2012 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の認知機能障害に対するrTMSの治療機作のGABA機能評価による検討
Project/Area Number |
24591727
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984)
辻 富基美 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10347586)
小瀬 朝海 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10405425)
奥村 匡敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00464678)
山本 眞弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80423937)
上山 栄子 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40405444)
高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10508021)
橋本 忠浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00438277)
大沢 恭子 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (50612107)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 統合失調症 / GABA / 磁気刺激 / NIRS / 認知機能 |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は、統合失調症の認知機能障害に対するrTMS治療の作用機作、治療条件のエビデンスについて、本疾患のGABA機能障害と認知機能障害との関連に着目しながら、脳波のガンマ帯域活動(GBA)と2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)の神経生理学的手法を用いてGABA機能との関連、および、rTMS刺激中にNIRSで測定される皮質の血流反応と神経生理学的指標の変化の関連を検討することである。関連する主な成果を以下に記載する。 1)ppTMSを用いてGABA性皮質抑制を評価することによって発症早期の本疾患における認知機能障害とGABA機能障害の関連を検討し、皮質抑制の減弱と作動記憶課題の低成績が有意に相関することを示し、本疾患の早期段階においてGABA神経系の障害が認知機能障害に関与する可能性を示し、英文論文にて報告した。(Takahashi S, Ukai S, et al, Schizophr Res) 2)rTMS治療の作用機作や治療効果の予測指標を検討する一環として、大うつ病性障害に対するrTMS治療前後での脳血流の変化をSPECTを用いて検討し、rTMSによって情動に関連する脳内の神経回路網の機能が変化し、その変化が治療効果と関連した可能性があること、さらに、その回路網の結節点と考えられている膝下部帯状回の血流が治療前に正常よりも高いことがrTMSの治療反応性の予測指標となりえることを示し、英文で報告した。(Takahashi S, Ukai S, et al, Neurocase) 3)rTMS治療の作用機作の検討にも応用することを目指して、fMRIを用いて脳内の各部位の長周期の活動の変化を解析することによって脳全体にわたっての機能的連関を検討する手法を独自に開発し、英文論文として発表した。(Kaneoke Y, Ukai S, et al, PLos One)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、統合失調症の認知機能障害に対するrTMS治療の作用機作、治療条件のエビデンスについて検討するための神経生理学的手法としてGAB、ppTMS、NIRSを用いることを予定している。そのうち、ppTMSについては、「研究実績」の項で述べたように、統合失調症の認知機能とGABAの関連について英文論文をすでに発表し、NIRSについては、TMSとNIRSの同時測定による統合失調症における上側頭回-前頭葉の機能的結合性の評価のための予備的検討を学会で発表するなど、研究の基礎となる神経生理学的な手法の確立、データの収集・解析が進行している。一方で、GBAについては、初年度の平成24年度にGBA刺激提示・解析装置一式の購入を予定していたが、文献的調査や現有機器での予備的な検討は行っているものの、GBAの誘発に用いる認知機能課題や聴覚刺激の仕様、脳波の測定・解析系の条件について年度内に確定できず、そのために装置一式の購入を次年度に延期することになり、進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
GBAの誘発に用いる認知機能課題や聴覚刺激の仕様、脳波の測定・解析系の条件について平成24年度内に確立できなかったために、GBA刺激提示・解析装置一式の購入が次年度に延期されるなどGBAの測定系の確立が遅れていることから、当初の研究計画の進捗全般にやや遅れが生じているので、できるだけ早期に、健常被験者によるGBA、ppTMS、rTMS下でのNIRS測定、認知機能検査(BACS)をおこない、最終的な神経生理学的な測定系を確立する。 さらに、予定していた以下のような具体的な研究を進めていく。1)統合失調症の被験者及びGBA、ppTMSの測定者に対してブラインドとして実刺激とシャム刺激をクロスオーバーで行い、rTMS前後のGBA、ppTMSの変化を検討する。2)1被験者について2週間の間隔を空けて実刺激またはシャム刺激による測定をそれぞれ2日間の日程で行う。第1日にGBA、ppTMSの測定、認知機能(BACS)、精神症状の評価を行い、第2日にrTMS(実刺激またはシャム刺激)を1セッション(30トレイン)施行後(NRISを用いて血流反応も評価)、GBA、ppTMSの測定、精神症状の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項に記載した通り、GBAの誘発に用いる認知機能課題や聴覚刺激の仕様、脳波の測定・解析系の条件について平成24年度内に確立できなかったために平成24年度に購入できなかったGBA刺激提示・解析装置一式(1,200,000円)を平成25年度の早い時期に購入することによって、すべての神経生理学的な測定系での検討を開始し、全般にやや遅れている研究計画の進捗状況を改善していく。 その他、ppTMS、GBAの測定・記録に、使い捨て筋電図用電極、脳波電極等の消耗品を必要とするので年度毎に約10万円を必要とすると考えている。また、認知機能検査を施行する臨床心理士への謝金として20万円を予定している。さらに、日本臨床神経生理学会、日本精神神経学会などの国内学会や国際学会に参加し、関連分野における最新の研究成果を知り、また本研究の成果を発表する目的で旅費を計上している。
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