2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質応答性転写因子の抗線維化作用の解析と新規治療薬の探索-低酸素性腎障害を中心に
Project/Area Number |
24591193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
木村 秀樹 福井大学, 医学部附属病院, 准教授 (20283187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩野 正之 福井大学, 医学部, 教授 (20275324)
菅谷 健 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 客員教授 (40381561)
糟野 健司 福井大学, 医学部, 准教授 (60455243)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 進行性腎障害 / 尿細管上皮細胞 / L-FABP / PPAR / 抗線維化作用 |
Research Abstract |
1)L-FABP発現のmProxに関する検討 mProxはC57BL/6Jマウスの近位尿細管細胞をSV40処理して作製し、同細胞株に転写領域を含んだヒトL-FABPゲノム遺伝子(5360bp)を導入してFABP-mProxを作製した。FABP-mProxは、mProxに比して、ヒトL-FABPのmRNA発現が約1000倍に、蛋白が約300倍に増加していた。mProxに比してFABP-mProxで、PPAR-αのmRNAが10倍に増加し、PPAR-γmRNAが1/10に減少した。FABP-mProxで、パルミチン酸のPPAR-α活性は50%増加し、PGJ2のPPAR-γ活性は両細胞で同等であった。FABP-mProxで、基底状態とTNF-α刺激でのMCP-1発現が有意に低値であり、一方、低酸素誘導性のVEGF-A発現はFABP-mProxとmProxで同等であった。TNF-α刺激はFABP-mProxのL-FABP発現を増加した。これらの結果から、mProxにおけるL-FABPの高発現は、PPAR-α発現と活性を増強し、炎症性反応を抑制する一方で低酸素反応性を保持して、細胞保護に作用する可能性が見出された。 2)PPAR-α欠損マウスとL-FABP発現マウスの解析 PPAR-α欠損マウスについては、対照のS129マウスに比して、通常飼育の12、24ヶ月齢で有意に心筋線維化を認めた。通常飼育の6ヶ月齢や3ヶ月間低酸素飼育後の6ヶ月齢では、心筋線維化に有意差は認めず、全月齢で腎線維化にも有意差を認めなかった。 L-FABP発現マウスの腎組織の解析については、マウス自体の譲渡に時間が必要な状況であったため、提供された腎組織について解析した。対照B6マウス腎に比してPPAR-αのmRNAが70%増加し、PPAR-γmRNAが50%に減少し、mProxの実験結果と同様の傾向を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスの近位尿細管細胞の細胞株mProxとヒトL-FABP過剰発現のFABP-mProxに関する実験は、概ね予定通りに進んでおり、L-FABP発現マウスの腎組織の解析もある程度実施できた。しかしながら、変異型HIF-1α発現のmProxに関する実験が実施できなかった点、L-FABP発現マウスの当施設での飼育がまだ出来ず、平成25年度に向けての実験準備が遅れている点を考えると、予定よりやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
LFABP-mProxとmProxを用いた実験では、mProxに比してL-FABP-mProxでTNF-α刺激性のMCP-1発現が抑制されているため、まず、このMCP-1発現がNFkB, MAPK, Smad等のどのシグナル伝達経路を介しているかを特異的阻害薬を用いて解析し、さらに、どの経路シグナルがL-FABP-mProxに於いて減弱しているかを解析する。また、PPAR/FXR活性化薬でさらに抗炎症・抗線維化作用が増強する場合は、PPAR,FXR依存性を検討する。 PPAR-α欠損マウス(S129系)、L-FABP発現マウス(B6系)において腎線維化を評価する際に、UUOでは組織障害の評価が難しい場合があるため、アリストロキア酸の腹腔注入による腎間質線維化を検討する。注入後5日で線維化が誘導されるため、各マウス群で腎障害度の評価が容易と考えられる。各群の腎組織での線維化、マクロファージ浸潤、MCP-1、PAI-1、コラーゲンI等の発現を比較する。一方、FABP,PPARの発現量を検討し、腎線維化との関連性を解析する。さらに、低酸素飼育で線維化が増悪するか否か、あるいはPPAR活性化薬が線維化抑制作用を示すか否かも検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に使用予定であった変異型HIF-1α発現のmProx(マウス近位尿細管上皮細胞株)とヒトL-FABP発現マウスについて、諸事情で受け入れが遅延したため、その部分の実験費用を使用せず、次年度に持ち越すことを余儀なくされた。次年度は同細胞と同マウスを速やかに受領し、以下1)、2)の実験計画を持ち越した研究費を用いて追加実施していく。 1) mProxと変異型HIF-1a発現mProxで、H-,L-FABP、PPAR、FXRのmRNAと蛋白発現変量を比較する。変異型HIF-1a発現mProxで、PPAR/FXR活性化薬がCTGF, フィブロネクチン, コラーゲンI、線維芽細胞特異的蛋白(FSP)-1の発現を抑制するか否かを検討する。 2) L-FABP発現マウスと対照マウス(B6マウス)において、マウスL-FABP, H-FABP, BABP, PPAR, FXRの発現をreal time PCR 法、Immunoblot法、免疫組織染色法で解析し比較する。L-FABP発現マウスで発現が増強した遺伝子が存在する場合は、その上流遺伝子発現の変化を解析する。
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