2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト脳組織スライスの検討によるてんかん原性の発現・獲得過程の解明
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24592116
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大石 誠 新潟大学, 脳研究所, 非常勤講師 (00422593)
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Keywords | てんかん / 病態解明 / 神経科学 |
Research Abstract |
本研究は,脳組織の「てんかん原性」の発現・獲得過程の段階を明らかにすることを目的として,てんかんや脳腫瘍手術摘出後の大脳組織標本を生存状態のまま活用することで,まさに「生きた」標本における生理現象を調べることでてんかん原性に迫ろうとする,新たな研究手法に取り組んでいる.新しい蛍光イメージング法を活用して組織の生理学的反応を観察した結果と,その後の固定標本における免疫組織学的検索や病理組織所見との整合性を調べ,てんかん原性を獲得してゆく組織固有の変化を導きだそうとしている. 昨年の研究に続き本年の研究では,脳神経外科手術で得られた標本組織に対して,当施設ですでに確立した処理・実験方法で電気刺激に対するフラビン蛍光反応観察を安定して行い,信頼性の高い数々のデータを取得・蓄積した.実験後の標本に関しては免疫・組織学的検索を行っており,得られたデータのファイリングを行った.2年分のデータが蓄積された時点で行うとしてきた各組織標本のてんかん原性としてのクラス分類(「非てんかん性」から「高度てんかん性」などといったもの)の可能性を導き出せるように現在データ整理に取り組んでいる. 実際に患者における摘出標本スライスにて,電気刺激によるフラビン蛍光イメージングでの易発火性・易伝播性,抑制系神経細胞を標的とした免疫組織染色所見での神経脱落所見には相関性があり,また病理組織診断における病変としての重症度にはあまり相関がないことが示されており,てんかん原性は病変そのものとは別の機序で確立されて行く様子が分かりはじめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初掲げていた実験結果の収集に関してはそれなりに順調な範囲で進んでいると考えており,「蛍光イメージング法」「免疫組織学的検索」「病理組織検索」の3つの各種実験は順調に施行されております.ただしそれぞれのデータの統合というところでのデータ処理はまだ細かなところで行われておらず,プレリミナリーな状態のみであるので,今後もう少し系統立った解析作業を進める必要があります. まだ目的としていたステージングが可能な段階まで到達してはおりませんが,これからの作業を進めて参ります.
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Strategy for Future Research Activity |
前述いたしました通りにデータを整理・解析して行きます. てんかん原性の発現から獲得にいたる大脳組織の変化に関する考察を行うことを目的としておりますので,具体的には病歴から非てんかん性組織,てんかん発症早期組織,難治性てんかん獲得組織などの分類を行い(この程度も患者のてんかん発作の頻度,術中の脳波所見からより細かく分類します),これら分類ごとにフラビン蛍光反応結果,免疫組織学的結果,病理学的な変化を付き合わせて,統計学的な相関関係を調査します.研究結果から脳組織のてんかん原性発現・獲得に至る「ステージ分類」に行き着けるように,標本を整理し,いくつかの統計手法を用いて,解析作業を進めて行くつもりです.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文作成作業が遅れ論文校正費やカラー印刷費などに見込んでいた額,および学会発表も見こんでいた回数に達しなかったため,次年度使用額を生じました. 引き続き学会発表と論文作成(英文校正やカラー図表の代金が発生)を遂行することで,次年度使用額を活用いたします.
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Research Products
(3 results)