2012 Fiscal Year Research-status Report
抗RGMaモノクローナル抗体を用いた末梢神経再生新規治療の開発
Project/Area Number |
24591251
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
谷口 順子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70624063)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経内科学 / 末梢神経障害 / 神経再生 |
Research Abstract |
本研究は末梢神経障害における神経軸索伸展促進薬を用いた薬物治療法の確立を目的としたものである。特に神経軸索阻害因子であるRGMa蛋白との相互作用メカニズムを解明できるべく薬剤を同定し、新規神経再生医療としての臨床応用を目指している。近年、様々な薬剤において神経軸索伸展促進薬としての可能性が報告されていることから、本研究ではRGMa中和抗体だけでなく、他薬剤との併用実験を試みることにより、最適な治療方法の確立も検討することとした。本年度は以下の実験を実施した。 1.ラット末梢神経障害モデルの作成:ラット大腿骨中央付近の坐骨神経挫滅による神経軸索障害モデルを作成し、組織免疫染色による病理像の変化を観察した。その結果、既報告による神経挫滅時の脊髄細胞のRGMa蛋白発現以外に、血管像の変化及び細胞形態の変化等がみられ、今後検討する必要性が考えられる。 2.神経軸索伸展促進薬の探索:神経軸索障害に対する治療に用いる抗RGMa抗体の他に、神経軸索伸展促進薬の投薬による治療効果を見るために、ビタミンB16(メチコバール)、ビタミンA(チョコラA)との併用投与を行う。その第一段階の実験として、各種ビタミン剤の神経軸索伸展効果に対する至適濃度の検討実験を行った。その結果、両薬剤共に神経軸索伸展促進作用は見られた上に、特にビタミンA(チョコラA)においては、100pMの低濃度で神経軸索に対して著明な効果が見られる結果が得られた。 抗RGMa抗体とこれらの薬剤を併用することで、神経障害に対する有効性が高まるものと考えている。 3.Rho-kinase活性化を可視化するための新規PETトレーサーの開発:新規PETトレーサーを開発し、病態メカニズムの解明に役立てることを目標としている。本年度は既報のある新規トレーサーを使用し、各種動態解析による利用可能性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は末梢神経障害における神経軸索伸展促進薬を用いた薬物治療法の確立を目的としたものである。近年、様々な薬剤において神経軸索伸展促進薬としての可能性が報告されていることから、まず第一にRGMa中和抗体と同様に、神経軸索伸展促進薬として可能性のある薬剤の選定と効果のある至濃度の検討を行った。 さらに病態メカニズムの解明に役立てることを目的として、Rho-kinaseの活性化を可視化できる新規PETトレーサーの開発も進めている。本年は既報のある新規トレーサーを用いて、Rho-kinase活性の可視化が可能であるかを検討するために動物への導入実験および動態解析を行った。 以上の結果により、次年度よりの投治療実験および治療効果の評価が効率的に行われることが可能となり。研究はおおむね順調に伸展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として、前年度に神経軸索伸展効果及びその至適濃度を決定した薬剤と抗RGMa抗体を併用した投薬治療実験を行い、以下の計測及び評価を行う。 1.末梢神経障害時の脊髄組織および周辺成分の探索:既報により、末梢軸索障害部位より発せられたシグナルが逆行輸送し、神経節細胞まで到達し、中枢神経へなんらかのシグナルを発しているのではないかと推測している。そのシグナルメカニズム解明のために、具体的には障害部位及び脊髄の組織を採取し2.による各種測定評価を行う。 2.投薬治療による経時測定による治療効果の評価のために以下の測定を行い、正常時との比較評価を行う。:a.生化学的評価:Rho-kinase活性、RGMa蛋白発現量、サイトカイン発現量:b.電気生理学的評価;複合筋活動電気(CMPA)、運動神経伝導速度(MCV):c.組織学的評価:神経生検による有髄神経直径計測(坐骨神経)、免疫染色によるRGMa蛋白発現の局在(脊髄L4, L5) 3.末梢神経障害を有する患者血清中の諸蛋白発現量の比較検討:動物実験による一定の評価が検討、傾向が結果として出た時点で、ヒトのサンプル(血清等)を用いた測定評価を行う予定である。 4.Rho-kinase活性化可視化による神経障害部位の明確化及び投与治療による改善効果の評価測定
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由として、投与治療実験を開始する前に、神経軸索伸展効果のある薬剤を新たに追加し、軸索伸展に対する効果的な濃度条件の検討を先に行ったために投与実験と同時に行う測定評価用の実験機器及び薬品の使用を次年度に繰り越した。また、Rho-kinase活性化の為の新規PETトレーサーの作成を本年度より始めた。トレーサーの開発及び作成は実際に利用できるまでにははかなりの長期にわたる検討実験が必要である。そのため、本年度から予備実験を始め、このトレーサーが開発されることにより、Rho-kinase活性化可視化による神経障害部位の明確化及び投与治療による改善効果を画像評価測定することが可能となりうる。次年度は繰り越した実験用物品を追加して各種実験を網羅的に遂行する。
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Research Products
(1 results)