2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病糸球体硬化におけるメサンギウム細胞での細胞伝達経路の解析
Project/Area Number |
24591202
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長井 幸二郎 徳島大学, 大学病院, 講師 (40542048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 元一 徳島大学, 大学病院, 助教 (10403734)
冨永 辰也 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80425446)
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Keywords | 慢性腎臓病 / 糸球体硬化 / メサンギウム細胞 / 細胞伝達経路 / mTOR経路 |
Research Abstract |
慢性腎臓病の糸球体硬化への過程を明らかにするため、Cre-loxPシステムを用いて、メサンギウム細胞特異的にTSC1をノックアウトし、mTOR経路の活性化による腎病変を明らかにすることを目的とした。そのため、メサンギウム細胞にCre recombinaseを発現するFoxd1 -CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせることによるメサンギウム細胞におけるTSC1ノックアウトマウスの作成した。その結果腎病変が生後4週には明らかに形成された。その表現型と腎機能を解析するため、生後12週の週齢に対してマウスの匹数をそろえた。細胞増殖や肥大、糸球体硬化をKi67染色やcollagen IVの発現などで評価した。また半年以内に衰弱し、死亡するため、その生命予後解析も施行した。 さらにFoxd1-CreのCre recombinaseの発現がメサンギウム細胞以外の部位にもおこることをROSAマウスとの掛け合わせて確認したので、タモキシフェン誘導型のFoxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせることにより、よりメサンギウム細胞特異的なTSC1ノッ クアウトマウスを作成することに移行した。タモキシフェン6mgをE10.5の時点で母体に腹腔内注射し、その子供の出産を期待したが、6mg打つと母体が出産できずに死んでしまうことがわかり、2mgへ減量したところ、出産できるものの発現が誘導されず、最終的に6mg使用し、帝王切開により、産子を摘出、それを里親に哺育させることによって初めて成体を得ることが可能となった。現在目的の成体を解析のために増やしているところである。 またヒト腎生検組織におけるmTOR経路の活性化をsurrogate markerであるribosomal protein S6のリン酸化の抗体で染色し、それをすでに定量化した。病理組織学的な細胞増殖、硬化、線維化といった腎機能悪化への危険因子の定量をも終了、臨床的な危険因子である尿蛋白や腎機能の値を抽出すみであり、それぞれの相関を検討しているが、現在解析症例を増やしているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メサンギウム細胞にCre recombinaseを発現するFoxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせることによるメサンギウム細胞におけるTSC1ノックアウトマウスの作成し、腎病変が形成されたため、現在その表現型や機能を解析終了、生命予後解析も終了しておりり、これは当初の目的にそった経過をたどっている。 Foxd1-Creの発現がメサンギウム細胞以外の部位にもおこるため、さらにタモキシフェン誘導型のFoxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせを施行することになったことは想定内であったが、タモキシフェンの投与量により母体がおおきな影響をうけ、タモキシフェン容量調整が必要であったこと、最終的に帝王切開、産子摘出、里親に哺育させるという行程を確立するのに時間がかかったこと、そのため自然分娩よりも明らかに目的の成体を得る確率がひくく、解析に必要な個体を確保するのに時間がかかっていることが、やや予定より遅れている最大の原因である。 CSK floxedマウスとの掛け合わせによる、メサンギウム細胞におけるSrc/Smad1経路の役割の解析は上記のモキシフェン誘導型のFoxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスの掛け合わせの結果次第であるため、予定より遅れている。 ヒトの腎生検組織の解析は当初はmTOR経路やSrc/Smad1経路の活性化の確認のみの予定であったが、mTOR経路の活性化の定量化、病理学的な腎組織の危険因子の定量は終了し、さらに症例を増やしている最中であるところは想定以上に進行している。 以上から実験動物系は予定通りではないが、問題点を解決しており、臨床組織の解析では想定以上に進行している解析もあり、全体としてやや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
Foxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせることによるメサンギウム細胞におけるTSC1ノックアウトマウスの表現型や腎機能をすでに解析した。さらにタモキシフェン誘導型のFoxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせることによるメサンギウム細胞により特異的なTSC1ノックアウトマウスの表現型、腎機能を同様に解析する。以上のマウスにおいて、糸球体硬化に関わる経路であるSrc/Smad1経路の発現や活性化を確認し、mTOR経路とのクロストークの有無を検討予定である。 タモキシフェン誘導型のFoxd1-Creマウスが有効に機能することが確認されたので、CSK floxedマウスとかけあわせることにより糸球体硬化に関わるSrc/Smad1経路の活性化を促し、病変の有無を確認する。 ここまでの部位特異的シングルノックアウトマウスの病変の程度によっては、TSC1 floxedマウスとCSK floxedマウスをタモキシフェン誘導型のFoxd1-Creマウスと同時に掛け合わせ、mTOR経路とSrc/Smad1経路をメサンギウム特異的に同時に活性化し、病変がどう変化 するか解析することも考慮する。 ヒト腎生検検体ではmTOR経路のみならずSrc/Smad1経路の活性化も確認し、腎の予後危険因子との相関をみるとともに腎予後の経過を追っていく予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ予定通り使用し、残金は実験動物を整理した結果、生じたものである。 実験動物を整理した結果、次年度に繰り越しを得ることができた。次年度はタモキシフェン誘導型Foxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスを掛け合わせることによるメサンギウム細胞におけるTSC1ノックアウトマウスの表現型、腎機能の解析を終了することが主となる。加えて、糸球体硬化に関わる経路であるSrc/Smad1経路の発現や活性化を確認し、mTOR経路とのクロストークの有無を検討する。またメサンギウム細胞の単離を開始し、細胞増殖や肥大、細胞外基質の産生の程度を検討する。ヒト腎生検組織におけるmTOR経路の活性化と、病理組織学的、臨床的な危険因子との相関を終了したが、さらに解析症例を増やす。 次年度への繰越額はタモキシフェン誘導型のFoxd1-CreマウスとTSC1 floxedマウスの掛け合わせで生じるマウス飼育費に使用予定である(F-6-1 次年度使用額 47,084円分)。
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