2012 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食に対する嗜好性に関わる視床下部・脳内メカニズムの解明と医学応用
Project/Area Number |
24591338
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
益崎 裕章 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 千利 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60197217)
島袋 充生 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60271144)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / 視床下部 / 小胞体ストレス / 食行動 / 嗜好性 / 分子シャペロン / γオリザノール / 肥満症 |
Research Abstract |
本年度の研究により (1)実験用マウスにおいて再現性を持って観察される“慢性的高脂肪食習慣による視床下部小胞体ストレスの亢進”がマウス脳由来初代培養神経細胞・グリア細胞共培養系でも再現されることを実証できた。(2)慢性的高脂肪食習慣による視床下部小胞体ストレスの亢進を軽減させる天然食品の探索の過程で、玄米 (米ぬか) の中に高濃度かつ特異的に含有されるγオリザノールが小胞体ストレスを軽減するシャペロンとして機能する可能性について 生細胞(HEK293)を用いたレポータージーンアッセイを用いて実証できた。(3) 慢性的高脂肪食により肥満・レプチン抵抗性を来したマウスに対するγオリザノールの同時投与により、視床下部STAT3リン酸化を指標とするレプチン抵抗性の改善、肥満・糖尿病・脂質異常症の軽減、高脂肪食に対する嗜好性の軽減がもたらされることが明らかとなった。 病態モデルマウス、マウス由来初代培養神経細胞、HEK293細胞を用いて 天然食品由来の有効成分であるγオリザノールが視床下部の小胞体ストレスを軽減することによって高脂肪食に対する嗜好性を緩和し、糖尿病予防(改善)効果・肥満改善効果、脂質異常症改善効果を発揮することが世界で初めて明らかとなり、分子メカニズムの解明など、成果の一部を米国糖尿病学会誌に発表し (Masuzaki H et al. Diabetes 61:3084-3093, 2012)、特許を出願した(代表出願人:益崎裕章、特願2012-005883:高脂肪食への嗜好性を軽減するための医薬組成物、飲食品組成物または飲食品添加物)。 本研究から 高脂肪食に耽溺した食行動を変容できる有効成分(物質)とその作用機構が明らかとなったことにより、分子メカニズムに立脚した肥満症、メタボリックシンドロームの新しい予防・改善策が構築できる可能性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の交付申請書に記載した研究の目的は“高脂肪食に対する嗜好性に関わる新規の視床下部・脳内メカニズムを明らかにし、食行動の変容という新しい概念に立脚した肥満制御法を臨床応用につなげていく学術的基盤の構築を目指す”というものであった。 初年度の成果として、天然食品 (玄米) 由来の有効成分であるγオリザノールが視床下部の小胞体ストレスを軽減することによって高脂肪食に対する嗜好性を緩和し、糖尿病予防(改善)効果・肥満改善効果、脂質異常症改善効果を発揮することが世界で初めて明らかとなり、分子メカニズムに立脚した肥満症、メタボリックシンドロームの新しい予防・改善策が構築できる可能性が高まってきている。成果の一部は英文論文として公表し(Masuzaki H et al. Diabetes 61:3084-3093, 2012)、特許の出願も終えている(特願2012-005883:高脂肪食への嗜好性を軽減するための医薬組成物、飲食品組成物または飲食品添加物)。初年度の基礎的研究の成果を踏まえ、ヒトにおける臨床的検証(玄米摂取による食の嗜好性変化、血管機能や糖代謝調節など)も進められている。 交付申請書の初年度研究計画に記載したとおり、初年度の研究により、慢性的高脂肪食が視床下部の小胞体ストレスの亢進をもたらす脳内分子メカニズムの解明に加え、血管機能や膵内分泌機能に及ぼす影響に関しても評価が進んでおり、初年度の研究目標は概ね、達成できている と 自己点検評価 している。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した2年目以降の研究計画に沿って(1)高脂肪食による視床下部小胞体ストレス亢進の詳細な分子メカニズムを明らかにする。特に、高脂肪食嗜好性に関わる視床下部機能と脳内報酬系(腹側被蓋野(VTA),線条体、辺縁系など)との機能連関の解明が重要と考えており、視床下部小胞体ストレスの強度と脳内報酬系(腹側被蓋野(VTA),線条体、辺縁系)ドパミンニューロンの活性化を評価するため、視床下部小胞体ストレス強度を人工的に増減させたマウス脳組織を用いてチロシン水酸化酵素、セロトニン、ドパミン信号伝達系に関わる分子群に対する免疫組織化学や遺伝子発現解析をさらに進める。 (2)交付申請書に記載したように、慢性的高脂肪食が小胞体ストレスの亢進をもたらす脳内分子メカニズムの解明に加え、血管機能や膵内分泌機能に及ぼす影響に関しても評価が進んでおり、2年目ではこの点に関する解析も強化推進する。具体例を示すと マウス単離膵島や膵臓β細胞株を用いた研究により、 γオリザノールが膵臓β細胞にも直接的に作用して 慢性的高脂肪食が惹起する膵臓β細胞の小胞体ストレスを抑制し、β細胞のアポトーシスを防ぐこと、さらに、β細胞のcAMP-PKA信号伝達経路を活性化することによってグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)を促進し、血糖降下作用を発揮することを世界に先駆けて突き止めている。これらの成果は英文論文に掲載決定あるいは投稿中であり(Obesity Research and Clinical Practice, in press, 2013 他)、特許を出願している [特願2013-009341:γオリザノール含有機能性食品と糖尿病改善医薬)。小胞体ストレスの亢進を切り口として、慢性的高脂肪食習慣がもたらす組織・細胞機能障害を臨床的に評価し、予防・治療医学の構築に発展させていく方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行のためにはマウスを用いた実験が主体となるため、琉球大学 動物実験施設における実験用マウスの飼育関連費用、マウス実験を補助する実験助手に対する人件費、生化学・分子生物学実験に関わる試薬・抗体・PCRプライマーなどの購入費用が主要な研究経費の内訳となる。 本研究に必要な 実験機器類、実験設備は琉球大学 大学院 医学研究科の 現有の実験室、コア・ファシリテイの活用によって充分に遂行可能なため機器類を新たに購入する必要はない。 交付申請書に記載したように、次年度も実験用マウスの飼育関連費用、生化学・分子生物学実験に関わる試薬・抗体・PCRプライマーなどの購入費用として研究費を使用する計画である。
