2014 Fiscal Year Annual Research Report
石綿工場周辺住民の肺がん死亡リスクの上昇を再確認する
Project/Area Number |
24590824
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
熊谷 信二 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (50250329)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
車谷 典男 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10124877)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 石綿 / 肺がん / 周辺住民 / 死亡リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
2007年に、旧石綿工場の周辺住民の肺がん死亡リスクを検討するために、工場から概ね400m以内の住民1,907人の参加を得て後向きコホート調査(2007年調査)を実施し、石綿相対濃度がもっとも高い地区における肺がんの標準化死亡比(SMR)が男女とも1より高く、男性では統計学的に有意であることを見出した。今回調査では、2007年調査で見られた肺がん死亡リスクの上昇を再確認することを目的として、観察期間を2012年まで延長して、死亡状況を観察した。 死亡者は男性152人、女性146人であり、SMRはそれぞれ0.83(95%信頼区間 0.70-0.97)および1.12(0.95-1.32)であり、統計的に有意な過剰死亡は見られなかった。肺がん死亡者は男性24人および女性6人であり、SMRはそれぞれ1.64(95%信頼区間1.05-2.44)および1.23(同0.45-2.69)と、男性では有意に1を超えていた。これらの肺がん死亡者から職業性石綿曝露のあるものと可能性の高いものを除外すると、男性17人および女性5人であり、SMRはそれぞれ1.16(0.68-1.86)および1.03(0.33-2.40)と1より大きいが、統計的に有意ではなかった。 気象データを用いたシミュレーションでは、同工場の南東方向の気中石綿濃度が高かったと推定され、その地区には職業性石綿曝露のない肺がん死亡者の居住地が多かった。曝露レベル別の解析では、職業性石綿曝露のない肺がん死亡者のSMRは、男女とも曝露レベル4でもっとも高く(男性2.40、女性3.27)、男性では有意に1を超えていた。以上の調査結果は、旧石綿工場から周辺地域に放出された石綿が住民の肺がん死亡率を増加させている可能性を示すものである。
|