2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590361
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 講師 (10398753)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 |
Research Abstract |
難治性血液疾患を対象として施行される造血幹細胞(HSC)移植は、抗がん剤や放射線治療に不応となった患者にとっては最後の治療手段であり、その成否は患者の予後を大きく左右するものである。より安全で有効な再生医療法の確立のためには、幹細胞の組織再生能力を最大限に引き出すことと同時に、幹細胞の再生反応にともなうストレスから保護することによって幹細胞機能の長期的な維持を達成する新たな治療戦略の確立が重要である。 近年、造血促進因子としてtissue-type plasminogen activator (tPA)の役割が注目されている。申請者らは、放射線照射などの前処置により造血回復を促進するtPAの発現が骨髄内で亢進することを確認した。ところが、その抑制因子であるplasminogen activator inhibitor type-1(PAI-1)の発現も同時に亢進するため、造血再生が抑制されるということを見いだした。そこで、PAI-1阻害剤を投与することによる造血再生における有効性について検討を行った。致死量放射線を照射したマウスにHSCを移植し、PAI-1阻害剤を5日間投与し、その後の造血回復を検討した。その結果、PAI-1阻害剤を投与することにより線溶系が活性化され、幹細胞増殖因子の産生が増強した。そして、ドナー由来のHSCの増幅が誘導され、造血系の再生反応が亢進した。重要なことに、PAI-1阻害剤の投与により長期造血再生能も維持されていた。 以上の結果から、幹細胞移植の初期にPAI-1活性を抑制することは、造血再生の効率化と幹細胞活性の維持の両方を達成する理想的な再生医療法となることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は造血の早期回復を検討する計画であったが、申請者らは長期造血維持能についても解析をすることができ、当初の目標であった新規分子標的薬による造血の早期回復と長期維持の両方を達成する事ができた。また、遺伝子欠損マウスを利用した研究計画も順調に進展し、新規分子標的薬の作用機序についても明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスを用いた造血回復については概ね達成することができたので、ヒト造血細胞の再生について詳細に検討する。すなわち、マウス実験によって得られた知見を再生医療に応用するためには、ヒト化モデル動物を用いた解析が必須である。申請者らは、前臨床試験として有用なヒト造血系再構築モデル実験系を確立した(Yahata, et al. J Immunol, 2002)。また、免疫不全マウスにヒト臍帯血CD34+細胞を移植すると、長期間にわたって造血系を維持し続けるヒトHSCの動態を解析する実験系を確立した(Yahata, et al. Blood, 2006)。さらに、移植後1~2週間で好中球や血小板といった初期生体防御を担う細胞群への分化能の高いHSC集団を同定することに成功し、ヒト造血系の初期再生反応を解析する生体モデル系を確立した(Yahata, et al. Stem Cells, 2008)。そこで、これらの実験系を利用し、新規分子標的薬がヒト造血系の早期回復と長期造血維持においても効果を発揮するか否かを検討し、臨床応用につなげる知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費は、実験用動物、試薬•抗体類、プラスチック器具類、そしてヒト造血細胞源として臍帯血の購入に使用予定である。なお、設備備品費、謝金等は予定していない。
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