2012 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫系の恒常性維持におけるレチノイン酸産生酵素の役割とその発現制御機構の解明
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24590106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
大岡 嘉治 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (60303971)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビタミンA / レチノイン酸 / 樹状細胞 / RALDH2 / GM-CSF / CpGアイランド / メチル化 / Sp1 |
Research Abstract |
腸管免疫系の恒常性維持(T細胞の分化、ホーミング)にはビタミンAの代謝物であるレチノイン酸が極めて重要な役割を果たしている。我々は腸の組織に存在する樹状細胞(DC)の一部にビタミンAからレチノイン酸を産生する酵素Retinal dehydrogenase 2 (RALDH2)遺伝子を発現する特異的なサブセットが存在し、レチノイン酸を介してT細胞を小腸組織に特異的に配備させる能力を持つことを明らかにしているが、その特異的発現機構は不明であった。本研究では、RALDH2遺伝子のプロモーター領域にはCpG配列に富むCpGアイランドが存在することを見出し、このCpGアイランドのメチル化の状態が、特異的なサブセットにおけるRALDH2発現の要因になっている可能性を想定し、そのメチル化の状態を種々の細胞間で比較検討した。その結果、RALDH2遺伝子の特異的な発現におけるCpGイランドのメチル化の寄与は限定的であり、別の機構がRALDH2遺伝子の特異的な発現に関与していることが示唆された。一方、我々はDCにおけるRALDH2遺伝子の発現には顆粒球マクロファージ分化因子(GM-CSF)が主要な働きをしており、Toll-like receptor (TLR)シグナルやレチノイン酸自身が補助的な役割を果たしていることを明らかにしているが、その詳細な分子機構は不明であった。本研究では、RALDH2遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG配列に転写因子Sp1がGM-CSFやTLR刺激に応答して結合することを見出した。またCpG配列に隣接した部位に、レチノイン酸受容体(RARα)の結合する配列が存在し、RARαが結合することを発見した。レポーターアッセイにより、これらの転写因子が、実際にALDH2遺伝子のプロモーター活性を亢進させることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RALDH2遺伝子の発現に関与する、転写因子の同定、活性化機構についてはおおむね順調に進展している。しかしながら、特定の樹状細胞にRALDH2遺伝子が発現する分子制御機構は、当初想定した、RALDH2遺伝子のプロモーター領域近傍に存在するCpGアイランドのメチル化の影響は限定的で、他の分子機構の存在が想定され、現在探索中である。前者の成果を中心に、後者の成果も含め、現在、論文の作製を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
樹状細胞におけるRALDH2遺伝子の特異的な発現の分子機構を明らかにするため、DNAメチル化以外のエピジェネティックな制御機構の可能性を探索する。具体的には、RALDH2遺伝子の調節領域におけるクロマチン構造の変化を検出し、ヒストンタンパク質のメチル化、アセチル化等の状態を比較検討することを計画している。また、既に明らかにしたSp1等の転写因子以外にRALDH2遺伝子発現に関与する転写因子、シグナル関連分子を探索するため、新たにDNAアレイを導入し、網羅的な解析を行うことを計画している。最終的には、これら同定したRALDH2遺伝子の特異的な発現に関与するエピジェネティックな制御機構や転写因子、シグナル関連分子の炎症性疾患モデル系における動態変化を観察し、炎症性疾患発症の分子機構との関連を明らかにすることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね計画書通り、研究費は試薬類の購入を中心に使用し、特に50万円を超える物品の購入は予定していない。
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