2012 Fiscal Year Research-status Report
必須アミノ酸トランスポーターLAT1のT細胞活性化における役割
Project/Area Number |
24590328
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
林 啓太朗 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10323106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JUTABHA Promsuk 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90541748)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アミノ酸トランスポーター / LAT1 / T細胞 / アミノ酸欠乏ストレス反応 |
Research Abstract |
LAT1は癌細胞に高発現するアミノ酸トランスポーターであるが、T細胞を活性化することによってもLAT1の発現が顕著に増大することが研究代表者の結果からわかっている。そこで、T細胞におけるLAT1の機能を解析するために、 ヒト末梢血T細胞を活性化し、siRNAを用いてヒト末梢血T細胞のLAT1の発現を減少させ、ロイシンの取り込みを調べた。その結果、LAT1 siRNAによりロイシンの取り込みが顕著に抑制されることがわかった。さらに、LAT1のT細胞における免疫学的機能を調べるために、LAT1 siRNAを導入したヒト末梢血T細胞を活性化しサイトカイン産生量を解析した。その結果、LAT1 siRNAによりサイトカイン産生が顕著に抑制されることが明らかとなった。これらの結果は、LAT1が癌細胞だけでなく、ヒトの正常免疫反応においても極めて重要なアミノ酸トランスポーターとして機能していることを示した、非常に重要な知見である。 また、LAT1機能阻害によるT細胞の遺伝子発現変動を調べた結果、ストレス応答分子のDDIT3の発現が上昇することがわかった。この発現上昇は、必須アミノ酸の欠乏によっても見られた。そこで、DDIT3のT細胞における機能を調べるために、ヒト末梢血T細胞にDDIT3を強制発現させて活性化後、サイトカイン産生量を解析したところ、サイトカイン産生量が顕著に減少することがわかった。 以上の結果から、LAT1は活性化ヒトT細胞の主要なアミノ酸トランスポーターであり、LAT1の機能が阻害されるとDDIT3の発現上昇により免疫反応が抑制されるという、これまで未知であった活性化T細胞のアミノ酸輸送機構、及びアミノ酸欠乏に対する応答メカニズムの非常に重要な知見が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した当初の計画では、平成24年度にLAT1がヒトT細胞の主要なアミノ酸トランスポーターであることを確認する予定であり、この目的は達成出来た。また、LAT1のヒトT細胞における免疫学的機能を調べる実験は、当初、平成25年度以降に行う予定であったが、この実験も平成24年度内に行うことが出来た。さらに、LAT1機能阻害によるT細胞の遺伝子発現変動も平成25年度以降に行う計画であったが、この実験も平成24年度内に始めることが出来、成果が上がっている。 以上の理由から、研究の目的の達成度は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、T細胞におけるLAT1の機能の解析を継続する予定である。 まず、当初の計画にあった、LAT1特異的阻害薬JPH203を用いて、ヒト末梢血T細胞におけるロイシンの取り込み及びサイトカイン産生量を解析する。また、LAT1機能阻害により、DDIT3の発現が上昇することを明らかにしたが、それ以外の遺伝子の発現変動も引き起こされる可能性があるため、JPH203による活性化T細胞のストレス応答関連遺伝子の発現変動解析を行い、LAT1機能阻害によるストレス反応のしくみを調べる予定である。このような実験を行うことにより、T細胞がアミノ酸欠乏時にどのようにしてストレス反応を惹起し免疫反応を抑制するのかというメカニズムの解明につながると考えられる。 また、In vivoにおける過剰免疫反応に対するLAT1阻害薬の影響を解析するため、免疫疾患モデルマウスにJPH203を投与し、疾患治療に対する効果を調べていく予定である。In vivoのデータを蓄積することにより、最終的にはJPH203をヒト免疫疾患の治療薬として確立することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、平成24年度にルミノメーターを購入する予定であったが、別の予算から同じ機器を購入することが出来たことに加えて、消耗品についても極力、低価格の物品を購入するように務めたために、当初の計画よりも使用金額が下回り、次年度に使用する研究費を計上した。この研究費については、JPH203による活性化T細胞の遺伝子発現変動解析、及び免疫疾患モデルマウスを用いた実験に使用する予定である。
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