2012 Fiscal Year Research-status Report
ケトン体の化学構造に基づく難治性てんかん制御剤の開発
Project/Area Number |
24590114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 剛 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40370134)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 難治性てんかん / ケトン食 / 構造活性相関 / グルタミン酸作動性シナプス / 膜電位 / スライスパッチクランプ法 |
Research Abstract |
てんかんとは、脳の過剰興奮を主徴とする神経疾患であり、罹患率は約1%と高い。しかも、その約3割は、既存の薬が奏効しない「難治性てんかん」であるため、新たなてんかん治療薬が切望されている。この難治性てんかんに対して、ケトン食療法と呼ばれる食事療法が効果的である。ケトン食療法により、生体内のエネルギー源は、グルコースからケトン体(アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸)へとスイッチする。そこで本研究課題では、ケトン食による神経制御に基づき、難治性てんかん制御剤を開発する。平成24年度(1年目)では、以下2項目に関して検討した。 1、ケトン食時には、生体内でケトン体が上昇する。そこで、脳の興奮性を担うグルタミン酸作動性シナプス伝達を評価系とし、アセト酢酸の化学構造を改変することにより、強力な興奮性シナプス制御剤を探索した。具体的には、スライスパッチクランプ法により海馬錐体細胞の興奮性シナプス電流を測定し、アセト酢酸およびその類似化合物の作用を調べた。その結果、アセト酢酸(βケト酸)のカルボニル基をα位に動かすと、シナプス伝達抑制効果が顕著に増大することを見出した。ベンゼン環を付加すると、さらに抑制効果が増大することも明らかとなった。 2、ケトン食時には、生体内のエネルギー源がグルコースからケトン体へとスイッチする。そこで、このエネルギースイッチをスライス標本下で再現したところ、神経細胞が過分極することを見出した。さらに、この過分極は乳酸の同時投与で回復した。そこでこの乳酸シグナル経路を阻害するために、乳酸脱水素酵素を阻害したところ、予想通り神経細胞は過分極した。さらに、覚醒マウスに対して乳酸脱水素酵素を阻害したところ、ピロカルピン誘発性てんかんも顕著に抑えられた。すなわち、乳酸脱水素酵素はてんかんの創薬標的分子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ケトン食による神経制御に基づき、難治性てんかん制御剤を開発することである。平成24年度(1年目)において、ケトン体の1つであるアセト酢酸の化学構造を2か所変化させることにより、アセト酢酸よりも強力に興奮性シナプス伝達を抑える化合物を見出した。さらに、難治性てんかん制御剤開発のために必要な分子標的として、乳酸脱水素酵素も同定した。すなわち、強力な興奮性シナプス制御剤に加え、てんかん創薬標的分子も発見したことを踏まえ、順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度(1年目)において、ケトン体であるアセト酢酸の化学構造を改変することにより、グルタミン酸作動性シナプス伝達を強く抑える化合物を見出した。そこで今後は、さらにこの化合物デザインを検討すると共に、難治性てんかんモデルマウス(海馬硬化症モデルマウス)に対する作用も同時に検討する。さらに平成24年度において、ケトン食のてんかん制御機構に基づき、乳酸脱水素酵素がてんかん創薬標的分子であることも見出した。そこで今後は、この創薬標的分子が難治性てんかんをも制御できるのか検討すると共に、この創薬標的分子を指標として新たな抗てんかん剤を探索していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画の微調整により、平成24年度において使用しなかった研究費に関して、平成25年度において使用する。実験試薬の購入に用いる予定である。
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Research Products
(5 results)