2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症における鉄代謝異常の分子機序と鉄制御に基づく新規治療法の開発
Project/Area Number |
24591203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
池田 康将 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60432754)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鉄 / 糖尿病性腎症 / 酸化ストレス / NADPH oxidase |
Research Abstract |
鉄除去による糖尿病性腎症の進展抑制効果について、8週齢のdb/dbマウスに正常鉄食を与えた群と鉄制限食を与えた群に分けて比較した。コントロールとして正常鉄食を与えたdb/mマウスを用いた。db/mマウスと比べてdb/dbマウスは実験開始時において既に尿中微量アルブミン排泄量は増加しており、4週、8週経過後にさらなる増加を認めた。鉄制限食群では尿中微量アルブミン排泄量の増加は抑制された。db/dbマウス正常食群でみられた糸球体肥大、メサンギウム領域増加、コラーゲンIVやフィブロネクチンの細胞外基質の増生などの変化は、鉄制限食によって抑制された。またデスミンによる糸球体足細胞障害も鉄制限で軽減された。酸化ストレスについて、db/dbマウス正常鉄食群の腎臓では、ジヒドロエチジウム染色によるスーパーオキシドとTBARS法によるマロンジアルデヒドは増加していたが、鉄制限食群ではそれらは抑制された。またdb/dbマウス正常食群の腎臓で増加していたNADPH oxidase活性、NADPH oxidaseコンポーネントp22phoxとNOX4の発現は鉄制限によって抑制された。鉄代謝について、腎組織鉄量はdb/mマウスとdb/dbマウス正常食群で差は認められなかったが、血清鉄濃度、尿中鉄排泄量はdb/dbマウスで高値であった。腎臓におけるトランスフェリン受容体とDMT1の発現はdb/mマウスとdb/dbマウス正常食群で差は認められなかったものの、フェロポルチンの発現はdb/dbマウス腎臓で増加していた。フェリチン重鎖の発現もdb/dbマウス腎で上昇していた。フェロポルチンとフェリチン重鎖は、主に尿細管細胞に発現していた。以上から、食事由来の鉄摂取制限は、酸化ストレスを軽減することで糖尿病性腎症の進展抑制効果を示すことが確認され、糖尿病腎では鉄代謝調節機構が変化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画で当初掲げた予定項目である、鉄制限による糖尿病性腎症の進展抑制効果ならびに糖尿病性腎症における鉄代謝動態の変化について確認・明らかにできたため当該年度の研究目的は概ね達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果で明らかにした鉄摂取制限の糖尿病性腎症進展抑制効果のメカニズムをさらに詳細に解析するために、鉄制限により変化する因子群についてマイクロアレイを用いた網羅的解析によって候補遺伝子を探索し、糖尿病性腎症抑制の可能性のある新規因子の同定とその機能の解析を行うことを予定している。また鉄摂取制限によって血圧降下作用を認めたことから、糖尿病性腎症抑制効果について血管内皮機能の改善も一部関与している可能性がある。よって糖尿病における血管内皮機能へ鉄制限が与える効果について、内皮機能維持に重要なAkt/AMPK-eNOSの観点から検討を加える予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰越額は消耗品購入に使用する予定である。
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Research Products
(20 results)