2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒスタミンH4受容体遮断薬の掻痒における作用点の解明と新たな治療戦略
Project/Area Number |
24590723
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山浦 克典 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10543069)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | H4受容体アンタゴニスト / ステロイド長期塗布誘発掻痒 / プロスタグランジンD2 (PGD2) / ロイコトリエンB4 (LTB4) / LTA4 hydrolase inhibitor / サブスタンスP急性掻痒 / ヒスタミン / 痒み |
Research Abstract |
本研究は、H4受容体の急性掻痒、慢性掻痒および長期外用ステロイド剤の反復塗布に起因する掻痒症に対するH4受容体アンタゴニストの作用を分子レベルで解析することにより、未だ解明されていないH4受容体の掻痒における作用点の解明を目的としている。研究計画に基づき、以下の点について研究成果を得た。 1.サブスタンスP掻痒におけるLTB4の関与を明らかにするため、LTB4産生を特異的に阻害するLTA4 hydrolase inhibitorを用いて検討した。サブスタンスP処置によりマウス投与部位の皮膚内LTB4産生および掻破行動が亢進した。一方、LTA4 hydrolase inhibitorを事前に処置したマウスでは、サブスタンスPによるLTB4産生は抑制されたが、サブスタンスPが誘発した掻破行動に変化は見られなかった。以上の結果から、本サブスタンスP掻痒モデルにおけるLTB4の関与は小さい可能性が考えられた。さらに、マスト細胞欠損マウスと野生型マウスを用い、サブスタンスP処置による起痒部位の皮膚内LTB4産生量および掻破行動を検討した。サブスタンスPはマスト細胞欠損マウスにおいて掻痒反応を惹起したが、LTB4産生量には影響しなかった。これより、LTB4の産生細胞としてマスト細胞が考えられること、またサブスタンスP掻痒においてはLTB4以外の因子の関与が大きい事が考えられた。 2.ステロイド長期塗布誘発掻痒モデルにおけるH4受容体の関与を検討するに先立ち、掻痒への関与が考えられるマスト細胞由来掻痒抑制因子であるPGD2産生について検討した。その結果、ステロイド塗布が誘発する掻痒は、マスト細胞由来PGD2産生の抑制に起因する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.サブスタンスP急性掻痒における皮膚内LTB4産生の関与について、LTB4産生を特異的に阻害するLTA4 hydrolase inhibitorのJNJ26993135を用いて検討した。サブスタンスP処置によりICRマウスは急性掻痒反応を示し、同マウスの皮膚内LTB4産生は亢進した。JNJ26993135の30 mg/kgはサブスタンスPによるLTB4産生亢進を抑制したが、サブスタンスPが誘発した急性掻痒反応は抑制しなかった。以上の結果から、本サブスタンスP急性掻痒系におけるLTB4の関与の可能性が小さい事が考えられた。また、マスト細胞欠損マウスと野生型マウスを用い、サブスタンスP処置による起痒部位の皮膚内LTB4産生量および掻痒反応を検討した。サブスタンスPによりマスト細胞欠損マウスは野生型マウスに比較して強い掻痒反応を示したが、マスト細胞欠損マウスのLTB4産生はサブスタンスP無処置マウスと比較して増加しなかった。このことから、LTB4の産生細胞としてマスト細胞が考えられること、またサブスタンスP掻痒においてはLTB4以外の因子の関与が大きい事が考えられた。 2.ステロイド長期塗布誘発掻痒モデルにおけるH4受容体と掻痒反応の関連性を検討するに先立ち、マスト細胞が産生する掻痒抑制因子であるPGD2に着目し、本モデルにおける病巣皮膚内のPGD2産生量を検討した。その結果、正常皮膚に比較し、対照群である皮膚炎マウスのPGD2産生量は亢進していた。一方、ステロイド剤のデキサメタゾン塗布群ではPGD2産生が低下しており、さらに、マスト細胞様細胞株RBL-2H3を用いた培養試験系において、抗原刺激で亢進したRBL-2H3のPGD2産生をデキサメタゾンが抑制することを見出した。以上の結果から、デキサメタゾン誘発掻痒は、マスト細胞由来PGD2産生の抑制に起因する可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.サブスタンスP誘発急性掻痒モデルの掻痒反応におけるLTB4の関与は小さい可能性が示唆され、H4Rを介するLTB4産生調節の仮説が否定された。そこで、H4受容体アンタゴニストがサブスタンスP掻痒を抑制する作用機序の仮説として、(1)マスト細胞が産生する掻痒抑制因子であるPGD2産生抑制の解除、(2)表皮ケラチノサイト由来一酸化窒素(NO)産生の抑制の2つの仮説を立て、検証することとする。 2.ステロイド長期塗布誘発掻痒モデルにみられる、掻痒反応の亢進おけるH4受容体の関与について検討する為、H4受容体アンタゴニスト(JNJ7777120もしくはJNJ28397474)の掻痒反応に対する作用を検討する。また、本モデルの掻痒誘発機序については、マスト細胞由来の掻痒抑制因子であるPGD2産生量がステロイド塗布により低下し、掻痒反応の抑制作用が解除されるために掻痒反応が亢進する可能性が示唆されている。そこで、ステロイド塗布によるPGD2産生量低下に対するH4受容体アンタゴニストの作用についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(11 results)