2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス応答を介した肥育牛のアディポジェネシス制御機構の解明
Project/Area Number |
24580399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
山田 知哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (80343987)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 栄養・飼養 / 肥育牛 |
Research Abstract |
肥育牛におけるアディポジェネシス制御機構を解明するためには、ウシ脂肪細胞自身の分化メカニズムの解明に加え、脂肪細胞と酸化ストレスとの相互作用を明らかにすることが必要である。そこで本年度は、脂肪蓄積部位の違いがウシ脂肪細胞における酸化ストレス応答因子の発現に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 黒毛和種去勢肥育牛の各脂肪組織のオスミウム染色像を測定した結果、脂肪細胞のサイズは、皮下脂肪および筋肉内脂肪と比較し、内蔵脂肪が有意に大きい値であった。次に、各脂肪組織におけるMMP9遺伝子の発現量を検討した。MMP9遺伝子の発現は、皮下脂肪および筋肉内脂肪と比較し、内蔵脂肪における発現量が有意に高い結果となった。脂肪細胞は、肥大化に伴い酸化ストレスが増加することから、内蔵脂肪は、皮下脂肪や筋肉内脂肪より強い酸化ストレス状況下にあると考えられる。従って、脂肪細胞における酸化ストレス応答因子の発現制御メカニズムとして、各脂肪蓄積部位における脂肪細胞のサイズの違いが大きく影響している可能性が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究によって、脂肪蓄積部位の違いがウシ脂肪細胞の酸化ストレス応答因子発現に及ぼす影響について検討を行った結果、皮下脂肪や筋肉内脂肪および内臓脂肪は、部位の違いによってサイズが大きく異なることに加え、酸化ストレス応答因子であるMMP9の発現量が脂肪蓄積部位によって大きく異なり、このことが脂肪細胞のサイズに影響していることを見いだした。これらの知見は、ウシ脂肪組織において蓄積部位の違いが酸化ストレス応答によって影響されていることを示す初めての知見であり、研究目標は順調に達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画では、肥育牛脂肪組織における酸化ストレス応答とアディポジェネシスとの関連を明らかにするため、アディポジェネシスに大きく影響する「1.脂肪部位」、「2.栄養条件」、「3.ウシ品種」という3つの要因からのアプローチを行うことを目的としている。「1.脂肪部位による影響」としては、生理機能の大きく異なる皮下、内臓、筋間、筋肉内及び腎周囲の各脂肪細胞における酸化ストレス応答因子発現量を比較し、脂肪蓄積部位の違いがアディポジェネシスに及ぼす影響を明らかにする。「2.栄養条件による影響」としては、粗飼料多給区、濃厚飼料多給区をそれぞれ設定して肥育を行い、粗濃比の違いによって生じる体脂肪蓄積の差が、酸化ストレス応答因子の発現量の変動によるものであることを解明する。「3.ウシ品種による影響」としては、脂肪蓄積能力の大きく異なる黒毛和種及びホルスタイン種の肥育を行い、品種の違いによる脂肪組織成長能力の差が酸化ストレス応答因子の発現量の違いによって制御されていることを明らかにする。 脂肪蓄積部位の違いが各脂肪組織における酸化ストレス応答因子発現に影響を及ぼすことを明らかにした本年度の結果を受けて、平成25年度においては栄養条件が肥育牛脂肪細胞の酸化ストレス応答因子発現並びにアディポジェネシスに及ぼす影響について検討を行う。黒毛和種去勢牛を用い、10ヶ月齢から30ヶ月齢までの肥育期間に、粗飼料多給区および濃厚飼料多給区に設定した肥育を行う。24年度と同様に、生理機能が大きく異なる皮下、内臓、筋間、筋肉内、腎周囲の各脂肪部位のサンプルを採取し、脂肪組織重量並びに脂肪細胞セルラリティーを測定し、給与飼料条件の違いが各脂肪組織における体脂肪蓄積状態に及ぼす影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の遂行のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画通り使用する。なお、繰越額483,420円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費とあわせて研究計画遂行のために使用する。
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