2012 Fiscal Year Research-status Report
手指消毒薬の成分がアトピー性皮膚炎に及ぼす影響とその作用機序に関する研究
Project/Area Number |
24590753
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (20322381)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 塩化ベンザルコニウム / ポビドンヨード / エタノール / グルコン酸クロルヘキシジン / 動物実験 / NC/Nga系マウス |
Research Abstract |
擦式手指消毒薬は、その簡便さと高い消毒効果から家庭や商業施設、病院などで汎用されている。本研究では、4種類の手指消毒薬有効成分である、塩化ベンザルコニウム(BZC)、ポビドンヨード(PI)、エタノール(Et-OH)、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)を皮膚に塗布し、アトピー性皮膚炎への影響を検討した。 NC/Nga系マウスの耳介皮下にダニ抗原を頻回投与しアトピー性皮膚炎を誘発した。併行して、0.2%(w/v) BZC、10%(w/v) PI、80%(v/v) Et-OH、0.5%(v/v) CHG(一般的手指消毒薬で使用されている濃度)を1、2日に1回、計15回、炎症誘発部位にそれぞれ塗布した。 その結果、BZC、PI、Et-OHの順でいずれも痂皮・びらん形成を亢進したが、CHGでは増悪を認めなかった。最も増悪したBZC塗布では、血清中抗体産生、炎症部位における炎症細胞数、MIP-1α、IL-1β、IL-33、IL-18、TNF-α産生が増加していた。PI塗布では、IgG1抗体産生、脱顆粒を示すマスト細胞数、IL-1ファミリー、TNF-αの増加がみられた。Et-OHの塗布ではマスト細胞数が増加したが、他の項目の亢進はなかった。一方、CHGでは抗体産生の増加や炎症細胞数の増加がみられなかった。 以上の結果から、BZC、PI、Et-OHの塗布はアトピー性皮膚炎様症状を増悪することがわかった。その作用機序として、BZCは、炎症性サイトカイン産生、抗体産生の亢進、炎症細胞の活性化を誘発、PIはIL-1ファミリーによるマスト細胞の脱顆粒促進と、IgG1抗体、TNF-αの産生を亢進、Et-OHは炎症局所におけるマスト細胞の働きが関与していることがわかった。一方、CHGでは、抗体産生や局所炎症に変化がなかったことから、症状の増悪がみられなかったものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、予定していた4種類の手指消毒薬有効成分について、アトピー性皮膚炎に及ぼす影響および作用機序に関する解析を終えたことから、研究はおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
手指消毒薬有効成分には、アトピー性皮膚炎様症状を増悪する成分としない成分があることがわかった。また、増悪する成分については、炎症細胞の活性化や炎症性タンパクの産生に対する作用がそれぞれ異なることから、増悪の程度に違いが生じることがわかった。医療現場や家庭では様々な消毒薬が使用されている。そうした消毒薬がアトピー性皮膚炎を増悪するのか、しないのかを精査することにより、アトピー素因を有する人がより安全な消毒薬を選択する参考となり得る。従って次年度も、本年度と同様の検討を、3種類の手指消毒薬有効成分(塩化ベンゼトニウム、アクリノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)について実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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