2012 Fiscal Year Research-status Report
線溶系インヒビター(PAI-1)欠損症iPS細胞から成熟分化細胞の確立と機能解析
Project/Area Number |
24591420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐野 秀人 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80623842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦野 哲盟 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50193967)
鈴木 優子 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20345812)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | PAI-1 / iPS細胞 / 発生・分化 / 内皮細胞 / 脂肪細胞 / 血球細胞 |
Research Abstract |
当該年度において本研究では、血液の線溶系を調節しているPAI-1を欠失している患者よりiPS細胞を作成し、これを用いて各種の成熟細胞へ分化させ、PAI-1の実質的生理作用について検討を行なってきた。 具体的には、浜松医大外来に通院中のPAI-1欠失患者より血液を採取し、CD34陽性造血幹細胞画分を分離後、山中四因子をセンダイウイルスを介して感染させ、iPS細胞を樹立した。単一のコロニーを採取し、増殖能等を検討した結果、合計9クローンを樹立することができた。これら9クローンは十分量細胞増殖させ、凍結保存及び細胞バンクへの委託を行った。iPS細胞自体の増殖能、コロニーの形態、凍結保存からの生存率等についてはコントロールのiPS細胞と変化なかった。 また、コントロールのiPS細胞を用いて、細胞を継代せずに過増殖させ、一部のコロニーを分化させた後、細胞からRNAを単離し、PAI-1遺伝子の発現を検討した。分化していないiPS細胞と比較したところ、分化したiPS細胞ではPAI-1遺伝子が顕著に増加していた。これは、幹細胞から成熟した細胞へ分化する段階において、PAI-1遺伝子が重要であることを示したものである。PAI-1 KOマウスは発生段階ではワイルドタイプに比べて大きな変化がなかったことから、ヒトとマウスのPAI-1遺伝子の機能の違いの可能性を示唆している。 また、iPS細胞をマウスストローマ細胞株であるOP9細胞と共培養することにより、血管内皮細胞、脂肪細胞、さらには血球細胞に分化する報告があり、このシステムの構築を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞を樹立するため、本学内の各種倫理委員会の手続きに若干手間取ったこと、PAI-1欠損患者の感染既往などにより、iPS細胞樹立へのとりかかりに時間がかかった。その後は、連携研究員の京大iPS細胞研究所の江藤浩之、共同研究者の東大医科学研究所の大津真らの協力により、iPS細胞樹立自体は順調に進んだ。 iPS細胞培養技術の習得において時間を取られたが、操作自体を何回か失敗を繰り返すことにより習熟していったと考えられる。その後、共培養での分化システムの構築まで、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、iPS細胞を各種成熟細胞への分化のシステムを構築している。これを用いてPAI-1欠損患者由来iPS細胞とコントロールiPS細胞を分化させ、遺伝子発現の解析、免疫染色や分泌タンパクの発現の解析等を行なっていく。また、細胞の機能的解析(細胞増殖、遊走能、管腔形成等)やFlowcytometryを用いた血球細胞の分化への影響についても観察を行う。 また、新たなPAI-1欠損患者(PAI-1遺伝子上の欠損部位が異なり、機能的にもやや異なる。患者の病態(出血傾向)は同じ)よりiPS細胞を樹立し、それぞれのiPS細胞での解析を行なっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
iPS細胞の維持、成熟細胞への分化等、細胞培養関係が必要である。また、遺伝子発現解析(マイクロアレイ、Real-Time RT-PCR等)、免疫染色用抗体、ELISA用のキット類等、さらには細胞機能解析のための各種試薬が必要である。また新たなiPS細胞を樹立することから、これに対する費用を計上する。 また、成熟細胞への分化における遺伝子発現の変化について、海外及び国内で学会発表するための費用を計上する予定である。
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