2014 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー型認知症剖検脳を用いたグルタミン酸興奮毒性の検討
Project/Area Number |
24591697
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水上 勝義 筑波大学, 体育系, 教授 (20229686)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ブチリルコリンエステラーゼ / ユビキリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間中アルツハイマー病脳におけるグルタミン酸伝達系を中心とした興奮毒性に基づく神経変性や神経可塑性の機序について検討してきた。本年度は、昨年度から実施しているアセチルコリン伝達系についての検討をアルツハイマー病剖検脳海馬において行った。ブチリルコリンエステラーゼはアセチルコリン分解酵素であり、2011年にはこの酵素の働きを抑制するアルツハイマー病治療薬(リバスチグミン)が上市されるなど、注目されている酵素である。本研究ではパラフィン包埋して5マイクロに薄切した切片にブチリルコリンエステラーゼの特異抗体を反応させ、免疫組織化学の手法を用いて、発色態度によって酵素の分布を調べた。その結果、ブチリルコリンエステラーゼの染色性はアルツハイマー病脳で増強し、海馬CA2-3領域にとくに著明であった。また80%以上の老人斑が陽性に染色された。一方、ブチリルコリンエステラーゼ陽性の神経原線維変化は10%に過ぎなかった。今回染色性が増強したCA2-3領域はアルツハイマー病が進行しても組織が保たれる領域であり、ブチリルコリンエステラーゼは興奮毒性に対して神経細胞になんらかの抵抗性をもたらしている可能性が推察された。この結果をNeuropathology誌に投稿し、現在査読結果に対する対応を行っている最中である。 今回の3年間で、興奮毒性仮説に基づき、アルツハイマー病の神経細胞変性について検討し、ユビキリンが重要な役割を持つことについて2014年にNeuropathology誌に発表した。現在上述したように重要な成果を記載したもう1編の英文論文も査読結果に対応中であり、まもなく掲載されることが期待される。以上より今回の研究期間中に実績を残せたと考えている。
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