2013 Fiscal Year Research-status Report
分子シャペロンに注目した、アルツハイマー病に対する創薬基盤研究
Project/Area Number |
24590084
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
星野 竜也 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (70457589)
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Keywords | アルツハイマー病 |
Research Abstract |
私は、毒性のないHSP誘導薬がアルツハイマー病の進行を抑制することを示し、分子シャペロン誘導薬の有用性を示した。そこでこれまでの研究でアルツハイマー病に有効であることが示唆された分子シャペロン(GRP78, HO-1)に関して、その毒性のない誘導薬の検索を行った。最近我々は、HSP70誘導生薬・ヤバツイを発見し、それを配合した化粧品を発売した。この成果を評価した中国政府は特別に、2000種以上の生薬を供与してくれた(最近では生薬を海外に出すことに中国政府は慎重になっており、このようなライブラリーを有する国内研究機関は少ない)。そこでこの生薬ライブラリーから分子シャペロン誘導生薬のスクリーニングを行った。 個々の分子シャペロン遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドを作成し、それを保持した細胞を用いた系で一次スクリーニングを行い、イムノブロット法で二次スクリーニングを行った。毒性のない分子シャペロン誘導生薬を得たいので、三次スクリーニングではその生薬の細胞毒性を調べ、細胞毒性を示さない濃度で分子シャペロンを誘導する生薬を選択した。四次スクリーニングではその生薬をマウス脳内に注入し、分子シャペロンを誘導することを確認した。 この研究で同定した生薬をAPPトランスジェニックマウスに脳質内投与し、βアミロイドの産生、老人班の形成、記憶学習能力の低下を抑制するかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私は、試験管内で毒性のない分子シャペロン誘導生薬を発見し、これををマウス脳内に注入し、分子シャペロンを誘導することを確認した。さらに、この生薬をAPPトランスジェニックマウスに脳質内投与し、βアミロイドの産生、老人班の形成、記憶学習能力の低下を抑制することを確認した。このように、有望な生薬の同定(予定では最終年度)に既に成功したため、計画以上に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
私は、GRP78が小胞体からゴルジ体へのAPP輸送を阻害することにより、γセクレターゼによるAPP切断(βアミロイドの産生)を抑制することを見出した(Hoshino et al. Biochem J 2007)。また最近、HSP25がリサイクリングエンドソームを介するAPPの細胞膜移行を抑制することにより、βアミロイドの産生を阻害することを見出した。そこで本研究で私は、APPの輸送に対する種々の分子シャペロンの効果を網羅的に調べる。具体的には、小胞体からゴルジ体への輸送、ゴルジ体から細胞質膜への輸送、細胞質膜からエンドソームへの輸送(細胞質膜の陥入による、膜蛋白質の細胞内再輸送)、エンドソームからリソソームへの輸送、エンドソームから細胞質膜への逆輸送(リサイクリングエンドソーム依存)、それぞれの輸送に対する個々の分子シャペロンの効果を調べると共に、その分子シャペロンがその部位(エンドソームなど)においてAPPと結合しているかを調べる。さらにそれぞれの輸送を阻害した時(siRNAや各種阻害剤を用いる)、βアミロイドの産生がどのように変化するのかを調べる。 以上の研究は、分子シャペロンによるAPPやβアミロイドの機能・動態の制御を明らかにするためだけでなく、アルツハイマー病治療薬としての分子シャペロン誘導薬の評価のためにも行う。例えばある分子シャペロンがAPP輸送に影響しγセクレターゼによるAPP切断を阻害した場合は、同じくγセクレターゼの基質であるNotch1の切断を検討する。これは、アルツハイマー病治療薬として開発されたγ-セクレターゼ阻害剤がNotch1の切断も阻害するため、免疫異常副作用を起こすことが報告されているためである(Notch1は免疫細胞の分化に関与している)。
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[Journal Article] Suppression of Alzheimer’s disease-related phenotypes by geranylgeranylacetone in mice.2013
Author(s)
214. Hoshino, T., Suzuki, K., Matsushima, T., Yamakawa, N., Suzuki, T. and Mizushima, T.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 8
Pages: e76306
Peer Reviewed