2013 Fiscal Year Research-status Report
血清刺激に応答する病原真菌のステロール取り込み機構の解明
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24590540
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
中山 浩伸 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (40369989)
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Keywords | 微生物 / 感染症 / 発現制御 / 脂質 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
抗真菌薬の多くはステロール合成阻害剤であるが、真菌の中には宿主からステロールを取り込み生育に利用するものがあり、ステロールの取り込みは真菌の感染成立や薬剤耐性獲得と関わりが深い。本研究は、カンジダ・グラブラータを用い、真菌のステロールの取り込み機構の全容と生理的意義を明らかにすることを目的とする。 平成25年度は、同定したマンノプロテインTIR3がステロールトランスポータCgAUS1と同様に転写因子UPC2A、UPC2Bに制御されていること、ステロール取り込みには、CgAUS1とTIR3だけでは不十分であることを明らかにした(第57回日本医真菌学会総会)。また、ステロール合成遺伝子欠損株が変異することでステロール要求生株として好気条件で生育できる株を取得し、それらの株の各種抗真菌剤の感受性の変化を調べた(第87回細菌学会)。これらの株はステロール取り込みが常にONになっていることを利用しマイクロアレイ解析から、CgAUS1の機能発現までのシグナル伝達経路に関わる因子を同定すべく解析を進めている。この他、1)ステロール取り込みに関わる因子を漏れなく同定する目的で、カンジダ・グラブラータのゲノムワイドな転写開始点の同定を行い、新規59遺伝子を発見した(Genes Cells. 2014 in press, doi: 10.1111/gtc.12147)。2)アゾール剤に対する薬剤耐性する他のトランスポータを検索しCgAUS1との関連を調べる目的の第一段階として、drug:H+ antiporterの解析を行った(J Antimicrob Chemother. 2014, in press doi: 10.1093/jac/dku044)。 これらの結果は、ステロールの取り込み機構や薬剤耐性機構の詳細な解明に大きく貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、CgAUS1の機能発現までのシグナル伝達経路に関わる因子の同定を行う上で、UPC2AおよびUPC2Bのターゲットとなる遺伝子群の中でステロール取り込みに直接関わる因子の特定とそれら遺伝子群の発現調節領域の同定を計画した。また、マウスおよびカイコの感染実験を用いたステロール取り込み関連因子の宿主感染における重要度の確認も計画した。 このうち、前者については、マイクロアレイ解析から、UPC2Bに支配される遺伝子群(CgAUS1とTIR3を含む約50の遺伝子)を同定した。強制発現株を作製してステロール取り込みを測定することから、ステロール取り込みには、CgAUS1とTIR3だけでは不十分で、トランスポータとマンノプロインが発現すればステロール取り込みが起こる近縁種の出芽酵母サッカロミセス・セレビシエと異なることを明らかにした。次に同定した遺伝子群の中から輸送タンパクに注目し、新たな因子の特定を試みている。また、UPC2Bが結合するコンセンサス配列を同定すべく、バイオインフォマティクスを用いたプロモーター解析も同時に行っている。さらには、CgAUS1の機能発現までのシグナル伝達経路に関わる因子の同定が遅れていることから、ステロール合成遺伝子欠損株(erg1, erg7, erg25, erg27)がさらに変異することで、ステロール要求生株として好気条件で生育できる株を取得し、それらの発現プロファイルを野生株と比べることから、因子の同定を試みている。 感染実験ついては、upc2A、upc2Bの変異株を用いたカイコ感染実験に着手したが、マウス感染実験については未着手であるため、この項目が一番遅れている。 以上をまとめ、本研究課題全般として、進行がやや遅れていると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1)CgAUS1の機能発現までのシグナル伝達経路の同定、2)UPC2AおよびUPC2Bの結合モチーフ(コンセンサス配列)の同定やCgAUS1やTIR3のプロモーター領域に直接に結合するタンパクの同定、3)マウスおよびカイコの感染実験を用いたステロール取り込み関連因子の宿主感染における重要度の確認、を下記のように進め、ステロールの取り込み機構の全容と生理的意義の解明につなげる。 1)については、25年度のDNAマイクロアレイ解析の結果から選択出来た候補遺伝子の欠損株を作製し、ステロール分析や薬剤感受性から、ステロール取り込みに直接関わる因子の同定を急ぐ。また、ステロール合成に関わる遺伝子の欠損株から、新たな変異を得ることで、好気条件でも生育可能となったステロール要求株のDNAマイクロアレイ解析の結果からもステロール取り込みに関わる因子の同定を試みる。特に、CgAUS1の機能発現までのシグナル伝達経路のキーとなっていると考えられるUPC2AおよびUPC2について、それらの活性化経路や関連について明らかにする。2)については、血清添加培地または、鉄キレーター添加培地で培養した野生株の抽出物と同定した転写活性化領域のDNAを用いて、ゲルシフトアッセイを行い、シフトしたバンドからタンパク抽出して質量分析を行うことから同定する。さらに、必要に応じてライブイメージング用のタグを挿入して局在を調べたり、相互作用する因子をアフィニティ精製-質量分析の手法を用いて同定したりする。3)については、UPC2AやUPC2Bのほか、1)で新たに同定した因子の病原性への関与の有無について、カイコおよびマウスの感染実験を用いて調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロアレイの解析の受託依頼が3月となり、解析結果を受け取るのが4月となったため、支払いを次年度に繰り越したため。 繰り越し分は、物品費(マイクロアレイの解析の受託費用)として使用する。また、物品費として、変異株等の作製時に行う遺伝子操作実験やステロール取り込みの発現にいたるシグナル伝達経路に関わる因子の選定のために行うDNAマイクロアレイ解析、細胞内局在を調べる生化学的解析などに必要な試薬類および消耗品を購入する。また、感染実験に使用するカイコ(200 匹)、マウス(Balb/c:100頭)も物品費として購入する計画である。これらを合わせての使用額を900,000円と計画した。また、国内外の学会発表、研究会や研究打ち合わせに必要な旅費、宿泊費、日当を“国内旅費”として200,000円を使用する計画である。その他、論文を投稿するための研究成果投稿料と論文別冊作製に必要な経費として100,000円を使用する計画である。
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