2014 Fiscal Year Research-status Report
建築業従事者における騒音ならびに有機溶剤ばく露と職業性難聴に関する追跡調査研究
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24590833
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
久保田 均 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 有害性評価研究グループ, 上席研究員 (80415968)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 職業性難聴 / 建築業 / 有機溶剤ばく露 / 振動 / 騒音 / 複合ばく露 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)今年度は、本研究テーマの調査対象集団である「某県建設国民健康保険組合」の男性組合員について、毎年同組合が実施している定期健康診断受診時に、例年組合員から提出される質問紙調査の回答結果を基に、騒音・振動、有機溶剤ばく露と聴力低下自覚症との関連についての解析を実施した。 (2)前述の質問紙調査について、2008年から2012年5年分の回答結果を基とし、この5年間を通して欠落なく回答した組合員を対象に横断的および縦断的解析を実施した。 (1)の調査対象者は6,048名で、何れのばく露もない群を「1」とした場合、騒音のみ群のオッズ比は2.7倍、騒音+振動群で3.3倍、騒音or振動+溶剤で3.3倍、騒音+振動+溶剤で3.9倍(何れも有意差あり)であった。しかしながら、溶剤のみばく露群では有意差が見られなかった。次に、騒音のみばく露群を「1」とした場合、騒音+振動+溶剤ばく露群でのみ有意なオッズ比を観察した。更に職種毎の解析では、ばく露がない事務系群を「1」とした場合、大工・鉄骨工、板金工・とび工・防水工で6倍を超過するオッズ比が観察された。 (2)の調査で5年間欠落なく回答のあった組合員は2,345名であった。横断的解析では、 ”ばく露なし”を対照群とした”騒音のみ”の調整オッズ比は2.1~2.8、”騒音+振動”では3.0~4.0(全てp<0.05)であった。また、縦断的解析では”ばく露なし”を対照群とした調整オッズ比は、”騒音のみ"では1年後2.6(1.7-3.8)、4年後では4.1(2.4-7.5)、更に”騒音+振動”では1年後4.3(2.9-6.4)、4年後で5.8(3.6-9.4)であった。これに溶剤ばく露が加わると更にオッズ比の上昇が予想された。 延長を申請した次年度では、定期健診における聴力検査結果を基とする調査を実施・解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの3年間で行った各種調査・解析結果から、ある程度建築・建設業従事者における職業要因と職業性難聴との因果関係を探ることができた。職業性難聴に関しては、これまで騒音ばく露が最大の要因と考えられてきたが、更に振動や有機溶剤ばく露が加わることによって職業性難聴の発生リスクが高まることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実施を予定していた、聴覚に関する「自覚的申告」と実際の健診における「聴覚検査結果」との関連に基づく質問紙調査について、当研究所内の倫理委員会による倫理審査にやや時間を要したため調査実施時期が昨年度末ぎりぎりとなってしまい、そのことが理由で一年間の研究期間延長を申請させていただいた。 よって、最終年度ではこの調査結果の解析を行うと共に、これまでに得られた調査結果の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究期間の一年間延長を申請したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初研究期間の3年間で、本研究テーマに係る必要な物品等は殆ど購入済みであり、最終年度に使用可能な残額については、主に消耗品購入に充てることを予定している。
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Research Products
(3 results)