2013 Fiscal Year Research-status Report
発達期の副交感神経活動性と低酸素虚血性脳障害の重症度に関する基礎的研究
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24592476
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鮫島 浩 宮崎大学, 医学部, 教授 (50274775)
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Keywords | 低酸素性虚血性脳障害 / 脳保護作用 / 副交感神経 / 胎児心拍数モニタリング / 心拍数細変動 |
Research Abstract |
子宮内の胎児は生理学的に副交感神経優位である。子宮内は低酸素環境であり、さらに分娩に伴う低酸素ストレスを考慮すると、胎児が副交感神経優位の環境下にあることと、低酸素との間に、何らかの合目的な関連性があると考えられる。われわれの先行研究では、副交感神経刺激剤の投与で低酸素症による発達期脳障害の発症頻度を有意に軽減した。 胎児心拍数モニタリングの基線細変動は自律神経系の影響を受ける。副交感神経遮断剤を用いると基線細変動は消失する。そこで、副交感神経活動性の指標として基線細変動を用い、脳障害との関連性を検討した。 本年度の計画に沿って、発達期脳障害モデルである7生日ラットのLevine-Riceモデルを用い、低酸素虚血を10回にわたり、反復して加え、心拍数細変動の変化を検討した。その際、基線(baseline)細変動と反応期(response)細変動とを個々に、定量的に評価した。 その結果、脳障害を発症しなかった動物では、baseline細変動も、response細変動も10回の低酸素虚血刺激によって有意な変化を示さなかった。炎症惹起物質であるLPSを用いて低酸素虚血刺激を加えると、脳障害を発症しなかった動物では対照群と同様の変化を示した。しかし脳障害を発症した動物では、まずbaseline細変動が3回目の刺激から有意に低下し、response細変動も5回目の刺激から有意に低下し、10回目まで有意な変化が持続した。今回の一連の検討から、副交感神経の活動性に関連する細変動の減少は脳障害と有意な関連があり、なかでもbaseline細変動の変化が早期から出現し、さらにresponse細変動の減少が加わると脳障害に繋がると考えられた。 現在、詳細な統計学的検討を行っており、論文を作成し、併せて学会発表を行う計画である。また、本結果を臨床データの分析に繋げることが可能か、臨床データの後方視的検討と、前方視的研究への準備を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成24年度には動物実験を行い、平成25年度には、脳障害群と非脳障害群とを判別可能なパラメーターを絞り込むことを想定していた。現時点で、上記のように、baseline細変動の減少とresponse細変動の減少とが有力なパラメーターとして抽出できた。また、電子媒体での記録データを用いて、今後も追加検討が可能な状況である。これらの観点から、平成25年度の研究の達成度を自己点検すると100%であり、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ひとつは電子媒体に保存されたデータを最大限に有効利用して、脳障害と有意に関連するパラメーター、あるいはパラメーターの組合せを見つける。特に、baseline細変動の減少とresponse細変動の減少とに加えて、更なるパラメーターの追加で脳障害発症予測を向上できるか検討する。現在、一過性徐脈に関して検討を開始した。 もうひとつは動物実験を行い、治療介入時期を検討する方策である。低酸素負荷を反復投与しつつ、脳障害と関連したパラメーターが出現し始めた時点で2群に分け、1群は対照群とし、治療群との間で脳障害予防、治療に有効な薬剤、低体温等の対策、低酸素からの早期解除、などについて検討する。 さらに、副交感神経の活動性がサイトカイン濃度などに影響を与えるか、組織学的、生化学的検討を行うための予備研究を開始する。
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