2013 Fiscal Year Research-status Report
コンピテンスの修得と医学生の成長に関わる臨床実習の経験と学習の解析
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24590620
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田川 まさみ 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90261916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村永 文学 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00325812)
網谷 真理恵 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教(Research Associate) (90574400)
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Keywords | 医学教育 / プロフェッショナリズム / アイデンティティ / 振り返り / 経験 |
Research Abstract |
鹿児島大学医学部医学科の5-6年次学生と臨床実習前の臨床体験実習3-4年次学生の2群における1)コンピテンスと情緒の成長の評価方法の構築と修得の実態解明、2)質的および量的研究手法により、学習過程の分析と上記の修得に影響を及ぼす因子の解明を行い、3)1、2の結果に基づいて学習成果を高める効果的な医学教育、特に臨床経験のあり方を提案することを目的とした研究である。平成24年7月に鹿児島大学医歯学総合研究科の倫理審査を経て本研究の承認を得た。 平成25年度5年次学生94名と6年次学生66名から研究承諾を得た。平成24年の調査結果に基づき、学生の具体的な経験が明らかになるようにアンケート項目を調整し、卒業時における情緒、医師になる上で重要な経験、学習方法に関する情報を6年次学生から収集した。調査対象6年次学生の4年次に実施した共用試験、6年次に実施したOSCE、卒業試験を学習成果のデータとして、情緒、経験との比較検討を行った。情緒あるいは経験と試験の成績には相関が認められなかった。期待等ポジティブな感情を記述した学生には、患者との良好な経験が多い傾向が示され、大学以外での経験も情緒に影響していることが示唆された。 平成25年3年次学生105名と4年次学生101名から研究承諾を得て、eポートフォリオに記録された振り返りを集積した。留年者を除き、現在それぞれ104名、94名が対象者となっている。4年次学生の2年から4年までの振り返りの記述について、医師としての意識Professional identityのレベルを評価したところ、医療面接学習でのロールプレイ、地域医療機関等でのロールモデル、患者との経験をきっかけとして、学生の医療者としての意識を高めていることが示され、34.0%の学生が社会・患者との関係における自分の役割を自覚した記述をしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年は平成24年度6年次学生のアンケート結果より明らかになった学生の経験に基づき、更に具体的事例と量的評価を加えて、6年次学生の学習成果との比較検討、3-4年次学生の振り返りと学習経験の解析と過程の解析を行う予定であった。平成25年度は新たに6年次学生と3年次学生の研究同意を得て、予定していた全ての対象者からの承諾を得た。 1.コンピテンスと情緒の成長に関する現状の学習成果の評価:コンピテンスの修得に関するデータとして、6年次学生の臨床実習終了時のOSCE、卒業試験として実施する多肢選択問題の成績、4年次学生を対象とした共用試験OSCEとCBTの成績を収集した。情緒の成長(医師としての意識・自覚、自信、責任感、感情など)は、24年度のアンケートを改良した質問表を用いて6年カリキュラム終了時に実施した。3-4年次学生は電子ポートフォリオの記述を集積した。4年次学生の記述はアイデンティティの修得レベルで評価し、データ収集と評価を予定通り実施した。 2. 臨床体験、臨床実習における学習過程の解析: 6年終了時に質問表(自由記載を含む)によるアンケートを用いて、学習過程(経験、振り返り、概念化、応用への準備、強化、自己主導型学習等)に関する学生の態度・行動・意識を調査した。3年、4年はカリキュラムと電子ポートフォリオの記述をデータとした。さらに、1で明らかになった個々の学生の学習成果と学習過程とを比較検討し、臨床医としての成長に重要な要素、過程の解析を量的データの統計学的な検索を含めて行っている。現在までにデータ収集が終了した6年次学生と4年次学生については、医師としての能力修得の必須、促進因子となる経験の種類、および個人の学習過程の解析を行い、研究成果の一部は国際学会で発表予定である。ほぼ計画通りの進行となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は臨床実習前の学生、全ての学習を終了した学生の各2学年のグループのデータ収集が完了し、平成25年に示唆されたアイデンティティの確立・情緒の成長と学習経験、学習成果との関連を2グループについて検討し、更に医学教育改善にむけての提案をまとめる。 1.コンピテンスと情緒の成長に関する現状の学習成果の評価:平成25年度と同様に、6年次学生の臨床実習終了時のOSCE、卒業試験として実施する多肢選択問題の成績、4年次学生を対象とした共用試験OSCEとCBTの成績を収集する。情緒の成長について、6年カリキュラム終了時のアンケートと、現4年生の電子ポートフォリオの振り返りの記述を収集し、アイデンティティのレベルを含む質的評価を行う。 2. 臨床体験、臨床実習における学習過程の解析:平成25年度と同様に、3年、4年は電子ポートフォリオの記述、6年終了時に質問表(自由記載を含む)によるアンケートを用いて、学習過程と学生の態度・行動・意識に関するデータを収集する。平成25年度から集積した2学年のデータを用いて、個々の学生の学習成果と学習過程を比較検討し、臨床医としての成長に重要な要素、過程の解析と量的データの統計学的な検索を行う。3-4年次学生の振り返りには多くの記述があるため、授業での経験、時期による意識の変化を解析する。これらにより医師としての能力修得と情緒の成長における必須、促進、阻害因子を経験の種類、回数、学習者個人の因子から解析し、医師としての成長過程について明らかにする予定である。 3. 教育改善計画の提案:学習と成長の過程に基づいた必要な経験が可能となる教育プログラムと学習環境を提案する。 本研究の最終年度であり、研究成果をまとめて発表のための準備を整える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3-4年学生のデータソーズとしてeポートフォリオの記載を用いることで十分に解析が行なえると判断し、研究補助者が効率よくデータ収集と管理を行ったために、当初予定より人件費が少なくなった。学会参加費を別の財源で支払うことになったために残額が生じた。 2013年の研究成果の発表を2014年5月に開催されるオタワ会議(カナダ、オタワ)で行うことになり、最終年度の国際学会での発表予定が2回に増えたため、最終年度の予定金額では不足することが予想された。2013年度の予算を使用することにより、研究成果の発表の機会を確保することとした。
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Research Products
(1 results)