2012 Fiscal Year Research-status Report
アクチン結合蛋白質エズリンの上皮機能調節、神経ネットワーク構築における役割の解明
Project/Area Number |
24590104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
浅野 真司 立命館大学, 薬学部, 教授 (90167891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向所 賢一 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (50343223)
位田 雅俊 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (70512424)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トランスポーター / 上皮組織 / アダプタータンパク質 / アクチン結合タンパク質 / 脳・神経 / 生理学 |
Research Abstract |
エズリン欠損マウスと野生型マウスとを比較する形で、腎臓の近位尿細管の刷毛縁膜におけるトランスポーターの発現を比較した。マウスの腎臓を単離して、腎皮質を分離した後、全膜画分をともに、分別遠心法やMgCl2沈殿法を用いて刷毛縁膜画分を調製して、リン酸輸送体(Npt2a, Npt2c)や尿酸輸送体URAT1、および足場タンパク質であるNHERF1の発現を確認した。その結果、全膜画分中におけるNpt2a, Npt2cの発現は、エズリン欠損マウスと野生型マウスの間で大きな差は見られなかったが、刷毛縁膜画分におけるNpt2a, Npt2cの発現は著しい低下が観察された。これと共に、刷毛縁膜画分におけるNHERF1の発現も著しい低下が観察された。これらの事実から、エズリンはリン酸輸送体Npt2a, Npt2cの刷毛縁膜表面への発現に重要な役割を果たすことが確認された。また、これらの効果は、足場タンパク質であるNHERF1との相互作用によって行われることが考えられた。 一方、刷毛縁膜画分におけるURAT1の発現は、エズリン欠損マウスと野生型マウスの間で大きな差は見られなかった。エズリンがURAT1の刷毛縁膜表面への発現に果たす役割は限定的で、Npt2a, Npt2cの場合とは異なることが明らかになった。 これと同様に、エズリン欠損マウスと野生型マウスの十二指腸の刷毛縁膜におけるカルシウムチャネルTRPV6の発現を比較した。その結果、全膜画分中におけるTRPV6の発現は、欠損マウスと野生型マウスの間で大きな差は見られなかったが、刷毛縁膜画分におけるTRPV6の発現は著しい低下が観察された。この事実は、エズリン欠損マウスに低かるしうむ血症が観察されることとよく対応した。これらの事実から、エズリンはカルシウムチャネルTRPV6の刷毛縁膜表面への発現にも重要な役割を果たすことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究成果については、"Ezrin, a membrane cytoskeletal cross-linker, is essential for the regulation of phosphate and calcium homeostasis." というタイトルでKidney International誌に論文発表を行った。 遺伝子改変マウスを用いたin vivo実験に関しては、エズリン欠損マウスに加えて、エズリンと同じアクチン結合タンパク質に属するラディキシン、モエシン欠損マウスを繁殖を開始し、順調に進行している。エズリン欠損マウスの腎臓、胆管、消化管における機能解析や、刷毛縁膜画分の単離、調製についても順調に進行している。 エズリン、ラディキシン、モエシン各欠損マウスからのニューロンの初代培養の系を構築し、神経突起の伸長、分岐などに対する影響の検討についても研究をスタートさせた。 培養細胞や不死化細胞を用いたin vitro実験についても、エズリンのドミナントネガティブ体を発現させる系、siRNAを導入して発現を抑制させる系を構築し、in vivo実験を裏付ける結果を得られるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
アクチン結合タンパク質であるエズリンの生理機能の解明に向けて、これまで通り、遺伝子改変マウスを用いたin vivo実験と、初代培養細胞系や不死化細胞などを含むモデル培養細胞系を用いたin vitro実験系を統合して、包括的な理解を進める形で研究を実行する。また、エズリンと同じアクチン結合タンパク質に属するラディキシン、モエシンについても欠損マウスや、モデル培養細胞系を用いた実験系を構築、スタートさせ、エズリン同様に、生理機能の解明にむけた研究を実施する。 腎臓、消化管、胆管等、上皮組織における研究がある程度まで軌道にのりかけた状況にあるため、神経ネットワークの形成に対する役割の解明の部分についても、研究の更なる進捗を目指す。 エズリン、ラディキシン、モエシンの欠損マウスに見られる形質と、ヒトの疾患との関連性についても、さらに検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
エズリン欠損マウスと野生型マウスとを比較する形で、胆管細胞の刷毛縁膜におけるイオンチャネルやトランスポーターの発現や機能を評価する。エズリン欠損マウスの胆管細胞を含む肝組織について、電子顕微鏡観察を行う。胆管細胞のモデル細胞として温度感受性のSV40大型T抗原遺伝子を導入して不死化させた細胞を用いて、胆管細胞の刷毛縁膜に発現するイオンチャネルやトランスポーターの細胞表面への移行や、細胞膜での安定性を検討する。 24年度に引き続き、大脳皮質の神経細胞ネットワーク形成に対するエズリン、ラディキシン、モエシンの影響を評価する。また、神経細胞の初代培養細胞について、細胞内シグナル伝達に関わるRhoタンパク質活性化の程度を検討し、エズリンの発現とRho活性化との相関を明らかにする。 研究費の使途については、おもに研究遂行に必要な試薬、実験動物などの購入にあてる。適宜、学会やシンポジウムでの研究成果の発表を行うため、研究成果発表の為の旅費(今年度は主に国内旅費)を支出する。
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Research Products
(10 results)