2012 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー型認知症剖検脳を用いたグルタミン酸興奮毒性の検討
Project/Area Number |
24591697
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水上 勝義 筑波大学, 体育系, 教授 (20229686)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 海馬 / 神経変性 |
Research Abstract |
本年度は、アルツハイマー病脳の神経細胞変性に関わる機序の検討として、興奮毒性をはじめとするストレスが神経細胞に及んだ際の、神経細胞のストレス反応に注目して検討を進めた。アルツハイマー病患者よび年齢を一致させた非アルツハイマー病高齢者の剖検脳海馬を4%パラホルムアルデヒドで固定し、その後薄切した切片をもちいて、ストレス反応系の一つであるユビキチン系の変化について免疫化学的検討を行った。今回はユビキチン系のなかでも異常あるいは不要蛋白質を認識しそれを運搬するユビキリンに対する特異抗体を用いた。その結果ユビキリンは、アルツハイマー病海馬のうち、神経細胞脱落が軽度のCA2領域からCA4領域にかけて、神経細胞内のユビキリンが増加した。一方神経細胞変性が強いCA1領域ではユビキリンは低下した。また神経細胞内の神経原線維変化はユビキリン陽性であったが、神経細胞外のいわゆる ghost tangleはユビキリン陰性だった。また老人斑内の変性突起もユビキリン陽性のものが観察された。ユビキリンは神経細胞機能の保持のために、神経細胞内で増加しアルツハイマー病理で異常あるいは不要化した蛋白の除去を行っている可能性が考えられる。ユビキリンを増加させる能力を持つ神経細胞は、アルツハイマー病理に対する抵抗性が増すと推察される。本結果についてはNeuropathology誌に投稿し、査読者のコメントに対する応答を作成中である。 さらにアルツハイマー病海馬神経細胞のグルタミン酸受容体の変化に関する免疫組織化学的検討について、GluR2の特異抗体を用いた免疫染色を行った。同時にレビー小体型認知症の海馬についても免疫染色を行い、現在比較検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度はアルツハイマー病の海馬の神経細胞のグルタミン酸受容体の変化について検討する事を目的とした。しかし今回用いた切片が、パラフィン包埋された切片であったこともあり、グルタミン酸受容体の免疫染色条件の設定に予想外の時間を要した。何度か染色をやり直しした結果、最終的にGluR2の染色に成功した。GluR2はAMPA型グルタミン酸受容体のサブユニットのなかで、神経変性に最も関連すると我々が注目するサブユニットである。現在アルツハイマー病の神経細胞でその変化について評価を行っている段階である。24年度の目標では、染色結果を評価し、論文を投稿することをあげていたため、それと比較してはやや遅れていることになる。しかしその間に、ストレスに応答し異常蛋白質を分解するユビキチン系の構成因子であるユビキリンの免疫染色をおこない、さらにユビキリンとX-34との二重染色に成功し論文化することができた。現在雑誌査読者のコメントに対して修正版を作成中である。本結果が論文として発表されれば、アルツハイマー病の神経細胞変性に対する防御機構の解明に寄与することが可能と考える。 以上より全体的な達成度としては「おおむね順調」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在投稿中の論文の修正版を早急に作成し、再投稿することが喫緊の課題である。それと平行してこれまで終了したアルツハイマー病とレビー小体型認知症の海馬を用いたGluR2染色標本を用いた神経細胞内のGluR2の発現と神経細胞変性の関連について検討する。さらにGluR2サブユニット以外のグルタミン酸受容体のサブユニット(NR1,NR2,GluR1など)についても免疫染色を施行する。GluR2で用いた切片と同じ条件のものを用いるため、条件決めは比較的スムーズにいくものと考えている。そしてこれらの染色結果を評価し、早急に論文作成に着手する。グルタミン酸受容体の免疫染色が終了した段階で、Homer蛋白に対する一次抗体(Anti Homer1,RIK-B-H1, Anti Homer3,RIK-B-H3、Anti Homer (Pan), RIK-B-HP)を用いた免疫染色を開始する。これまでHomer蛋白の変化についてAD剖検脳を用いた検討は行われていないが、Homer蛋白は興奮伝達系の機能調節の鍵となる蛋白質であり、本研究にとっては極めて重要な意義をもつ。可能であれば、Homer蛋白の染色結果の評価を行い、論文作成まで至りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫染色で使用する一次抗体としては、グルタミン酸受容体サブユニットに対する一次抗体(NR1,NR2,GluR1)およびHomer蛋白に対する一次抗体(Anti Homer1,RIK-B-H1, Anti Homer3,RIK-B-H3、Anti Homer (Pan), RIK-B-HP)を購入する予定である。また二次抗体ならびに正常ヤギ血清をはじめとする、実験に必須の試薬類やそのほかの消耗品類を購入する。成果発表にともなう旅費や論文作成にともなう諸費用なども必要である。なお50万円を超すような物品の購入は予定していない。
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