2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患に対する新規栄養療法の開発:進行抑制から発症予防までをめざして
Project/Area Number |
24591133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉川 雅則 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (80271203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 弘 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20195374)
友田 恒一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90364059)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 栄養療法 / 腸内環境 / 食生活 / 発症予防 |
Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)にみられる栄養障害は予後を規定する重要な併存症である。しかし有用な栄養補給療法は未だ確立されていない。申請者はエネルギー吸収の観点から消化管に注目し、動物モデルを用いて脱繊維食や不規則な給餌で腸内環境を悪化させた場合、高度の栄養障害とともに気腫病変が高度かつ早期に形成されることを明らかにしてきた。COPDの発症進展における後天的要因として食生活の重要性を示唆する結果として注目されている。これらの結果を基盤に腸内環境の改善を目指すことによって、栄養障害の改善にとどまらず、COPDの発症予防にも寄与しうる新たな栄養療法(食生活改善療法)を確立する糸口を得ることが本研究の目的である。 本年度は繊維除去食ならびに不規則な食事摂取がCOPDならびに栄養障害・骨粗鬆症の発症・進展に果たす役割を動物モデルを用いて検討した。【方法】SHR ラット(10週齢雄)を通常食/連続給餌群と繊維除去食/非連続給餌群の2群にわけて飼育し、8週間にわたり喫煙曝露を行った。1)肺病変、2)摂食量、3)体重、4)血中アミノ酸分析、5)大腿骨のX線像、骨密度、骨塩量について比較検討を行った。 【結果】喫煙曝露ラットにおいて繊維除去食/非連続給餌群では通常食・連続給餌群と比較して1)高度の気腫病変を認めた。2)摂食量低下には有意差は認められなかったが体重低下は有意に高度であった。さらに栄養障害の指標となる分枝鎖アミノ酸濃度の低下も有意に高度であった。3)骨X線像における骨化度の低下、骨密度の低下、骨塩量の減少いずれも有意に高度であった。 【結論】 喫煙曝露ラットにおいて繊維除去食を不規則に給餌すると肺気腫病変の形成が促進されるだけでなく栄養障害および骨粗鬆症の併存が認められた。全身性疾患としてのCOPDの発症・進展要因を考える際には、喫煙だけでなく食習慣が重要な要因となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸内環境を改善することが知られているGlutamine Fiber Oligosaccharide (GFO)では、我々が作成した喫煙曝露肺気腫モデルにおける気腫、栄養障害、骨粗しょう症の改善は見られなかった。さらなる有用な食材の探索が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内環境を改善させる各種食材またはその混合物の中から肺気腫およびその併存症を改善する可能性のある食材を動物実験を用いて探索し臨床応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
喫煙曝露肺気腫ラットモデルを用いて以下の治療食材の効果を検討する。①ω3脂肪酸:ω6脂肪酸よりも腸管への負担が少ない食材である。抗炎症効果が知られており、すでに市販されている。②ビフィズス菌製剤:腸内環境を改善させるプロバイオティクスとして市販されているものを使用予定である。③①②の混合食材およびGFO+ビフィズス菌製剤の混合食材。
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