸域の試料土についての既存の段階載荷と定ひずみ速度載荷による圧密試験結果,および新たに実施した北岸域試料についての段階載荷による圧密試験結果や既存干拓堤防の沈下データ,などをもとに検討した。その結果,有明粘土の練返し・乱さない試料の圧縮指数と初期間隙比,膨張指数と圧縮指数の関係,などが再整理できた。 嵩上げ盛土時の的確な安定性評価手法(主に挙動解析手法)の開発に関しては,東岸域の既存干拓堤防を解析対象として選定し,既存の1次元の圧密沈下量評価手法の妥当性の評価や沈下観測データを用いた沈下予測手法に関する検討,弾塑性有限要素法を用いた圧密変形解析のための解析モデルなどについての検討を行った。その結果,ボーリング調査結果から求まった既存干拓堤防基礎地盤(有明粘土層)の圧密沈下量と,既存の1次元圧密沈下量計算法(圧縮指数法)から求まる圧密沈下量がほぼ一致することや,改良したニューラルネットワークモデルにより比較的早期の沈下データのみで精度の高い圧密沈下予測ができること,などを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度までに予定していた研究に関しては,以下に記すように幾つかの目標に到達できなかった点が存在することを考慮して,達成度を「遅れている」と評価した。 ・有明粘土の強度特性に関して,三軸圧縮試験機の準備・調整の遅れから,簡易CU試験法による非排水せん断強度(三軸圧縮強度)の 測定ができていない。 ・二次圧密特性についての検討が十分できていない。 ・嵩上げ盛土時の干拓堤防の的確な安定性評価手法の開発に関しては,有限要素法による応力-変形-支持力(圧密変形)解析で問題と なる擬似モードの発生や過拘束についての検討,ならびに解析対象地盤についてのモデル化が十分できていない。 ・二次圧密を考慮できる土の構成モデルや残留沈下量評価(予測)手法についての検討が十分できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終(平成26)年度も,基本的には当初(交付申請時(平成24年4月)に)提出した研究計画に沿って研究を推進して行く予定である。ただし,平成25年度までに十分取り組めなかった研究項目については,できるだけ実施できるように努めるが,優先度を考慮したい。また,平成25年12月にサンプリング(採取)できた有明海東岸域(熊本県白川河口域)の試料土についても,できるだけ実験に供して取りまとめのデータとして活用する予定である。最終(平成26)年度の研究の進め方の概要は,以下の通りである。 有明粘土地盤の強度特性については,乱さない試料土の強度異方性や各種非排水せん断強度間の関係,粘土の骨組構造と強度定数の関係(一般化したHvorslevの破壊規準の適用性についての検討を含む),非排水せん断強度に影響を及ぼす各種要因の影響度,などを新規および既存の物理・力学試験結果をもとに検討し,最終的な取りまとめを行う。圧密特性については,既存および新規(有明海北岸域(佐賀県杵島郡有明町)試料または東岸域(熊本県白川河口域)試料について)の段階載荷や定ひずみ速度載荷による圧密試験結果ならびに既存干拓堤防の沈下データなどをもとに,二次圧密特性を中心に検討し,最終的な取りまとめを行う。また,嵩上げ盛土時の干拓堤防の的確な安定性評価手法の開発に関しては,早期の沈下観測データを使用したニューラルネットワークモデルによる圧密沈下予測精度の向上,ならびに干拓堤防の嵩上げ盛土時の挙動予測(圧密変形)解析の実施と解析結果の分析・評価,斜面(すべり)安定解析に使用する非排水せん断強度の合理的な算定手法についての検討,などを通して,できれば具体的な安定性評価手法の提案を行いたい。そして,本研究の全体的な取りまとめ(総括)を実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施した有明海東岸域(熊本県白川河口域)での試料土のサンプリング経費(実支出額:\427,350)が当初の予定より少なかった。 平成26年度分として請求する研究費と繰越分を合わせて,物品費や旅費,論文別刷などの費用として使用する予定である。
|