2012 Fiscal Year Research-status Report
分子シャペロンに注目した、アルツハイマー病に対する創薬基盤研究
Project/Area Number |
24590084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
星野 竜也 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (70457589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | βアミロイド |
Research Abstract |
最近私は、精製したHSP25やHSP70が、試験管内でβアミロイドの凝集を抑制することを見出した。一方、HSP32, HSP47, HSP60にはこのような活性がないことも見出した。この研究には、チオフラビンという蛍光物質とβアミロイドを反応させると、βアミロイドの凝集依存に蛍光が高まる現象を利用した。そこでこの方法を用いて、他のHSP(HSP90, HSP104)、及び小胞体シャペロン(calreticulin, calnexin, GRP78, GRP94, ORP150)に関しても、βアミロイドの凝集を抑制するかを検討した。各分子シャペロンの精製は、バキュロウィルスを用いてこれらを過剰発現させた昆虫細胞から行った。またGRP78に対するErdj4など、シャペロン活性を促進する補助因子(コシャペロン)も精製しその効果を検討した。一方、細胞内でのβアミロイド凝集に対する種々の分子シャペロンの効果も検討した。具体的には、細胞内でβアミロイドを過剰発現させ、凝集したβアミロイドを遠心法で検出する系において、種々の分子シャペロン(上述)の過剰発現の効果を検討した。 (2)種々の分子シャペロンの抗炎症作用 最近我々は、炎症性細胞においてHSP70を過剰発現させると、炎症性サイトカインの発現・産生が抑制されること、及びこの機構としてHSP70が炎症誘導性転写因子であるNF-κBの活性を直接抑制することを見出した。そこで本研究では、他の分子シャペロン(HSP25, HSP32, HSP47, HSP60, HSP70, HSP90, HSP104, calreticulin, calnexin, GRP78, GRP94, ORP150)を炎症性細胞で過剰発現させ、炎症性サイトカインの発現・産生を抑制するかを調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、HSP(HSP90, HSP104)、及び小胞体シャペロン(calreticulin, calnexin, GRP78, GRP94, ORP150)に関して、βアミロイドの凝集を抑制するかを検討した。一方、細胞内でのβアミロイド凝集に対する種々の分子シャペロンの効果も検討した。さらに、分子シャペロン(HSP25, HSP32, HSP47, HSP60, HSP70, HSP90, HSP104, calreticulin, calnexin, GRP78, GRP94, ORP150)を炎症性細胞で過剰発現させ、炎症性サイトカインの発現・産生を抑制するかを調べた。このように、当初の予定通りに研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
私は、GRP78が小胞体からゴルジ体へのAPP輸送を阻害することにより、γセクレターゼによるAPP切断(βアミロイドの産生)を抑制することを見出した(Hoshino et al. Biochem J 2007)。また最近、HSP25がリサイクリングエンドソームを介するAPPの細胞膜移行を抑制することにより、βアミロイドの産生を阻害することを見出した。そこで本研究で私は、APPの輸送に対する種々の分子シャペロン(上述)の効果を網羅的に調べる。具体的には、小胞体からゴルジ体への輸送、ゴルジ体から細胞質膜への輸送、細胞質膜からエンドソームへの輸送(細胞質膜の陥入による、膜蛋白質の細胞内再輸送)、エンドソームからリソソームへの輸送、エンドソームから細胞質膜への逆輸送(リサイクリングエンドソーム依存)、それぞれの輸送に対する個々の分子シャペロンの効果を調べると共に、その分子シャペロンがその部位(エンドソームなど)においてAPPと結合しているかを調べる。さらにそれぞれの輸送を阻害した時(siRNAや各種阻害剤を用いる)、βアミロイドの産生がどのように変化するのかを調べる。 以上の研究は、分子シャペロンによるAPPやβアミロイドの機能・動態の制御を明らかにするためだけでなく、アルツハイマー病治療薬としての分子シャペロン誘導薬の評価のためにも行う。例えばある分子シャペロンがAPP輸送に影響しγセクレターゼによるAPP切断を阻害した場合は、同じくγセクレターゼの基質であるNotch1の切断を検討する。これは、アルツハイマー病治療薬として開発されたγ-セクレターゼ阻害剤がNotch1の切断も阻害するため、免疫異常副作用を起こすことが報告されているためである(Notch1は免疫細胞の分化に関与している)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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