2013 Fiscal Year Research-status Report
胎児・新生児期に発症する遺伝性不整脈の遺伝的背景と臨床的表現型に関する研究
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24591599
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀米 仁志 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50241823)
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Keywords | 先天性QT延長症候群 / 遺伝性不整脈 / 突然死 / 乳児 |
Research Abstract |
胎児・新生児期に発症する先天性QT延長症候群の我が国における実態を把握するため、小児循環器科医が所属する全国の主要な施設を対象として、発生状況の調査を継続した。症例数は増加し、全国48施設から計82例が登録された。遺伝子検査は61例(74%)で行われていて、遺伝子型が判明したのは45例(74%) で、LQT1が16例、LQT2が12例、LQT3が13例、LQT8が4例であった。胎児・新生児期から乳児期の早期にかけて、心室頻拍や2:1房室ブロックなど重症な不整脈を呈するのはLQT2, 3, 8型であったが、これらの家族癧陽性率は遺伝子型によって0~38%であり、家族歴からは診断できない症例が多いことが判明した。一方、LQT1は家族癧やスクリーニング心電図のQT延長自体から診断されることが多かった。従って、重症なLQTを早期に診断して、速やかに治療を開始するためにはその代表的な表現型を知ることが重要である。診断の契機となった重要な心電学的表現型は、洞性徐脈、機能的房室ブロック、torsade de pointes/心室頻拍の3者であり、これにLQT/突然死の家族歴を加えた4者のうち、2項目以上がある場合はLQTを疑って早期診断に努め、突然死の予防、救命のために多剤薬物療法とデバイス治療による早期介入を行う必要がある。 また、本年度は機能的2:1房室ブロックを伴った症例について、長期予後についての追加調査を行った。その結果、著明なQT延長は長期にわたって持続するが、房室ブロックは乳幼児期に消失する症例が多いことが判明した。このことは同じ遺伝子変異を持っていても乳児期と成人期におけるイオンチャネルに違いがある可能性や、他の修飾因子の関与が示唆されて、分子生物学的にも興味深い。機能的房室ブロックは予後不良を示す所見の一つであり、ペースメーカ植込み術を含めた積極的な介入が望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国から登録された症例を中心に診断・治療の現状について継続してきた。全体の登録症例数は順調に増加していて、1例のみでも症例報告に値するような貴重な症例を含め、82例に達している。また、今年度は特殊なタイプについて、長期予後に関する新たな調査を追加し、有用なデータが得られた。本疾患に対するこのような規模の研究成果は世界的にみてもほとんどなく、代表的な遺伝子型と臨床的表現型の関連が判明し、遺伝子型を背景とした適切な管理指針、治療法が確立されつつある。 しかし、遺伝子検査が未施行の症例数がかなりあること、LQTの遺伝子検査は1~3型および8型を中心に行われているため、頻度が極めて低い他の遺伝子型については情報が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)先天性QT延長症候群に限らず、最近明らかとなってきた他の遺伝性不整脈についても調査に含め、胎児・新生児期に発症する遺伝性不整脈症例の全国調査を継続し、さらに十分な症例数を蓄積する。既登録例については、臨床像の検討、特に長期経過と生命予後について情報を再収集する必要がある。(2) 先天性QT延長症候群については、今までは1型~3型と8型の遺伝子検査を行ってきたが、これらに属さない稀少な遺伝子型のなかにも重症な臨床経過を示す症例がかなり含まれている可能性があるため、他の遺伝子型の検査を積極的に進める。また、遺伝子検査自体が施行されていない症例も相当数にのぼるため、十分な説明と同意のもとに、遺伝子検査への協力を求め、さらに最新の遺伝子解析技術を導入して診断率を上げていく。(3)独立成分分析を用いた心電図波形解析によるQT延長症候群の診断精度を高め、さらに遺伝子変異型との相関を検討して行く。 以上の結果をもとに、胎児・新生児期に発症する重症先天性QT延長症候群の診断・治療アルゴリズムを作成する。また、胎児・新生児期に発症する遺伝性不整脈のホームページを開設し、国内の診断・治療体制を構築し、同疾患の突然死の予防、救命率の向上に寄与することを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子解析が未施行の症例や新たに登録された症例のシークエンス、および過去に遺伝子検査は施行されたがLQT1~3、8型が陰性の症例について他の遺伝子型のシークエンスを行う予定であったが、平成25年度は新たな症例の登録数が少なめであったため、症例を集積してから同時に施行することとした。 遺伝子解析が未施行の症例や新たに登録された症例のシークエンス、および過去に遺伝子検査は施行されたがLQT1~3、8型が陰性の症例について、他の遺伝子型、具体的にはLQT5-7, 9-13型、カルモジュリン遺伝子などのシークエンスを行う。また、以上のデータがまとまったところで、国内の学会や国際会議に報告し、論文発表をすることとしたため、その費用としても使用する予定である。
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[Journal Article] Genetic background of catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia in Japan2013
Author(s)
Kawamura M, Ohno S, Naiki N, Nagaoka I, Dochi K, Wang Q, Hasegawa K, Kimura H, Miyamoto A, Mizusawa Y, Itoh H, Makiyama T, Sumitomo N, Ushinohama H, Oyama K, Murakoshi N, Aonuma K, Horigome H, Honda T, Yoshinaga M, Ito M, Horie M
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Journal Title
Circ J
Volume: 77
Pages: 1705-13
Peer Reviewed
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[Presentation] A nationwide questionnaire survey on clinical characteristics and genetic background of congenital long-QT syndrome diagnosed in fetal and neonatal life2013
Author(s)
Horigome H, Kato Y, Yoshinaga M, Sumitomo N, Ushinohama H, Iwamoto M, Takahashi K, Shiono J, Tauchi N, Izumida N, Nagashima M
Organizer
Heart Rhythm Society 2013
Place of Presentation
Denver, USA
Year and Date
20130510-20130510
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[Presentation] Advancement of treatment in Catecholaminergic Polymorphic Ventricular tachycardia -multicenter Study in Japan2013
Author(s)
Sumitomo N, Shimizu W, Aragaki Y, Horigome H, Aonuma K, Sakurada H, Watanabe H, Nishizaki M, Kamakura S, Hiraoka M
Organizer
Heart Rhythm Society 2013
Place of Presentation
Denver, USA
Year and Date
20130510-20130510
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