2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
辻野 健 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90283887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 由朗 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10446049)
増山 理 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70273670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心不全 / 貧血 / 鉄代謝異常 / 腎不全 / 心腎貧血症候群 / レスベラトロール / Dahl食塩感受性高血圧ラット |
Research Abstract |
本研究課題「慢性心不全における鉄代謝異常の検討」において、平成24年度に予定した実験、すなわち心腎貧血症候群モデルであるDahl食塩感受性高血圧(DS)ラットの貧血の機序を解明するために実験を行った。7週齡からラットへ8%食塩食を負荷し、レスベラトロール(18 mg/kg/day)の投与は17週齢から食餌内に混入して行った。22週齢で安楽死させ、各臓器のサンプリングは終了した。レスベラトロールの投与はDSラットの血圧、体重、左室肥大、肺重量に対する効果は有意ではなかったが、体重減少と左室肥大を軽減させ、肺うっ血を軽減させる傾向は認められた。有意な改善が見られたのは腎機能であった。これまでレスベラトロールの心血管系合併症に対する効果は、早期からの予防の効果のみが報告されていたが、今回我々は17週齢という、かなり臓器障害が進行した段階でレスベラトロールの投与を開始しても有効であることを見出した。このことは心不全に対する予防のみならず治療にもレスベラトロールを使用できる可能性を示したものといえる。しかしながらレスベラトロールの投与は貧血を改善させなかった。このことはDSラットの貧血がいわゆる腎性貧血ではないことを示しているといえる。また血清鉄濃度にも影響を与えなかった。 次にDSラットにまず経口で鉄補充を行う実験も実施した。当初浸透圧ポンプで投与する計画を立てていたが、炎症を起こすことを懸念してまずは経口で投与した。現在はサンプリングを終了し、得られたサンプルの解析中であるが、経口で鉄補充を行っても貧血の改善は認められなかった。 他にDSラットは骨量低下と高カルシウム血症をきたすことが判明した。骨粗鬆症は心不全患者によく見られる合併症であり、近年ビタミンD,klotho遺伝子、FGF-23などカルシウム代謝因子と老化の関係が注目されており、興味深い知見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていた動物実験のプロトコール、すなわちDSラットの貧血に対するレスベラトロールと鉄補充の効果を検討する2つのプロトコールを遂行できたので、おおむね順調に進展しているといえる。またレスベラトロールの腎機能低下に対する治療効果を見出すことができた。さらにDSラットが高カルシウム血症をきたすこと、骨粗鬆症をきたすことも見出した。心不全患者には骨粗鬆症をきたすことが多いので、その機序を明らかにするよいモデルを見出したといえる。しかし貧血に関しては、どちらの治療も予想されたのとは異なる結果であり、治療効果がなかった。よって貧血改善の機序を調べるために計画していた十二指腸粘膜でのSirt1~7のmRNA発現量、NAD+合成酵素NAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase)発現量、HIF-2αのアセチル化等はまだ実施していない。まだもともとのアイデアが間違っていたと結論付けるのは早計であるが、用量、投与経路、他の処置との組み合わせなど、プロトコールを再検討する必要はある。レスベラトロールは毒性に低い物質であり、他の論文では200 mg/kg/day投与しているものもあるで増量を検討する。また鉄補充は、当初浸透圧ポンプで投与する計画を立てていたが、炎症を起こすことを懸念してまずは経口で投与した。今後血清鉄濃度の測定などを行い、鉄の投与経路について再度検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
1.レスベラトロールに関しては、用量を増加させる(他の論文では200 mg/kg/day投与しているものもある)ことを考えている。 2.鉄補充に関しては、経口の鉄補充では血清鉄濃度の上昇がみられていなければ、投与経路を変更させて再度実施する。我々はDSラットの血清鉄は低下していること肝臓のヘプシジン発現が低下していることをすでに報告したおり、鉄の貯蔵が減少していることを前提に計画を組み立ててきたが、骨髄や脾臓の貯蔵鉄がどうなっているかについては未検討であったので、そこを再度確認する必要がある。さらにDSラットの貧血は正球性であることが特徴であり、単なる鉄欠乏性貧血ではない。最近腎不全ラットでは葉酸トランスポーターの発現が低下していることが報告されたので、DSラットでも葉酸代謝の異常、ビタミンB12代謝の異常の関与も考えられる。ビタミンB12・葉酸補充の効果についても検討する。 3.DSラットは骨粗鬆症、カルシウム代謝異常をきたすことがH24年度の検討から判明した。骨芽細胞の分泌するエリスロポエチンが造血に重要な役割を果たすことが最近明らかになったので、DSラットにおける造血環境の異常について検討する。 以上、鉄代謝のみならず、他の栄養素やカルシウム代謝関連因子、造血環境の異常にも視野を広げ、心腎貧血症候群における貧血の発症機序を追及していきたい。 4.腎性貧血のモデル(5/6腎摘ラットなど)を作成し、DSラットと比較することにより、慢性心不全時の貧血の特徴を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Presentation] Dietary iron restriction prevents and rescues renal injury in a rat model of chronic kidney disease.2012
Author(s)
Fujii A, Naito Y, Sawada H, Hirotani S, Iwasaku T, Eguchi A, Okuhara Y, Miki K, Ohyanagi M, Tsujino T, Masuyama T.
Organizer
American Heart Association Scientific Sessions 2012
Place of Presentation
Los Angeles Convention Center (Los Angeles, USA)
Year and Date
20121103-20121107