2013 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患患者の歯髄由来iPS細胞とメタロチオネインを活用した薬物治療薬開発
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24590664
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
保住 功 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20242430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國貞 隆弘 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30205108)
犬塚 貴 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184734)
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Keywords | 神経変性疾患 / iPS細胞 / メタロチオネイン / 筋萎縮性側索硬化症 / 分化誘導 / 創薬 |
Research Abstract |
神経変疾患患者の不要となった歯髄からiPS細胞を作製している。疾患によっては初期化抵抗性を示し、iPS細胞ができにくいものもあった。幸い、京都大学iPS細胞研究所の技術支援も受け、血液の血球細胞からもiPS細胞の作製を行っている。 当初、歯髄細胞からiPS細胞から各種神経細胞に分化させ、治療薬として活用することを想定したが、採取した歯髄細胞に歯髄幹細胞が存在し、各種神経細胞に分化することが、細胞マーカーによって証明された。マウスの脊髄損傷の治療にヒト歯髄細胞が有効であることが報告されている。幸い我々の施設に筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデル犬がおり、脊損モデル犬、ALSモデル犬に犬歯髄細胞の移植を考えた。脊損モデル犬において安全性は確かめられたが、実験方法の問題等からまだ明らかな有効性は確認できていない。 メタロチオネイン(MT)のアイソフォーム(I/II, III)について、ALS患者のヒト脊髄とコントロール患者の脊髄における量をドットブロット法によって検査したが、検体数の不足もあって、有意差が出るまでには至っていない。一方、MTと同じ亜鉛トランスポーターのZnTファミリーにおいて、ZnT3とZnT6がALS群の脊髄において有意に低下していた。また、ZnTの脊髄における局在を解析したところ、運動神経を含む神経細胞に選択的に発現していることが明らかとなった。さらに、ALSモデルマウスの脊髄において、ZnT3とZnT6のタンパク質量に変化は認めらす、ALSにおけるZnT3とZnT6の減少は、単に神経脱落によるものではなく、ALSの発症・病態の進行に関与している可能性が示唆された。これらは貴重な所見と考えられ、論文準備中である。MT-III結合タンパク質についても3つが同定され、その特異性の解析が進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疾患により歯髄細胞からiPS細胞の作製には手間取ったが、京都大学iPS細胞研究所の技術支援も受け、血液の血球細胞からもiPS細胞の作製も並行して行っている。またiPS細胞作製し、分化誘導させなくても、自家歯髄細胞を持いて、治療に使えることが判明し、長期間を必要としないで、計画達成のための迂回路が見い出せた。 ALS患者のヒト脊髄の収集には苦労しているが、引き続き剖検ヒト脊髄の収集とメタロチオネインの検索を行っている。同種亜鉛結合蛋白、トランスポーターのZnTで、アイソフォームのZnT-3、ZnT-6がALS患者脊髄で有意な低下を認めたことは重要な所見である。亜鉛がALSの病態に深く関与することはこれまでの研究から推測はされてきたが、分子レベルで詳しい実態が明らかになったことはその意義は大きい。今後、我々が見出した脊髄の亜鉛増加との関連に関心が持たれる。とくにZnT-3は脳に局在し、シナプス小胞内への亜鉛輸送に機能している。ZnTの発現低下は、小胞体ストレスを惹起することが報告されており、ALSにおける亜鉛を基軸とした病態解明に大いに寄与する。病初期に関連することが示唆された。 MT-III結合タンパク質についてもその特異性の証明に難渋してはいるが、免疫沈降法を工夫しながら解析を進めている。これらが明らかになれば、MTの作用機序の解明に大いに貢献する。 以上、当初の予測よりはかなり難渋するも、迂回路も見い出し、またserendipity的な発見も行いながら、ALSをはじめとする神経変性疾患における治療薬開発という当初の最終目標に確実に向かって進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、神経変疾患患者の不要となった歯髄から、そして患者の血液からiPS細胞を作製していく。各種神経細胞への分化も行っていく。歯髄幹細胞を含む歯髄細胞を活用して、ALSモデル犬の治療を試みる。歯髄細胞にはプロポリスなど様々な既存薬が各種神経栄養因子の分泌増大に非常に良く作用することを見い出しており、メルビン、アスタキサンチン、メタロチオネイン、またその結合低分子化合物の作用も合わせて、検索してゆく。細胞内亜鉛濃度の低下が、家族性ALSの原因タンパク質SOD1と小胞体タンパク質Derlin-1の結合を促進し、小胞体ストレスを惹起することも報告されている。ALS患者において減少が認められたZnT3のノックダウンによって、小胞体ストレスが惹起されるか、また、SOD1とDerlin-1の結合が促進されるかについても今後検討する。細胞外および細胞内小器官にZnを運搬するZnT(SLC30)ファミリー以外にも、細胞質向きに亜鉛を運搬するZIP(SLC39)、そして引き続きMTに関してもALS患者の脊髄における発現量変化について検討する。MT結合タンパクを解明し、その作用機序を明らかにする。神経変性疾患、とくにALSモデルにおいて、歯髄細胞、iPS細胞を含めた幹細胞を移植する、また幹細胞の投与前に、あるいは同時にMT等の投与による相乗効果を狙った治療法について検討していく。
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[Presentation] 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者脊髄における亜鉛トランスポーターZnTの発現量低下2014
Author(s)
金子雅幸,野口貴生,池上沙織,櫻井丈之,位田雅俊,神戸大朋,柿田明美,豊島靖子,山田光則,原 英彰,高橋 均,保住 功
Organizer
第134回日本薬学会年会
Place of Presentation
熊本大学
Year and Date
20140327-20140330
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