2012 Fiscal Year Research-status Report
コンピテンスの修得と医学生の成長に関わる臨床実習の経験と学習の解析
Project/Area Number |
24590620
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田川 まさみ 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90261916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村永 文学 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00325812)
網谷 真理恵 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, その他 (90574400)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医学教育 / 学習成果基盤型教育 / コンピテンス / 臨床実習 / 卒前教育 / 振り返り |
Research Abstract |
鹿児島大学医学部医学科の5-6年次学生と臨床実習前の臨床体験実習3-4年次学生の2群における1)コンピテンスと情緒の成長の評価方法の構築と修得の実態解明、2)質的および量的研究手法により、学習過程の分析と上記の修得に影響を及ぼす因子の解明を行い、3)1、2の結果に基づいて学習成果を高める効果的な医学教育、特に臨床経験のあり方を提案することを目的とした研究である。平成24年7月に鹿児島大学医歯学総合研究科の倫理審査を経て本研究の承認を得た後に、対象学生の情報収集を開始した。 臨床実習を修了した6年次学生で研究に同意した54名を対象に「医師になるための重要な経験」「現在の自覚や心理」に関する自由記載のアンケートを実施したところ、37名(男性24名、不明1名)からの回答が得られた。重要な経験の場として臨床実習(19名)、部活動(10名)、家庭(7名)、対象の人物には医師(15名)、先輩後輩(9名)、自分自身(9名)が上げられた。医師となることに対する不安、こわい、心配という感情は(21名)であり、楽しみ、うれしい、期待(10名)より大幅に多かった。正統的周辺参加となる自身の経験を記載したものは5名のみであり、一方臨床から離れた部活動での経験を上げたものが多いことは、医療現場における実践経験の乏しさを反映しており、現実的に医師としての業務に直面する意識が乏しく漠然とした不安や期待と考えられた。 3年生からは101名の同意が得られ、各自のeポートフォリオに記載された振り返りのデータ収集を開始した。4年生からは95名の同意が得られた。4年次共用試験、6年生はそれに加え臨床終了時OSCEと卒業試験として実施された客観試験データを収集したので、学習成果と経験、医師としての成長との関連を明らかにする量的比較研究での使用が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年は倫理審査の承認手続き、コンピテンスと情緒の成長の評価方法の構築、臨床体験、臨床実習における学習過程の分析のための情報収集と質問表の作成を計画していた。 コンピテンスと情緒の成長の評価方法の構築のための倫理観、責任観、情緒の成長の評価方法作成は、2項目の自由記載によるアンケートを作成して6年次学生を対象に実施した。倫理観に関する記載が乏しく評価ができなかったため、次年度の調査には倫理的対応に関する質問項目を追加することとした。量的評価のための質問項目作成は次のアンケート実施時期までに完成する予定であり、ほぼ計画を達成している。 臨床体験、臨床実習における学習過程の分析のための情報収集は、3年次学生101名と4年生(25年生に5年次学生として臨床実習を開始する学生)95名から同意を取得し、対象者の98%以上からのデータ収集が可能となった。臨床実習中の5年次学生に平成24年度中の研究の説明と同意取得が困難であったため平成25年度に同意取得後、予定しているアンケート調査を行うこととした。 3年次が授業で用いている電子ポートフォリオの記載を研究データとして収集を開始した。4年次学生の共用試験のデータを収集した。収集したデータの質的解析が遅れているが、研究体制整備と情報収集に関しては平成24年度末までの計画はほぼ達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度6年次学生のアンケート結果より明らかになった学生の経験に基づき、更に具体的事例と量的評価を加えて25及び26年度に情報収集し、学習成果との比較検討を行う予定である。平成25年度は新たに6年次学生と3年次学生の研究同意を得て、予定していた全ての対象者からのデータ収集を行う体制を整備し、データの整理と解析を進める。 1.コンピテンスと情緒の成長に関する現状の学習成果の評価:コンピテンスの修得は6年次学生の臨床実習終了時のOSCE、卒業試験として実施する多肢選択問題の成績、4年次学生を対象とした共用試験OSCEとCBTの成績を用いる。情緒の成長(医師としての意識・自覚、自信、責任感、感情など)は、24年度のアンケートを改良した質問表を用いて5年終了時と6年カリキュラム終了時に実施する。 2. 臨床体験、臨床実習における学習過程の解析:3年、4年は電子ポートフォリオの記述、4年終了時、5年終了時、6年終了時に質問表(自由記載を含む)によるアンケートを用いて、学習過程(経験、振り返り、概念化、応用への準備、強化、自己主導型学習等)に関する学生の態度・行動・意識を明らかにする。さらに、1で明らかになる個々の学生の学習成果と学習過程を比較検討し、臨床医としての成長に重要な要素、過程の解析を行う。量的データは統計学的な検索を行う。医師としての能力修得における必須、促進、阻害因子を経験の種類、回数と個人の学習過程から明らかにする。 データ収集に並行して実施する質的解析結果を踏まえて、アンケートによる質問項目の変更を行い、重要な情報を収集する。アンケートは実施時期により学生の意識が異なる可能性があり、実習や試験の影響を考慮した実施と解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では学生の記述による情報と試験データを研究解析可能なデータとして整理保存するために、研究補助員を1名、通年雇用する。3年次と4年次学生が年間を通して利用している電子ポートフォリオに研究対象者の必要な個人の経験と振り返りのデータが記載されている。研究補助員はこれらのデータを引き出して対象者個人毎に整理、蓄積し、5年次、6年次学生のアンケート自由記述の整理、量的調査データを整理する。さらに共用試験と卒業時のOSCE、多肢選択問題による試験のデータを整理、統合する作業を行う。また量的データは統計解析ソフトで使用可能な形式で整理する。このために研究補助員の人件費、アンケート調査とデータの保存を行うための消耗品の購入に研究費を使用する。 現在関連する領域の学術報告や質的及び混合研究手法に関する最新の知見が国内外の学会で発表されており、研究責任者が新たな情報収集と討議を行うために国内旅費、外国旅費並びに国際学会参加費に研究費を使用することとした。
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