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Research Products
(40 results)
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[Journal Article] Ectopic Fat Deposition and Global Cardiometabolic Risk: New Paradigm in Cardiovascular Medicine2013
Author(s)
M. Shimabukuro, C. Kozuka, S.Taira, K.Yabiku, N. Dagvasumberel, M. Ishida, S.Matsumoto, S.Yagi, D. Fukuda, K. Yamakawa, M. Higa, T. Soeki, H. Yoshida, H. Masuzaki, M. Sata.
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Journal Title
J Med Invest
Volume: 60
Pages: 1-14
Peer Reviewed
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[Journal Article] Increased Urinary Aldosterone Excretion is Associated with Sbcutaeous not Visceral, Adipose Tissue Area in Obese Indivisuals: A Possible manifestation of Dysfunctional Subcutaneous Adipose Tissue2013
Author(s)
E. Harada, Y.Mizuno, D.katoh, Y.kashiwagi, S.morita, Y.Nakayama, M.Yoshimura, H. Masuzaki, Y.Saito, H.Yasue.
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Journal Title
Clin Endocrinol
Volume: 79
Pages: 510-516
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Activation of AMPK-Sirt1 Pathway by Telmisartan in White Adipose Tissue: A Possible Link to Anti-metabolic Effects2012
Author(s)
A. Shiota, M. Shimabukuro, D. Fukuda, T. Soeki, H. Sato, E. Umetsu, Y. Hirata, H. Kurobe, H. Sakaue, Y. Nakaya, H. Masuzaki, M. Sata.
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Journal Title
Eur J Pharmacol
Volume: 692
Pages: 84-90
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Telmisartan Ameliorates Insulin Sensitivity by Acting the AMPK/SIRT1 Pathway in Skeletal Muscle of Obese db/db Mice2012
Author(s)
A. Shiota, M. Shimabukuro, D. Fukuda, T. Soeki, H. Sato, E. Uematsu, Y. Hirata, H. Kurobe, N. Maeda, H. Sakaue, H. Masuzaki, I. Shimomura, M. Sata.
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Journal Title
Cardiovasc Diabetol
Volume: 11
Pages: 139
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Eicosapentaenoic Acid (EPA) Supplementation Changes Fatty Acid Composition and Corrects Endothelial Dysfunction in Hyperlipidemic Patients2012
Author(s)
K. Yamakawa, M. Shimabukuro, N.Higa, T. Asahi, K. Ohba, O. Arasaki, M. Higa, Y. Oshiro, H. Yoshida, T. Higa, T. Saito, S. Ueda,, H. Masuzaki, M. Sata.
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Journal Title
Cardiology Research and Pracitice
Volume: 754181
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 肥満症と脂質代謝異常2012
Author(s)
益崎 裕章
Organizer
第33回 日本肥満学会 教育講演
Place of Presentation
ホテルグランヴィア京都 京都府 京都市
Year and Date
20121012-20121012
Invited
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