2012 Fiscal Year Research-status Report
栄養生理学的制御によるタンパク質分解関連遺伝子FBXO22発現調節機構の解明
Project/Area Number |
24580414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
中島 一喜 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (70370583)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ニワトリ / タンパク質分解 / FBXO22 / アトロジン-1 / 骨格筋 |
Research Abstract |
ニワトリヒナを用い、骨格筋におけるFBXO22の遺伝子発現をアトロジン-1(FBXO32)遺伝子発現と比較し、栄養生理的制御について検討することを目的とした。まず、FBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現の組織特異性を明らかにするため、骨格筋、心臓、筋胃、脳ならびに肝臓を採取し、これらの遺伝子の発現量を調べた。その結果、FBXO22の遺伝子発現は、骨格筋に比べ、肝臓で低く、他の組織では差は見られなかった。一方、アトロジン-1遺伝子発現は、骨格筋に比べ、筋胃で10倍以上高く、心臓では差はなく、脳と肝臓では低かった。 次に、骨格筋におけるFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現に対する絶食(24時間)ならびに再給餌(2時間)の影響を調べた結果、FBXO22遺伝子発現は、絶食ならびに再給餌で影響は見られなかったが、アトロジン-1遺伝子発現は、絶食で増加し、再給餌により減少した。 また、骨格筋におけるFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現に対するタンパク質栄養の影響を調べるため、低タンパク質(CP7.5%)飼料を7日間給与した。その結果、骨格筋のFBXO22ならびにアトロジン-1の遺伝子発現は低タンパク質飼料給与により減少する傾向が見られた。 以上の結果から、FBXO22およびアトロジン-1遺伝子は、同じF-boxタンパク質であるが、組織特異性ならびに栄養学的制御機構が異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニワトリヒナを用い、骨格筋におけるFBXO22の遺伝子発現をアトロジン-1(FBXO32)遺伝子発現と比較し、栄養生理的制御について検討した結果、FBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現の組織特異性を明らかにし、2つの遺伝子の発現に違いがあることを明らかにしたことは、重要な知見である。また、アトロジン-1遺伝子発現は、骨格筋に比べ、筋胃で10倍以上高いことを明らかにしたことにより、ニワトリ特異的なアトロジン-1遺伝子発現制御機構が存在する可能性を見出した。 骨格筋におけるFBXO22およびアトロジン-1の遺伝子発現に対する絶食ならびに再給餌の影響を調べた結果、FBXO22ならびにアトロジン-1遺伝子発現調節機構が異なること、タンパク質栄養の影響については、骨格筋のFBXO22ならびにトロジン-1の遺伝子発現は同じ制御機構である可能性を見出した。 これらの結果から、FBXO22およびアトロジン-1遺伝子は、同じF-boxタンパク質であるが、組織特異性ならびに栄養学的制御機構が異なる可能性を明らかにし、研究目的を概ね順調に達成していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
生理学的制御(インスリン様成長因子-I、グルココルチコイド、甲状腺ホルモン)がFBXO22ならびにアトロジン-1遺伝子発現に及ぼす影響を検討する。 マウス由来筋細胞株においてインスリン様成長因子-I(IGF-I)、グルココルチコイド(デキサメタゾン、Dex)ならびに甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン、T3)が骨格筋タンパク質分解ならびにアトロジン-1発現に作用することが数多く報告されている(Sacheck et al. Am. J. Physiol. 2004、Tawa et al. J. Clin. Invest. 1997)。そこで、以下のような実験を計画した。 1) 培養筋肉細胞を用いて、培地のIGF-I、DexならびにT3濃度を段階的に設け培養する。一定時間の培養後、細胞を回収し、その後、細胞からRNAを抽出し、筋肉細胞におけるFBXO22ならびにアトロジン-1の発現量をリアルタイムPCR法により定量解析を行う。 2) 先の実験で検討し得た条件で、他のタンパク質分解関連遺伝子の発現量についても測定し、IGF-I、DexならびにT3がタンパク質分解に及ぼす影響を明らかにする。 3) その結果、IGF-I、DexならびにT3のFBXO22遺伝子発現ならびに他のタンパク質分解関連遺伝子の発現に及ぼす影響が明らかとなる。培養筋肉細胞において、これらのホルモンがタンパク質分解に及ぼす影響について明らかにすることができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として65万円、旅費として40万円、人件費・謝金として15万円、その他として10万円を使用する予定である。
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