2012 Fiscal Year Research-status Report
植物由来の香辛エッセンスを利用した人と環境に優しい新線虫防除技術の開発
Project/Area Number |
24580372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
御手洗 正文 宮崎大学, 農学部, 教授 (60094083)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物エッセンス / 防除 / 線虫不動化率 / 酢液 |
Research Abstract |
本研究の目的は、農薬による線虫防除法の代替技術として、植物エッセンスによる線虫防除技術を確立することである。本年度は、ニッケイ、トウガラシ(ジョロキア、黄金)のエッセンス抽出方法として、水蒸気蒸留法、直接蒸留法、バーコレーション法、揮発性溶剤法、圧搾法、冷浸法,エタノール溶媒抽出法を用いた。また、試作した植物酢液抽出装置によるショウガ、トウガラシ、杉の葉酢液の殺線虫効果を調査した。結果は以下のとおりである。 (1) ショウガ酢液処理による水中の線虫生存頭数と線虫不動化率は、濃度20%区で処理後7日目に60%以上の線虫不動化率を示したが、即効性はみられなかった。また、ショウガ酢液と圧搾法で抽出したショウガエッセンスを比較した結果、前者は処理後3日目において、濃度20%区の線虫不動化率が49.4%であるのに対し、後者は処理濃度5%区で97.5%を示し、ショウガ成分は酢液抽出よりも圧搾法によるエッセンスが強い殺線虫効果がみられた。 (2) トウガラシ酢液処理による水中の殺線虫効果を調査した結果、処理濃度10%のトウガラシ酢液は処理後1日目から線虫不動化率80%以上を示し、線虫に対する即効性を示したが、濃度5%以下のトウガラシ酢液は効果が小さいことが明らかになった。 (3) ニッケイの成分であるサフロール、リナロール、trans-シンナムアルデヒドの線虫防除効果を調査した結果、サフロールとリナロールは、共に極めて高い殺線虫効果を持つことが分かった。trans-シンナムアルデヒドは高い殺線虫効果を示したが、サフロール、リナロールよりやや効果が弱く、土壌20gあたりの限界処理量(100%効果を得るための最少処理量)は、0.05~0.10mlの間に存在すると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実験計画として予定していたエッセンス抽出方法(水蒸気蒸留法、直接蒸留法、バーコレーション法、揮発性溶剤法、圧搾法、冷浸法,エタノール溶媒抽出法)の違いによる殺線虫能力の違いを7種の抽出装置を用いて明らかにできた。また、試験材料として、ニッケイ、トウガラシ(ジョロキア、黄金)、杉の葉など数種類の植物エッセンスと酢液の殺線虫効果を比較することができた。また、実験計画として予定していた温度の違いによる植物エッセンスの殺線虫能力の変化をシステムバイオトロンを使用して、15~35℃の範囲で明らかにできた。追加試験として、実験計画には予定していなかった植物酢液抽出装置を試作し、ショウガ、トウガラシ、杉の葉酢液の殺線虫効果を明らかにすることができた。この試作した植物酢液抽出装置を利用すれば今後、多種類の植物酢液を抽出することが可能となり研究の発展性が拡大された。なお、年度計画であった線虫防除効果の見られたニッケイの成分がサフロール、リナロール、trans-シンナムアルデヒドであることを突き止め、それぞれの成分の線虫防除効果を明らかにすることができた。以上の事から現在までの研究達成度はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、1.植物エッセンスの殺線虫能力を最小の処理量で最大限に引き出すための最適土壌処理条件を明らかにするため、1)土壌水分の違いが植物エッセンスの殺線虫能力に及ぼす影響を明らかにする。試験条件として,土壌水分を乾燥状態から湿潤状態まで5段階に分け,土壌が植物エッセンスの吸収・拡散に及ぼす影響を計測し,土壌線虫防除に最適な土壌水分条件を明らかにする。2)土壌の砕土粒径の違いが植物エッセンスの殺線虫能力に及ぼす影響を明らかにする。試験条件として,土壌の砕土粒径を粗な状態から密な状態まで6段階(1,2,4,6,8,10mm)に分け,土壌の砕土粒径の違いが植物エッセンスの吸収・拡散に及ぼす影響を計測し,土壌線虫防除に最適な土壌の砕土粒径条件を明らかにする。3)土性の違いが植物エッセンスの殺線虫能力に及ぼす影響を明らかにする。試験条件として,土性の異なる4種類の土壌(クロボク土,砂壌土,ローム質土,粘土質土)を準備し,それぞれ土性の異なる土壌において,植物エッセンスの吸収・拡散に及ぼす影響を計測し,土壌線虫防除に最適な植物エッセンスの処理条件を明らかにする。4)植物エッセンスの土壌中拡散特性と残存線虫数の推定方法を明らかにする。植物エッセンスの土中拡散速度,拡散係数を求め,植物エッセンスの吸収拡散特性の検証ならびに植物エッセンス濃度と殺線虫力の検証を行う。5)植物エッセンスの土壌中拡散特性を明らかにする。植物エッセンスの土壌中の3次元拡散分布を有限要素法解析によりシミュレートし,土壌中のガス濃度分布の変化から残存線虫数を推定する。有限要素法による植物エッセンスの3次元濃度分布解析には市販ソフトを使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度研究費の使用計画(費目別内訳)は、物品費:400,000円、旅費:320,000円、人件費・謝金:200,000円、その他:80,000円、計1,000,000円を予定している。その明細については、国内旅費として、調査•研究旅費(福岡:40,000円、成果発表(北海道:82,000円)、外国旅費(成果発表-ASAE:198,000円)、人件費・謝金(実験補助:134,000円、外国語論文の校閲:66,000円)、その他(学会誌投稿料:68,000円、印刷費:12,000円)を予定している。なお、物品費として備品の購入は予定していない。
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