2012 Fiscal Year Research-status Report
比較ゲノム解析を基盤にした緑膿菌の内因性血液感染メカニズムの解析
Project/Area Number |
24590541
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
奥田 潤 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90334276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 直正 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30121560)
皆川 周 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (50445962)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 緑膿菌 / 内因性血液感染 / 線毛 / pilA / CAMLG / カルシウム / 細胞傷害 |
Research Abstract |
高病原性の血液分離緑膿菌と非血液分離株との比較ゲノム解析により、接近(べん毛遺伝子群)、接着(線毛遺伝子群)、宿主細胞障害 (III型分泌機構)、血液内での増殖に寄与する遺伝子群(鉄獲得系遺伝子群) が血液感染株に特異的に存在することを見出した。これらの遺伝子の中で、本年度は接着に関与する線毛遺伝子 pilA に着目し、本菌のPilA付着線毛がどのようなメカニズムで本菌の腸管経由の内因性感染機構に関わるかを明らかにした。pilA遺伝子欠損変異株(delta pilA)を作製後、野生株とdelta pilA株間における上皮細胞への細胞内侵入活性を比較したところ、細胞内侵入活性に有意な差が認められなかった。そこで、細胞内に侵入した緑膿菌の線毛を構成するPilAタンパク質が、侵入した宿主細胞内で未知の宿主細胞因子と相互作用し、宿主細胞に何らかの影響を与えている可能性を考え、PilAタンパク質と相互作用する宿主因子を、yeast two-hybrid assayにより探索した。その結果、92個の陽性クローンが得られ、その内の85クローンがCAMLGと呼ばれる宿主因子をコードしていた。CAMLGは宿主細胞のカルシウム濃度を調節する小胞体膜タンパク質であることが知られていることから、上皮細胞にPilAタンパク質を発現あるいは野生株を感染させたところ、細胞内カルシウム濃度の上昇がみられた。さらに、上皮細胞内にPilAタンパク質を発現させると、細胞内カルシウムの上昇に伴って細胞傷害活性のあるCOX-2遺伝子発現の上昇も見られた。以上の結果から、上皮細胞内に侵入した緑膿菌は、付着線毛構成タンパク質であるPilAを介して、宿主細胞の小胞体膜に存在するCAMLGタンパク質と相互作用し、細胞内カルシウム濃度さらにCOX-2活性を上昇させ、その結果、上皮細胞傷害を引き起こす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑膿菌による腸管経由トランスロケーションおよびそれに続く血液内での増殖メカニズムの全体像を解明し、解明したメカニズムをもとに、緑膿菌による腸管経由内因性血液感染の予防法や治療法の考案につながる標的遺伝子や標的タンパク質を同定することを目的としている。これまでに、標的遺伝子としてIII型分泌機構のエフェクターであるexoS遺伝子を同定している。本年度の研究により、緑膿菌の付着線毛が宿主細胞内でカルシウム上昇を引き起こし、上皮細胞に傷害を引き起こすメカニズムが明らかとなった。この研究成果により、新たな標的遺伝子として付着線毛の構成タンパク質PilAをコードするpilA遺伝子を同定できたことは、今後の予防法や治療法の考案につながる成果と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高病原性の血液分離緑膿菌と非血液分離株との比較ゲノム解析により、宿主細胞障害因子であるIII型分泌エフェクターExoSが血液感染株に特異的に存在し、腸管上皮細胞内に注入されたExoSがFXYD3と呼ばれる宿主因子と相互作用することにより腸管上皮細胞間のタイトジャンクションが破綻し、その結果、本菌が腸管から血液へトランスロケーションする可能性があることを既に明らかにしている。今後は、この研究成果に着目し、ExoSに結合する抗体を作製し、その抗体を腸管上皮細胞内に予め送達させることにより、ExoSとFXYD3の相互作用を阻止し、結果として、本菌の腸管上皮細胞層透過活性が減弱化するかどうかの評価を行う。また、ExoSは、宿主細胞間のタイトジャンクションの破綻だけでなく宿主細胞障害など、多機能な活性を宿主細胞に誘導することから、ExoSと相互作用する未知の宿主因子の探索を、yeast two-hybrid assayを用いて行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
同定した標的タンパク質ExoSに対するペプチド抗体を作製する。ExoSペプチドを抗原とした抗ExoSウサギポリクローナル抗体を、業者に依頼して作製する (株式会社スクラム)。抗体作製後は、抗ExoS抗体を腸管上皮細胞内に送達する方法を検討する。そのために、市販の抗体導入試薬 (GenomeOne-Cab, 石原産業株式会社)を購入して検討する予定である。抗体導入の目途がつけば、最終的に抗体を導入した培養細胞モノレイヤを作製し、緑膿菌の透過活性減弱化評価を行う。また、ExoSと相互作用する未知の宿主因子の探索を、yeast two-hybrid assayを用いて行いたい。
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