2013 Fiscal Year Research-status Report
超音波照射によるヘムオキシゲナーゼ1遺伝子発現制御と勃起不全治療への応用
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24592442
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡部 明彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (20377253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森井 章裕 富山大学, 大学病院, 助教 (20377279)
小川 良平 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 講師 (60334736)
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Keywords | 超音波 / ヘムオキシゲナーゼ1 / 血管内皮細胞 / 勃起不全 |
Research Abstract |
平成25年度は①超音波照射によるHO-1発現増強機序の解析を進め、決定した最適照射条件下で、マイクロアレイ解析を行い転写レベルでの遺伝子発現変化を把握し、パスウェイ解析により関与しうるシグナル伝達経路の推測、②超音波照射によるHO-1活性増強を介したcGMP(血管弛緩反応を増強する)の合成評価として、HUAECと血管平滑筋細胞(HUASMC)との混合培養状態におけるcGMPの産生量と超音波照射との関係について調べ、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤との組み合わせによる変化についても検討を行った。 ①1MHz超音波を0.3 W/cm2で20秒間、10%DFの条件でHUAECに対して照射し、0、6、12、24時間後にトータルRNAを抽出して、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、活性化するシグナル伝達経路の検討を行なつた。HO-1は他の遺伝子群に比較して、6時間後で最も発現増強しており、12時間後で2番目に発現増強していた。血管弛緩や収縮に関与するEndothelin-lシグナル経路、血管新生に関与するVEGFシグナル経路、さらに、Nrf-2を介した細胞内酸化ストレス応答シグナル経路などのシグナル伝達経路の活性化が推測された。 ②超音波刺激によりHUAEC中で発現増強するH0-1により生成されるCOは、血管平滑筋細胞(HUASMC)でのcGMP合成増強に働くことで血管の弛緩に寄与すると考えられる。培地にけん濁したHUAECに超音波照射し、それらをHUASMC培養皿に添加する方法でcGMPの測定を行った。1MHz超音波を0.3 W/cm2で15秒間あるいは30秒間照射し、15時間後に回収してcGMPアッセイに供した。それらにPDE阻害剤である3-isobutyl-l-methylxanthine(3IM)l mMを添加し、それぞれの効果も観察した。超音波照射のみで処理したサンプルではcGMP増加を認め、3IMを単独添加した場合はcGMP増加を認めなかったが、両者を組み合わせた場合には相乗的なcGMP産生増強が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では平成25年度後半にvivoモデル(ラット)の確立および超音波照射条件検討などを目指していたが、HUAECとHUASMCの共培養実験の条件検討に時間を要したため、本年度は施行することができなかった。しかしin vitroの系ではあるが、超音波照射によるHO-1活性増強がcGMP産生を増加することにより血管弛緩に寄与する可能性があること、PDE阻害薬との併用でcGMP産生量を増加せしめる効果はED治療への臨床応用に向けての有用な結果と考えており、in vivoの系においても超音波照射によるHO-1活性増強が血管弛緩に影響を及ぼす可能性を期待させる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24、25年度の研究で、血管内皮細胞において超音波照射によりHO-1発現誘導が可能であること、その機序および血管平滑筋細胞との共培養においてcGMPを増加させ血管弛緩に寄与する可能性を示したので、平成26年度はin vivoの系で超音波照射が陰茎組織に及ぼす影響を調べる。動物にはラットを用い、陰茎に直接経皮的に超音波照射を施行する。単回照射の影響を照射前後の血液中HO-1およびビリルビン濃度などを測定することによって調べる。ED治療を想定した反復照射実験では照射後の陰茎組織に対して、HO-1をはじめとして、勃起能力(ED治療)に関与すると考えられるeNOSおよびnNOSなどの免疫組織学的染色も行い、HO-1の発現をはじめ陰茎組織内における超音波刺激の影響を調べる。またHE染色による組織病理学的観察で血管径・数の比較にて血管新生の確認、Massons trichrome染色による平滑筋/コラーゲン比の測定などにて治療効果を検証する。超音波の伝わり方はin vitroとin vivoでは異なると考えられるため、同じ生物作用を起こす照射条件も異なる可能性がある。したがって、有意なHO-1誘導発現が得られない場合には、小プローブタイプのtransducerや焦点を結ぶ照射装置などの使用も検討し、HO-1発現増強に最も効果的なものを用いる。in vitroでの検討と同様に、PDE阻害薬をはじめとする各種薬剤併用による影響も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は、ラット陰茎に対する超音波単回照射もしくは反復照射によるHO-1の発現誘導ならびに陰茎組織への影響(血管新生、eNOS、nNOSなどの発現有無など)を調べる予定であるが、vivo実験における超音波照射条件の検討や各種評価のための手技習得に時間およびコストを要する見込みであること、また平成24、25年度で得られたin vitroでの実験結果の実験再現検証もする予定であることから、前年度繰越金を加えた予算が必要である。 in vivoの実験において、ラット陰茎に対する超音波照射実験(単回照射、反復照射)に使用するラット、免疫染色のための各種抗体(HO-1、eNOS、nNOSなど)、HO-1酵素活性や血中濃度測定用の試薬、また平成24、25年度に行ったin vitroの実験の一部再現を行う予定であり、それらに係る細胞や各種試薬、キットの費用として使用する。また超音波医学会、性機能学会等において成果を発表する予定であり、旅費も計上する。
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Research Products
(3 results)