2013 Fiscal Year Research-status Report
加水分解コムギにより発症した経口小麦アレルギーの病態の解明および診断技術の確立
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24591671
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
松永 佳世子 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80131192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 晶代 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (20625983)
中村 政志 藤田保健衛生大学, 大学院, 医学研究科研究生 (30449467)
矢上 晶子 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (90367699)
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Keywords | グルパール19S / 経皮膚・粘膜感作 / 小麦アレルギー / 交差反応性 / 診断方法の構築 / 予後因子探索 |
Research Abstract |
1)原因抗原の解析 小麦タンパク質を二次元電気泳動法で分離し、血清中IgE抗体を用いたブロット法によって抗原の可視化を行った。その結果、当該患者と従来のWDEIA患者では抗原のバリエーションが異なる事、臨床的に非典型例であった患者はさらに異なるバリエーションである事が分かった。よって、この手法自体が検査法として有用であると考えられた。また、質量分析によってγ-グリアジンなどを抗原として同定した。 2)当該石鹸以外の、化粧品、医薬部外品に含まれる加水分解小麦との交差反応性の検証 グルパール19Sを含む化粧品用途の加水分解小麦10種について当該患者血清中IgE抗体との反応性をELISA法やWesternBlot法によって評価した。その結果、4種の加水分解小麦において反応が認められ、その抗原が分子量分布を持つ複合体である事、その抗原は(SDS-PAGE上では)約10kDaより下には認められない事が分かった。 3)予後因子の探索 当科における確実例57例(男性1例、女性56例)につき症例の臨床経過やグルパール19S特異IgE抗体、プリックテストの経時的変化を検討した。現在、約7割の症例で小麦を摂取しているが症状の誘発なく摂取可能な症例が多く、症状があっても蕁麻疹や眼瞼腫張であり重篤な症状は認めていない。また、グルパール19S特異IgE抗体(EISA法)の経時的変化では摂取状況や重症度、摂取時の症状の有無に関わらず、グルパール19S sIgEは低下傾向を認めた。以上より、石鹸の使用を中止することにより症状は軽快していくことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
≪病態の解明について≫ 1)原因抗原の解析によって、経口摂取したγ-グリアジンなどがアレルギー症状発現の鍵になっていることが特定できた。さらに、抗原のバリエーションの違いから、典型例、非典型例、従来のWDEIとのアレルギー症状誘発原因も異なることが分かった。2)グルパール19S以外の加水分解コムギに対するIgE抗体の反応性評価によって、当該疾患患者が接触すべきでない加水分解コムギを特定することにも成功している。未完ではあるものの、抗原の特徴の解析も進んでおり、ここで得られた知見は今回検討した以外の加水分解コムギにも有用であると考えられる。3)当科において個々の患者を精査した結果、「原因物質の回避」が本疾患を有意に改善させることが明らかとなった。また、H24年度に確立した「グルパール19S特異IgE抗体による検査法」による全国2000検体以上の結果からも「原因物質の回避」が当該疾患の予後に非常に有用である事を確認した。以上より、当該疾患に関する病態の多くが解明できたと判断した。 ≪診断技術の確立について≫ 1)抗原解析での実験手法は、典型例や非典型例、従来のWDEIAとの差異も分別できたことから、「グルパール19S特異IgE抗体による評価法」とは、また別の角度での検査法が確立できたと考えることができる。3)H24年に確立した「グルパール19S特異IgE抗体による評価法」が、他の既存検査薬よりも優れ、プリックテストに近い高感度と特異性であること、重篤度との高い相関性があることが確認できた。 よって、非常に有用な検査技術が確立できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究内容は迅速な公表が望まれるものであると考えており、これまでに学会発表等については積極的に行ってきたが論文投稿が滞っている状態にある。よって、本年の優先課題は論文投稿としたい。 また、抗原解析については、小麦タンパク質の抗原同定を継続するとともに、加水分解コムギ中の抗原についての同定も行いたい。これらの結果は、患者予後の改善と、新たな症例発生の予防につながると期待される。 現在までに、予後の良し悪しがあることが分かってきており、予後の悪い症例の原因特定や治療法についても探索したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
謝金の予備費として確保した額のうち12,549円分誤差が生じ、次年度に繰り越しをすることになった。 計画を実行するにあたり、効果的効率的に研究が進むように使用したい。
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[Journal Article] Epithelial-mesenchymal transition of the eccrine glands is involved in skin fibrosis in morphea2013
Author(s)
Masayuki Takahashi, Hirohiko Akamatsu, Akiko Yagami, Seiji Hasegawa, Shiroh Ohgo, Masamichi Abe, Yohei Iwata, Masaru Arima, Hiroshi Mizutani, Satoru Nakata, Kayoko Matsunaga
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Journal Title
Journal of Dermatology
Volume: 40
Pages: 720-725
Peer Reviewed
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